怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

小幡績の出鱈目解説、再び

偶然、見かけたので。


http://toyokeizai.net/articles/-/11850?page=3


また、小幡績か。
この人は、毎度お馴染だが、よくもまあこんなに出鱈目解説を並べられるものだと感心するね。

タイトルのサブが「東大首席卒業のファイナンス学者」ってなっているが、それでもこの程度の理解でしかない、ということなのでしょうか。まあ、当方みたいな凡人には、東大首席というのがどれほど凄いのか、というのはわかりかねますが、そんなに優秀な人がどうして考えれば判りそうなことを自分自身で考えないのか、ホント不思議に思いますわ。


以下、各論点についてみてみる。


第1に、日銀が直接コントロールできるのは、超短期金利であり、長期金利には影響を与えることが状況によって可能なだけで、インフレ率が上昇しているような局面では、それはかなり難しく、無理してインフレを起こした場合には、不可能となる。


この「コントロールできる範囲」というものがどういう水準なのか不明であるが、ある程度はできますな。オペとか、準備率の変更などで、ある程度は対応できるでしょう。年率10%とか20%以内くらいであれば、それはハイパーインフレではない。その程度以下のインフレ率に収まるようにできることを「コントロールしている」と呼ぶかどうか、ということでしかない。これが「5%以内に収めること」をコントロールと呼ぶなら、例えばかつてのバブル期には金利水準からすると「コントロールできなかった」ということになるが、物価水準ではコントロールできていたわけである。つまりは、小幡の印象論でしかない。


第2に、実体経済において重要なのは、長期金利であり、これが上昇してしまうと景気には大きくマイナスだが、リフレはまさにそれを起こすことになる。


金利が上昇するのは、たとえば景気が良くなっているとか物価が上昇しているといった局面で、中央銀行が引締めを行う時にも上昇しているわけである。これは過去の金利変動を見れば、ごく普通のことだ。景気にはマイナスというのは、引締めが必要になる程度に「過熱してきている」ということであれば、金利引き上げが起こるわけであり、これを悪だのマイナスだのと言われてしまうと、それはどうよ、と思う。長期金利は、確かに短期金利と同じような変動とは限らないわけであるが、上昇の程度によるであろう。数%程度ならば、そう珍しいことではない。


第3に、長期金利を高騰を避けるために、国債を日銀が直接引き受けにせよ、市場買い入れにせよ、多くの投資家が売りに回ったときに行えば、それは投機家の圧力に屈することになる。これは、まさにソロスがイングランド銀行をポンド投機で打ち負かしたのと同じ状況である。

最もおかしい記述がこれだ。全くの論外である。間違いだらけ、ということ。
小幡は本当に”ファイナンス学者”なのだろうか?
まず、ポンドが売られた場面では根本的な前提がある。それは「為替の固定レート」を死守する必要があるかどうか、だ。
ソロスが売り方(売りの側ということ、方法ではない)に付いていたとして、買い方にはBOEイングランド銀行)の持つ買い資金との比較でしかない。BOEはユーロの通貨統合に向けた固定レート維持の義務があったので、「為替水準を維持するには買いまくる」しかなかった、というだけである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%89%E5%8D%B1%E6%A9%9F


これが変動相場であれば、特に「買い続ける」必要性はないわけである。なので、BOEは変動相場に移行したわけである。BOEがソロスに敗北したというのは、固定レート維持の必要性があったから、ということと、持っていた外貨準備(買い資金)がソロスの資金量(動員量)を下回った、ということだ。

通貨がある水準まで下がると、その通貨建の保有資産が大幅に減価することになるので、その損失に耐えられないその他投資家たちがビビるか新たな「証拠金」追加といった損失に耐えられない状態が発生すると、これまでポンドの買い方についていた投資家たちが一斉に売りに回ったりすることで、資金の逆転が起こることになるだろう、ということだ。単純に1対1のサシ勝負であれば、そう簡単には行かないはずだろう。

どうしてかと言えば、現物売り以外であると、いずれは買い戻して決裁する必要があるわけで、売り方が100万ドル分を売って、これを同じ量だけ買い戻したとすると、サシ勝負の場合であると元の価格に戻るだけである。プレイヤーが自分と受動的に買う相手だけしかいなければ、自分が売買する結果が価格に反映されるだけなので、買いと売りを同じに行えば価格に対しては中立である。これが変動相場の意味だ。そして、売り方にその他大勢の「加勢」が付かなければ、売建分を買い戻すだけで値が戻ってしまうし、資金量で中銀を上回るのは大抵は難しい(資金規模の小さい国相手なら勝てるかもしれないが)。

ソロスが勝ったのは、BOEは「何かを売ってポンドを買う」ことをせねばならなかったから、で、売る時に「ポンド紙幣を売って」買うことができなかったからである。しかし日銀の場合には、「円という紙幣を売って(売り方に渡して)」国債を買えばいいだけなので、玉(買い資金)は理屈上では無尽蔵に生み出すことが可能である。全ての国債を買い切れば、売り方は必ず敗北する。買い戻しすると、価格が上がるだけだから。
そもそも日本国債を売買するというのは、日本の「円という通貨」を売買しているのとほぼ同じなのだから、現金で受け取ってみたところで何ら変わりない、と、これまでにも百万回言ってきたではないか。日本国債は移動速度が遅く取引し難いが、現金(紙幣)は国債に比べれば移動速度が速く取引しやすい、ということに他ならない。全長10kmの巨大列車と比べて、同じ人数を運べる自家用車数百か数千台の方が移動し易いというのと変わらない。


それから、国債を現物と先物で売りまくったと仮定して、売った側が300兆円分とかの国債を売ったとして、その現金を受け取ったら、どうするんでしょう?即座に外貨を買いますかね?ドルとかユーロとかですかな。
そうすると、猛烈な円安がやってきますわな。300兆円の円売り介入と同じ効果を持つ、と。輸出企業は狂喜乱舞ということになりますかな(笑)。
で、どの投資家たちも売り方に回っているので買い手が存在せず、日銀が買い方となって市場で売られた長期国債を全て買いまくるとしますか。オペみたいに、入札でもいいですよ。日銀が「売りたい人は応募して下さい」と言って、売り方に価格を決めてもらうとしますね。入札ですから、「○○円なら売ります」という売る側の価格提示があるわけだ。これが「市場の考える価格=金利」ということだ。その中央値でも最低値でもいいが、それが長期金利の水準ということになる。
額面100万円の国債を売る時、いくらなら売りますか、と尋ねているわけである。国債が暴落する、と小幡が言うわけだが、じゃあ、小幡ならいくらなら売るのだろう?50万円でもいい、ということなら、残存期間から金利が決まることになる。

額面100万円で10年後に満期の国債を持っている。表面利率は5%の利息がつく。この国債をたった今50万円で売りたい、という人がいるとしますか。すると、利回りは年20%だ。100万円と毎年5万円を10回受け取れるから、総額150万円の10年物が現在価値50万円である、という意味だ。この債券価格50万円から、年率11.6%という複利水準であるということが計算できる。
つまり、今50万円を持っていて、10年後に150万円になるという投資がある場合、年率11.6%で毎年殖やせば、10年後には150万円になっている、ということだ。これを超えて(安い価格で)日本国債を売りたい、という人は、この水準のインフレ率を上回る予想をしている、ということになる。思ったほど大したことないでしょう?70年代以降に、先進国では多くが経験してきた程度のインフレ率でしかない、ということです。良くはないが、破滅的というほどでもない。


金利は無限大にはならない(=債券価格はゼロにはならない)ので、例えば残存期間1年物の金利がかなり高くなったとしても、日銀が買えばあっという間に金利上昇を抑制できることになるだろう。さて、購入価格が100万円だった債券を、10万円でもいいから売りたい、という人たちは、どれほど多く現れるだろうか?
金利水準が5%や10%程度であると、確かに価格下落ではあるけれども(厳密に言えば評価損となるだろう)、満期まで持てば払ってもらえるからね。で、現物売りをした人たちは、その現金で何を買うのだろう?
先物ならば、買い戻さなけければならないが、日銀が本気を出して国債金利が下がるまで買ったら、踏み上げになってしまうのは売り方の方だろう。ソロスのポンド売りと決定的に違うところは、変動相場だ、という点なのだよ。


更に言えば、日銀が買う、という場合、資産になるから、負債側には紙幣か当座預金残高として積まれることになるだけなので、バランスシートの膨張ということになるわな。すると、それはこれまで言い続けてきた「バランスシート拡張」によって、インフレが起こっているということを意味するわけだ。だって、市場から、売り方の売りが尽きるまでジャンジャン買い続ける、というのは、そういうことだから。つまり、国債を市場(銀行等)から買って、現金を供給する、ということをやったのと全く同じではないか(笑)。

それで金利が上昇=国債価格下落が起こる、というのなら、それはインフレになってしまう、ということを認めているということだ。


このような状態なら、確かに円安、債券安ということになっているだろう。80円が120円に戻ったとして、それで日本経済は破滅するか?50%も上昇しているんですがね?デフレ期間に経験していた程度の為替水準ですが?
デフレ期間に凝縮された通貨価格とか、資産価格が大きく巻き戻っていくことが予想される。インフレ率が大幅に上昇する、という時には、資金逃避先として株式等金融資産や実物の固定資産の買いが旺盛になることが考えられるからだ。


あとね、小幡績が決定的におかしいとしか思えない点を言っておくよ。東大首席といっても、こんな●●なの?と思う点さ。
それは、発行済み国債というのは、支払いが固定されている、ということである。金利は固定であるから、だ。そして、保有している相手が、銀行だろうと日銀だろうと、政府が支払う額は変わらない、ということである。条件が変わるのは、新発債だけ。

仮に、民間が保有する現物300兆円分の国債が全て日銀保有に変わったとしよう。すると、政府は何が困ると思うか?別に、変わらない。政府が利払を行い、日銀の利益が増大すれば政府に戻されるというだけ。ラッキー。公的機関の保有する国債は、全部持ったままいるだけで、誰も困らない。金利操作の時、オペの手段が極めて限定的になってしまう、ということくらい(笑)。


借換の時、誰も政府に払わないぞ(借り換え困難)、ということになれば、政府は増税するかデフォルト宣言で借金踏み倒しになってしまうか、だろうね。それが起こると困るのは日本国民だけなので、結局国民と政府との交渉でデフォルト回避が行われるのではないか。それが普通の思考であろう。


小幡の出鱈目解説は、聞き飽きた。
いい加減、学者とかいうのはやめたら?