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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

「期待」の重要性

岩田副総裁が就任会見で割と詳しく述べていましたが、「期待」というものが重要なものである、ということでした。黒田総裁もしかり。

その期待の変化があったことで、為替や株式市場の動きが出たというふうに解釈することは可能かもしれません。しかもその動きとは「マネーストックの増加」を伴わないものである、ということでしょう。まさしく期待で動いた、と岩田副総裁は見ておられるかもしれません。その期待への働きかけというものについて、今回は思うところを書いておきたいと思います。


一応言っておきますと、所謂”事実上の”インフレ・ターゲット政策導入は、白川総裁時代に行われたものである、というのが当方の理解です。

2012年2月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/c5a74247f8ba74b673c149563e09e330


よく金融政策とはすなわち「レジーム転換だ!!レジーム転換が大事だ」と言ってる人なんかがいますけれども、そういう人たちにとっては「アンシャンレジーム」とはいつからなのか、ということは整理されているんでしょうか?

ある時点の金融政策がその後日にタイムラグを伴って効果が発現するということを言うのであれば、年末以降の為替変動や株式相場上昇というのが、白川総裁時代の結果とも受け取れるわけだ。それ以前に行われた金融政策の効果であることを認めないと主張するなら、その理由を明らかにしておくべきであろう。


さて、本題に入ろう。
「期待に働きかける」とか、「政策ルールの変更」ということは、どういうものかということを、当方なりの理解で書いてみたい。


また喩え話で申し訳ないですが、お付き合いを。

今、カジノがあるとする。ここでブラックジャックをプレイする。
台には、カジノ側の親と各プレイヤーがいるものとする。親が各プレイヤーと自分に札を配る。札は、表の絵柄が見える表札と、見えない裏札の各1枚である。


親=日銀、各プレイヤー=各経済主体、ということになる。
親が緩和的な政策ルールに転換する、という場合には、喩えて言うと次のようになる。
・親の表札にAか絵札の場合、捨てて2〜9の札が出るまで引き直す

通常のルールから、こうした特殊なルールに変更、ということが「政策ルールの変更」ということになる。レジーム転換といってもいい。札を配る親の態度(姿勢)を、このような甘い方向へと転換する、ということである。この場合、親の目が悪くなる確率が高まり、子が勝つ確率が高くなるであろう、ということである。こうしたルール変更が起こると、子の賭け金は変化するだろう、ということである。勝てるチャンスが増えると子が考えるようになる、ということが、「期待」ということの意味だ。


更なる緩和姿勢を強めると、どうなるか。
・上記親の札チェンジに加えて、子に配る表札は最初から全員Aとする

こうなると、子の「21」完成のチャンスはかなり高まるであろう、ということである。勝てる確率はかなり高くなるだろう。政策ルールを変える、というのはそういうことだ。

一方、中央銀行総裁の首切りを言う場合には、親をやっている「人を変える」ということになるわけである。確かに、甘い親の人もいれば、厳しい姿勢の人もいる。ただ、「ルール」に比べると「人」の変更は、効果が弱い。
市場が「この親はきっといい人だろう」とワクワクするのは、「よい札を配ってくれそうな人」ということになる。で、最初から全員にAの表札を配ってくれるような人、だな。

あと、コミュニケーションという点も親で違うかもしれない。
親X「今の合計はいくつかな?表札が2なので伏せ札が9なら絵札でもブタ(21オーバー)にはならないし、絵札なら21になるから良い数ですよ。もう一枚引いてみては」
という感じで、やさしくアドバイスをしてくれるような人だと、安心してプレイできる、と。

親Y「あなたの手が悪いのは自業自得です、親のせいではありません。さっきも負けたって?それはあなたの計算能力、推理力、記憶力などが劣っているに過ぎません。自分の判断が悪いという結果なのです。私には責任がありません」

というような親であると、それが当てはまるとしてもゲンナリするのは間違いないであろう。


そういう意味においては、親が誰か、というのは大事ではあるけれども、最も期待を変えられるのは、「ルール変更である」ということだ。

政府の役割というのは、「カジノのオーナー」みたいなことになるかな。オーナーさんがキツイ場合には、親に「厳しいカードを配れ、子から巻きあげろ」と言ったりするかもしれない。そういうカジノには客が寄りつかなくなる(笑)。一方、子に勝たせてくれるカジノの場合には、そちらに行くだろう。なので、オーナーさんの立場もそれなりに重要。しかも、親の人を決めるのもオーナーさんだから。親の姿勢にもかなり影響を与える。カジノの台のルールを決めるのも、オーナーさんの権限が大きい。


このように、各プレイヤーに「親がAか絵札の表札の場合は捨てて引き直す」と宣言すれば、通常ルールでやっていた時とプレイヤーの「勝てるだろう」という予測は変わってくるはずだ、というのが期待の効果である。
更に、これを現実に親がやって見せれば、プレイヤーの確信は深まり、これを観察しているプレイヤーの行動に変化を与えることができる、ということである。インフレ・ターゲットと期待への働きかけ(政策ルール変更)というのは、こういうのと近いのではないか、ということである。


ただし、現実の金融政策においては、「親が引いたAか絵札を捨てて引き直す」という行為に該当する「実際の手段」というものが何なのか、というのはよく分かっていないことが難点である。もっと緩くして、「子の全員にAを配る」というのに匹敵する実際の手段というのは、どんなものになるであろう?

そこが難しい所なのである。