怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

1.貨幣数量説の補足

昨日の続きです。

拙ブログでは、過去に貨幣供給、特にマネタリーベースの増加を主張してきていたわけです。それとの整合性はどうなんだ、というご指摘もあるやもしれません。


参考までに、過去記事を挙げておきたいと思います。

”Printing Money”と”liquidity trap”の関係とは

マネタリーベースの名目GDP比


実際にマネタリーベースの量について数値を挙げた記事がこちら。

マッカラム・ルールとマネタリーベース水準


昨日の記事中にも書いていますが、MV=PQの式からは言えることは、かなり限られるだろう、ということであり、マネタリーベースの過少を推定したのは、3番目の参考記事でも書いていますが、過去のマネタリーベース伸び率のトレンドが維持されたまま推移していたとすると、という仮定を置いて数値化したものです。

従って、それら数値の絶対水準には、経済学理論の厳密な妥当性が備わっているとは思っていません。あくまでデフレ以前の「過去の経済運営、状態」の姿が基本となっており、その経験則的な考え方を準用したら、ということです。


これまでにも喩えてきたのが、金利と貨幣量という関係性が血液循環維持システムと似ている、ということだったわけです。それは、ある程度の法則性を持ちながらも画一的ではなく、変化に富んだ調節性を持つからです。また、ストレスやショックなどでは、維持システムに異常を来たすこともあるし、生体の生理学的反応が却って生命維持に危機をもたらすこともある、という点においても似ているな、ということです。


当方の理解として、非常に簡略化して書くと次のような関係になっています(正しく言えば違います、同じ数式で単位系を統一して計算できる、というものでもありません。また血圧の変動要因は、他にも粘度や血管弾力性などが関係します)。

  血圧 = (末梢)血管抵抗 × 血流量  …(鄯)

血流量というのは、単位時間当たりの血液量です。
  血流量 = 一回拍出量 × 心拍数

心臓から拍出される1回当たりの血液量と単位時間当たりの拍出回数である心拍数をかけると、血液の流れている量が計算できます。心拍数は常に変動しており、安静状態で定常状態にしていたら1回拍出量の計測値とからおおよその量が計算で出ますが、それは実測値とは必ずしも一致しているものではありません。むしろ、「同一」状態が保たれていることの方が稀というか、日々変動を続けているでしょう。経済活動と非常に似ています。

で、(鄯)式は、電圧と電流の式に似ています。

  電圧V = 抵抗R × 電流I

電気回路の場合ですと、データを測って計算で一致した結果が出せます。どこかの条件を変えても、再現性のある条件とすることもできます。


しかしながら、血圧の場合ですと、条件を一定にするということ自体が極めて困難です。また、血管抵抗というのは、実測することができません。なので、同じ血圧が例えば「100」という数値を取っている場合であっても、血流量が減少しているとか、血管抵抗の値が変化している、ということは珍しくありません。正常時と同じ血圧100でも、非常に寒かったりすると血管が収縮して抵抗が増すので、血流量が増加していることになる、といったようなことです。感染症なんかで細菌性ショック状態になれば、末梢血管が拡張し抵抗が大幅に低下するので、血圧低下となったりします。循環維持ができなければ、死んでしまいます。


循環血液量というのは、心臓と血管にある全ての血液量ということになりますが、これも常時一定ということにはならないのです。おおよそマネーストックに該当するのが、この循環血液量ということになるかと思いますが、この変動は血圧や心拍数などに影響を与えます。脱水や出血などのような場合ですね。


そもそも生体には自動的に循環状態を維持する「システム」が存在しており、条件によって様々に変化しますが、大雑把な「ある範囲内」にある時には病的状態とはなりませんが、その自動調節範囲を超えていってしまうと「病気」ということになるわけです。病的状態の判断には、例えば「血圧」というデータだけを取り上げても、意味のある場合もありますが(例えば高血圧症とか、低血圧症とか)、電気回路みたいにV=RIの計算式から分かるといったような単純な話ではないのです。


それぞれが条件の変化に応じて違った値をとるわけであり、MV=PQの式で各数値が状況に応じて変化してしまう、というのと同じようなものだ、ということなのです。
生体の場合であれば、例えば「頻脈」になっている時、何が影響しているのかということについて、原因検索を行うわけであり、しかも「薬物を入れて是正すべきかどうか」というのはまた別な問題なのです。単に全力疾走した直後だったから、というような理由であれば、「放置して様子を見る」というのが妥当ということになるわけで、「頻脈には○○の投与が効果がある、と教科書に書いている」とか言うのは愚か者です。


経済分野の場合であると、MV=PQの各数値(条件)の変動がどうなった時、どう変化するか、という情報の蓄積が少ないので、答えが中々見い出せないのであろうな、という印象です。変動の方向性だけでも合っているようになれば、前進するだろうな、とは思います。
(「走ったら、心拍数が上昇する」といったことは、正確な数値や計算式がなくても分かっている、というようなことです。時速何キロで走れば、心拍数が何%(何回)上昇する、という機械的な数値はちょっと難しい、というのと似ているのです。個体差も結構あるはずです)