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医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜小括

前の記事にコメントを頂いたので、お答えをかねて、まとめておきたいと思います。


(再掲)

司法に政治的な判断を期待するのが間違いなのでは?
規則は法律に委ねた範囲でないしか規制をすることができないのは民主政のもとでは自明のことで、あの最高裁判決は法律に通信販売を規制する趣旨が見受けられないとしたものなのですから。
対面販売を原則とするという政策が妥当だというのなら、そういう法律にしなかった立法機関である法律を批判し、そういう法律を今からでも作るべきだというべきだと思います。
当然のことながら、法律に対面販売を規制する趣旨がみられる場合は今回の最高裁判例の射程は及びません。
いずれにせよ、最高裁を批判するのは筋違いというべきでしょう。もし批判したいのなら薬事法から通信販売を規制するという趣旨が見受けられるという議論をすべきです。

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以下に、少しお答えを。

まず、当方の主張としては、最高裁に政治的判断を求めているものではありません。あくまで法解釈なり法理論上で、最高裁は「違法立法である」ことの立論を求めているものです。

具体的には、薬事法37条の「店舗による販売」がネット販売を規制するものかどうか、ということの法学的な理屈です。或いは、薬事法29条の二における「遵守事項」制定権限が、ネット販売を規制できるかどうか、といった点です。

当方の考え方については、以下に書いてきました。


医薬品のネット販売に関する最高裁判決

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜各論編

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜各論編2

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜最高裁判決文に見る劣化

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜番外編



で、今回のシリーズがこれら。

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜場当たり司法の歴史

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜場当たり司法の歴史2

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜場当たり司法の歴史3

医薬品のネット販売に関する最高裁判決〜場当たり司法の歴史4





薬事法37条や29条の二というのは、あくまで法理論の話であって、政治的な判断を含むものではありません。その立論をすべき最高裁が出した判決は、それらが全くできていない、というのが批判の出発点であります。

唯一の主張として判らないではない、という部分は、「薬事法の委任限度を超えている」という判断で省令制定権限が逸脱している、と考えるのが合理的である、ということだけです。


このことは、根拠法として「法文上で販売規制を行えば、ネット販売という販売方法の規制を実現可能」という余地は残されるはずですが、最高裁判決文ではあれこれと余計な文言が並んでおり、実際ネット販売業者等(規制改革会議等の委員含む)からは「ネット販売を規制すれば違憲立法である」旨の主張が審議会レベルで行われる始末です。


例えば立法作業の「技術論」として、「本法の条文からすると、省令の条文は行き過ぎである(制定権限・委任限度を超えている)」ということの立論がきちんと行われておれば、ネット販売を規制すべきか否かというのは、あくまで立法府の問題、すなわち政治的解決ということを考えればよい、ということに収束するはずですが、最高裁判決文では「ネット販売」そのものを規制すること自体が問題であるかのような書きぶりになっています。


そのことがそもそも問題だ、ということです。

その上、立法府の「制定意志」を推認してみたりする必要性などないし、国会議員の理解水準を推定してみたりする必要性も全くないはずです。需要の有無なんて、立論の補強材料にはなっていません。


最高裁判決は、後のシリーズで書いてきたような過去の裁判所の出してきた判決で示された、「過剰とも言うべき義務」の数々を、一言で言うなら(説明義務や検査義務や診断義務や救急対応義務や研鑽義務等々を)一切「なくてもいいです」、ということに大転換したに等しい、ということです。そのような大きな方針転換を行うならば、大法廷でもやってもらうか、司法界全体に対してそのような方向で今後考えるように、ということを明確に示せばよいのです。


だったら、今後の医療においても、医学書の教科書みたいな説明文書を「全部読めば書いてあります」ということにして、過剰な義務から解放することにしたらよいでしょう。


まあ、最高裁としては「禁止事項を明示的に書け」ということにしたようなので、今後の裁判においても書かれていない行為を違法認定することは、一切止めたらよいでしょう。