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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

ブロックバスター周辺の暗闘

ここ最近、ノバルティスファーマの「バルサルタン(商品名ディオバン)」を巡る醜聞が相次いでいる。


http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013073001002286.html


京都府医大に続いて、慈恵医大でも、同じような「論文操作疑惑」が持ち上がった。この事件は5月頃に一時期報道されていたが、ここに来て再び大きく取り上げられているようである。


この問題の背景について、ちょっと考えてみたい。


①「ディオバン」という稼ぎ頭

この薬は、ノバルティスファーマ日本法人の売上高約2千数百億円のうち、約半分を稼ぎ出すドル箱なのである。薬価改定で多少下がってはきたかもしれないが、一時期は1300億円以上を売り上げていた、超優良商品なのだ。世界中で数千億円規模の売上をもたらす人気薬剤はブロックバスターと呼ばれているらしい。

こうした稼ぎ頭を新たに見つけようと、ノバルティスばかりではなくファイザーやメルクといった巨大製薬会社は一兆円規模の研究開発費(90億ドル以上)を投じていたりするわけである。


②TPPにともなう医薬品問題

知財関連の重大なテーマとして、医薬品の特許問題がある。期間だけではなく、「エバーグリーニング」と呼ばれる脱法ドラッグ同様の手法のことや、薬価決定(維持)に関する仕組みについても、製薬会社にとっては重大な関心事となっている。この恩恵は海外製薬企業だけにとどまらず、日本の製薬会社にも波及するだろう。

だから、日本の製薬会社はTPP賛成派として行動することになるし、経済団体の役員としても当然そう振舞うことになるわけである。


③ノバルティスの醜聞が公表されたワケ

ここが謎だ。スイス系企業であり、ファイザー、メルクやJ&Jなんかの米系企業以外から選ばれた、ということなのかもしれない。ここを狙ってきたのが、どういう筋で、どのような意図なのか、ということが気になるわけである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9


④標的とするのは製薬会社か?

この事件によって、不利益を蒙るのは、どこか?
まず、医師や医学部なんかの医療に関連する権威の失墜につながる。すなわち、医療関係者たちが例えば「TPP反対だ」と言おうとも、その発言力を削ぎ落とす効果をもたらす。医者なんて信用できない、といったネガティブな印象を与えることになるだろう。

製薬会社にしてみれば、組織的関与はなかった、としておけば、深手を負うこともないであろう。あくまで「一社員の個人的行動に過ぎない」ということで処理してしまえる。それは、会社としての問題なのではなく、社員の個人的資質の問題である、というふうに矮小化可能なのだ。

現実に、降圧剤としての効能には特に問題がない、ということでもあるし、同様の薬剤の中ではトップシェアを持つようになっているのであれば、簡単に薬剤変更なんかできないから、使い続ける人たちが圧倒的に多いだろう。

それに、恐らく日本市場だけで、既に1兆円以上は回収しているだろうから、ノバルティスにとっては痛くも痒くもないんじゃないだろうか。


⑤まとめ?

製薬企業へのダメージを狙ったという目的であるとしても、米国企業ではないのでTPP交渉への影響度というのは限定的ではないか。むしろ医師叩きに繋がるか、ライバル企業にとってウレシイ話ということになるだけでは。

それと、ノバルティスの「グリべック」に関する悪い噂(他の国々における特許問題、ジェネリック薬に関連する闘争など)があったなか、ライバル他社にとっては「チャンス到来」ということになっていたのかもしれない。一概に、誰に利益がもたらされたか、というのは、判らない。


ただ、交渉ごとに絡んだ、思惑が錯綜していたりするから、報道には注意しておく必要があるだろう。