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ビットコインの正体とMt.Gox頓死の不可解

昨年あたりから、ビットコインを矢鱈と宣伝している人をネット上で見かけたので、どうも怪しいように思っていた。どうして、こんなものに手を出すのかな、と。それに、WBSでも特集してた時があったし(笑)。


興味がなかったので、ニュースで知る程度にしか見てこなかったわけで、実態を把握しているとも言えないかもしれないが、当方の理解の範囲で書いておきたい。

参考にした記事:http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYEA1Q02K20140227?sp=true


1)ビットコインは貨幣なのか?

これは、役割的には非常に似ている、とは思う。が、学術的に検討してもらうよりない。決済手段として用いることができる、という点で言えば、他の金融商品等とは異なるかもしれない。
用い方で言えば、例えば「小麦一袋」のようなものだ。
「小麦一袋」を基準単位とすれば、この重量ないし粒数が規定される。仮に一袋を10万粒と規定すれば、
 小麦一袋=小麦10万粒
が常に成立している。

実際に流通する場面では、価格が

 馬 =10袋(=「小麦一袋」×10)
 ブレスレット =「小麦一袋」+20000粒

みたいになっている。商人から馬を買った人は小麦10袋払い、ブレスレットを買った人は12万粒で払う、というようなことだ。これを本当にやると常に小麦を大量に持ち歩かねばならないので大変だ。金額を正確に数えるのも面倒。でも、意味合い的には、こうした取引である、ということ。ビットコインの場合には、これが電子的に瞬時に「小麦の粒数を正確に数える」「簡単に運搬できる」ということが行われている、ということである。

少額決済でも可能なのはドリンク一杯=168粒、のように、細分化できるから、である。また保管手段としても、小麦はいつか腐るかもしれないが、ビットコインはデータなので同一性が保たれるので貨幣的である。

では、価値を規定するものは何か?
「小麦一粒」の価値が他の評価システムで客観的に計れない限り、よく分からないのは同じ。言ってみれば、その人の持つ感覚のようなもの、である。労賃が「今日は小麦○粒な」と言われて、日当を渡されたら、「ああ小麦って、こういう価値なのか」みたいな感覚が芽生える、ということかと。

ビットコイン一単位の「本来の価値」のようなものが存在しないのは、小麦一粒が分からないのと同じではないかということだ。


2)ビットコインの価格が変動するのは何故か?

そもそもは枚数の上限が決まっているから、ということに尽きるであろう、と思われる。
前項の「小麦一袋」の絶対数が決まっている場合、人々の経済活動が旺盛になって生産力が向上し生活水準が良くなればなるほど、「小麦一袋」の価値が上昇する。単純化して言えば、GDPが10倍になっていれば、小麦絶対量が同一であると、以前には馬1頭買うのに必要だった小麦は10袋だったものが、今では1袋で買える、というようなことが起こるわけだ(デフレ社会だ…笑)。けれど、小麦の場合には、並列の評価尺度がない(あれば、小麦一袋=金貨x枚、のような表記ができ、小麦価値が相対的に判明する)ので、小麦単位の物価しか世の中の人々は知ることがない。ビットコインは違う。1ビットコイン=○ドル、と人々が評価でき知ることができる。そこにこそ落とし穴がある。


もう一つの側面、それは投機的対象となっていること、があるだろう。金貨であってもそう大きな違いはないかもしれない。同時に、ビットコインの「(お金の)入れ物」としての振る舞い、ということもある。

言うなれば、株券とか手形に似た性質を持つ、ということだ。
価値の移転や保管ができるし譲渡もできる。裏書きすればいいだけなので。たた、細分化ができない、というのが難点。これを解消したのがビットコイン、とも言える。昔の紙式の株券時代を知る人なら、株券の所有者が記名されていたことを知っているだろう。実際の譲渡となれば、面倒だし。これを解消したのが、保管振替制度(きっと天下り団体としても機能していたのでは?笑)で、売買をしやすくして記名してなくても次の所有者に簡単に移転できるようになったはずだ(因みに”ホフリ”の名称は一歩間違えばヤバいな。”屠り”をイメージさせるからw)。


そういう性質によって、株式市場での取引と同じく、「株価変動」=ビットコイン1単位の価格変動が起こる、ということを意味する。株券があって、企業情報や業績が全く不変である場合、原則的には株価は常に同一である。理論価格に張り付いたままになるはずである。しかし、売買を行ってみると、必ずしもそうではなくなると予想する。それは何故か?

手形に割引価格が存在するのと似ている。稀少性や流動性による価格変動が起こり得ることもある。保持期間が人によって異なるので、それは見掛け上の「金利差」が生じる、ということだ。「コンソル債」の価格変動にも似ている。

そういった理由などから、価格変動が起こると、どこかに「理論価格との乖離」状態が発生してしまうのである。人々は、常に正確な株券価格を知らないし、どこかの誰かは、理論的には損しているのに株券を手に入れようとしてしまうことがあるから、だ。そこに儲ける泉が湧いてくる、ということになる。つまり、人々の勘違いが酷くなればなるほど、価格変動は非常に大きくなるだろう。


3)ビットコインと取引所の仕組み

ビットコインの貨幣的な意味とは、恐らく次のような仕組みになるだろう。

仮に、世界取引所連合と呼ぶことにする。ここでは、お金とビットコインを交換してくれる、という機関である。ここに属するのは、世界中に散らばる各取引所甲、乙、丙…、となっている。世界取引所を一つのサイバー空間と看做すと、それらの単独決算及び連結決算のようなものが出来上がる。

◇世界取引所連合
  取引所 甲
  取引所 乙
  取引所 丙
   …
  取引所 N

この世界取引所連合の合計ビットコインは上限が決まっている、と。全ての取引記録から、ビットコインの価格変動を表示することが可能となる。また、各取引所間での正確な取引がなければ、そのビットコイン価格は正確性を維持できない。
まさしく中央銀行と同じ役割を担うのが、この「世界取引所連合」ということになる。


具体例を考えてみる。
Aさんが取引所甲に500万円を払い、ビットコインと交換した。レートは1ビットコイン=100円だったので、Aさんは5万ビットコインを手に入れた。
次に、別の取引所乙にCさんが5万ビットコイン分の購入を希望した所、ビットコインの取引価格が上昇しており(上記1回目購入者の取引結果により価値増加)レートは1ビット=120円だったので、600万円支払った。

ここまでで、世界取引所連合の資産がどうなっているか、という話である。

【資産】               【負債】
 取引所 甲 現金500万円         ビットコイン 5万
 取引所 乙 現金600万円         ビットコイン 5万


本来はこうなっていなければならないはずだろう。貨幣発行高が10万、その見合い資産が1100万円、ということである。


続いて、Aさんは商人Bと取引して商品600万円分を購入し、購入代金を5万ビットコインで払った。
商人Bはビットコインの換金の為、取引所甲に5万ビットコインの換金を申し込み、現金600万円を受け取った。

ビットコインのレート変動は、基本的に取引所と一般利用者との間で取引が発生したら価格が反映される。株式市場での取引が時々刻々と行われた結果、株価が変動しているのと同じ。市場外取引や個人間での貸し借りや売買などは反映されない。
故に、ビットコインを用いた決済が末端利用者間でいくら行われようとも、レート変動には影響しないはずである。


さて、Cさんがビットコイン購入後にAさんと商人Bとの取引があったので、その時点でのレートは120円のままである。その数値を知っている商人は、商品600万円の決裁でビットコイン5万を受け取ったわけである。これの現金化の為には商人は別の支払いで使うか、取引所に現金化を依頼することになる。ここでは、取引所利用とした。

取引所甲にはビットコインが5万戻ってきたので、負債サイドからは消える。同時に、現金払い出しが行われたので資産も同時に減少する。取引所甲では債務超過となってしまうが、世界取引所連合全体で見れば現金500万円に対して、ビットコイン5万の第一の取引直後(Aさんが購入した時点)に戻っただけである。



【資産】               【負債】
 取引所 甲 現金-100万円         ビットコイン 0万
 取引所 乙 現金600万円         ビットコイン 5万


取引所甲と乙の間で、現金とビットコインの平準化を行わないと、各取引所は取引の不均等化で容易に債務超過に陥る可能性がある。日銀本店と全国各支店間での現金のやり取りできないと、特定大企業が大口現金をどこかで引き出した途端にその支店が債務超過で破綻するようなことになってしまう。それでは貨幣システムを維持できない。なので、取引所間では資産負債管理を厳密に行い続ける必要がある。


話を元に戻そう。
商人Cが現金600万円の払い出しを受けた後の、ビットコインのレートはいくらになっているだろうか?
元に戻るなら、1ビットコイン=100円のはずであろう。株式が売られて値を下げたのと同じような意味である。そうすると、Cさんの払った600万円は時価500万円となってしまい、損したことになるわけだ。この100万円はサイバー空間のどこかに吸い込まれてしまったのだろうか?
そうではないだろう。先駆者利益とでも言うべき、Aさんは500万円しか投入しなかったのに、600万円分の商品購入ができたので、既に100万円得していることになるわけである。その利益分がCさんのマイナスとなっただけだ。


永続する購入者が存在し続ける限り、損することはない。しかし、現実にそんなことはないので、レートが上がり続けることなどないだろうし、誰かは損失を被ることになる。ビットコインの現金化はどこの取引所を利用してもよいので、そういう意味において手形的なものだ、ということになる。貨幣としての役割は、「世界取引所連合というシステム」に対する信頼があれば可能となり、その信頼が失われれば貨幣としては不適格ということになるだろう。具体的には、払い出しを約束した証文を持っていけば必ず支払われる、という信認に依存していたのに、これが不可能となれば証文に信用価値が存在しなくなるからである。



4)Mt.Gox破綻の意味とは

実態は不明だ。報道でもほぼよく分からない。
仮にビットコインが盗まれた、ということがあっても、単に負債サイドが減少するだけなので、ヨソで盗んだビットコインを使われたとしても、取引所が破綻する直接的な理由にはならないはずだろう。FRBに強盗が入ってドル札を持ち逃げして、どこかでそれを派手に全部使ってもFRBが破綻するわけではない。

極端に言えば、世界取引所連合から見た場合、ビットコインの所有者が強盗だろうと商人だろうと投機家であろうと、変わらない、ということだ。誰が末端同士でいくらビットコインを行き来させても、取引所から見れば何ら変わらない。

なので、データとしてビットコインが盗まれたとしても、過去に発行された現金資産はまるまる保存されている。それが消滅してしまう理由があるとすれば、インチキかペテンのような商法で、資産負債管理が杜撰であったというような場合だろうか。


マウント・ゴックスと他の取引所とのやり取りは不明だが、世界中で換金できるシステムを維持するのであれば、前記の通り日銀の本店と支店のような関係性がなければ不可能であろう。
取引所はコイン販売や換金時の手数料として収入を得るだけで、ビットコインと交換して受け取った現金は完全に保存されていなければならない。


世界取引所連合からすると、上限2100万ビットコイン以外に、本来存在するはずのないビットコインがサイバー犯罪によって生み出された(これをMt.Goxは盗まれた、と言っているのかもしれない)場合、どこかで不当に使われてしまうか、取引所に持ち込まれて換金されてしまっているかもしれない。そうすると、資産が不正に生み出されたコイン分だけ減ってしまって、システム全体の資産負債バランスを崩すことになる。不正取引でレートが下がってしまい、全保有者たちの資産価値を目減りさせることになるかもしれない(ニセ株券が出回ってしまい、発行株数以上の株式が流通している状態を想像してみるとよい。それで東証が倒産すると言うかね?)。


だが、取引所が果たして破綻するものなのだろうか?
不正に引き出された資金量が世界取引所連合のかなりの割合であれば、レートがもっと大幅に落ちるはずだし、その他取引所に取り付け騒ぎとなっても不思議ではないだろう。ところが、破綻しているのはMt.Goxだけであるという。


その原因として考えられそうなのは、Mt.Goxにだけ換金で持ち込まれたビットコイン量が多くなり、払い出し現金が底をついた、という可能性。しかしその場合、負債サイドに記録されるはずのビットコインがマイナスとなっていれば(発行高を上回るビットコインが戻ってきた、ということ)資産と同一であるので、世界中の他の取引所で換金すれば解決できる話である。その資産計上されるべきビットコインが盗まれた場合には、現金化できないので債務超過となる。

最も疑われているのは、コイン発行高に見合いの金融資産(主に現金などである)が保全されていない場合、ということだろうか。本来払い出し現金として持つべきであるが、直ぐに全部払われないということで銀行同様日本国債などで保持する、ということだな。色気を出し過ぎると株式やその他投資に資金を多額に投入し、その損失が穴埋めできない規模であれば、ビットコイン残高見合いの資産が不足して、現金化が不可能になる。


あと、算出レートが正しいかどうかが、内部の人間にしか分からないので、人集めの(ビットコイン参加者を増やす)為に取引実態を正確に反映していない投機的レートを出してしまい、ビットコイン発行高と見合い資産の大幅な乖離を招き、払い出し現金が底を尽いた、とか。換金の手数料収入だけでシステム全体が維持できるのか、というのも、少々気になる。



報道ベースからでは、破綻原因がよく分からないわけであるが、単独で破綻というのはかなり怪しいわけであり、コインが盗まれたとしても保全資産がそれほど減少している理由というのも、あまり思いつかないわけである。盗まれたコインが発行高の数%程度であれば、現金化された割合はそう多くはないのではないかとしか思えないわけである(そんな程度の換金で破綻するなら、決済システムとしては無能ではないか)。
どうも裏があるような気がする。