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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

第2次クリミア戦争の危機?〜ウクライナを巡るロシアと欧米諸国の攻防

今年で最も良かった、と思えたことは、オリンピックの開催地がソチであったことだ。この温暖な黒海沿岸都市で開催されていなければ、今頃は「血塗られた黒海」となっていた可能性があっただろう。


現在はパラリンピックが行われているので、ロシアは勿論のこと、欧米各国も目立って軍事的行動を起こすことはないだろう。双方の出方を窺いつつの睨みあいと、様子見が当面は続くであろう。

ロシアの先走り行動に対して、英米中心に、公式選手団の派遣を中止、という発表が早速行われたが、現実には選手は競技に参加していることが殆どであろう。政府の立場と、スポーツマンの立場は若干別だから。公式な「選手団派遣」は止めるけど、自主参加は止めないよ、ということであれば、実質的には選手にとってあまり大差ない。かつてのモスクワ五輪とロス五輪の参加中止で生まれた”悲劇”を繰り返さない、という、歴史から学んだ教訓を生かすだけの知恵が残されていただけでも良しとすべきかもしれない。五輪と政治は切り離されるべき、だな。


米国を中心に、ロシアがクリミアに加担するのを阻止しようという動きが広がっている。経済制裁などの発動をちらつかせているわけだが、不透明感が暫くは続くであろう。米露のどちらが正しいか、というのは、これまでの状況では判断が難しいように思われる。米国の言う国際法違反というのも、言い分としてはアリだと思うが、判断は一様ではないのではないだろうか(司法省や国務省は勿論、政府の法律顧問団などが主張を全部整理した上での発言には違いないだろう)。

http://jp.reuters.com/article/wtInvesting/idJPL3N0M34LP20140306


以下で、当方の思うところなどについて、書いてみたい。


1)ウクライナ政府は、政府としてどうなのか?

ウクライナがどうなっているか、というのが、まず最大の問題であろう。政府樹立が正統性があるのかどうか、である。新政府を国家として認め、諸外国が交渉などできるか、ということだ。欧米は、新政府が本当に政府として機能するかどうか、見てからにしろ、ということであろうかと思う。正直な所では、ロシアの影響力が増大するのは嫌だ、ということだが、表向きはそう言えないので。ウクライナとしてはヨソのロシアに自国内に手を突っ込まれるのと同じようなことなので、手出ししないでくれ、と言いたくもなるであろう。


では、今のウクライナ政府は、本当に政府なのだろうか?
軍事クーデターで政府を倒し、首都の武力制圧に成功した連中が「オレ様が政府の最高幹部だぜ、今後はオレが支配者だからな」と宣言してしまったら、それが政府として認められるか、ということである。微妙かもしれないですよね?


具体例で書いてみよう。

無業者などを主体とする無謀集団が決起して、安倍総理以下、閣僚全員を射殺、東京の国会議事堂、皇居、霞が関の主要建築物を武力で封鎖しました。その首謀者Xが新政府樹立を宣言、「今後、オレが政府代表である」と。

・欧米諸国の主張:首謀者Xが国内統治をするだろうから、様子を見て待つべき、外国は介入するな。

・ロシアの主張:安倍総理が死ぬ前に「助けてくれ、軍隊派遣してくれ」と呼んだので、助けに行ったよ。

実際、ロシア軍は無謀決起集団の武力よりも、圧倒的に強力無比で、決起集団の誰も逆らってこないよ=占領地域の住民は安全だよ、と。それは、一般住民たちが戦闘に巻き込まれるのを防いでくれる、ということがある。安倍ちゃんの救援要請に応じた軍隊は、果たして悪か、ということもある。また、首謀者Xらの武力制圧した決起集団に国を委ねるというのは、どうなの?、と思ったりしませんか?

見方によっては、評価が変わるかもしれません、という話である。


2)クリミアの意思はどうなるのか

ロシアは、単純に軍事介入を行っているわけではない。そもそもが、クリミアの議会がロシアに入れてくれ、という議決を行っているのであるし、住民意思を反映すべく「住民投票を行う」ということも、議決などの民主的手続きを経ている、ということがあるわけである。

上記例で言えば、例えば「九州は首謀者Xらが作る政府なんて、絶対に嫌だ、一緒の国には入りたくない、だから九州は九州で直接住民投票をやって、首謀者Xの国に入るかどうか決めるから」と言ったわけだよ。全くの空想ですが、田母神さんがXであれば、「今日からは、オレが日本だ」と宣言し彼を元首と認める、ということになりかねないわけだ。そんな時、九州や四国の人たちは黙って従うかな?という話をしているのである。

クリミアの住民の大半がロシアに入れてほしい、と願った時、これを武力制圧した側が「絶対ダメ、許さない」と拒否すると、クリミアの人たちはどうなのでしょうか?可哀想ではありませんか?、という話にもなるわけである。

これに類するのは、北アイルランド問題だった。
北アイルランドはイギリスが「分離独立は絶対に認めんからな」と長年軍事的に制圧を継続できたので、アイルランド島にはあるが、アイルランドではないわけである。それに反発している人たちが大勢いたので、テロが長年続いたのだ。住民が別の国に入れてくれ、と言うだけでは、認めないのが欧米諸国の枠組みであり、国際法ということになるわけである。ただ、北アイルランド問題では、特別の取り計らいで住民意思が尊重される、ということが決まって、テロ解決へと繋がったわけである。

もしも簡単に住民投票で別の国に入れる、ということにしてしまうと、分離を希望する地域はボコボコでてきてしまう、そういう混乱を生じかねないということがあるだろう。


3)台湾や南オセチア問題

この時にも、似たような状況となった。グルジア国内の南オセチアが「ロシアさん、助けて」と呼んだので、グルジアにロシア軍が介入したわけだ。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/ca9e9941438e07fac970090c547c635c


コソボだって、セルビア国内問題だったのに、米軍もNATOも軍事介入を行い、意図的にコソボの分離独立を(半ば強引に)国際的に認めさせた。ウクライナ国内騒乱でクリミアが分離を希望するのも、セルビア騒乱でコソボが分離を希望するのも、形式的には大差ないであろう。単に、立場と言い分が違う、というだけ。

クリミア問題の対応如何では、台湾問題について後々困ることが出てくるかもしれない。


中国政府が台湾政府廃止を意図したとする。
台湾国内にテログループを潜行させ、武装蜂起させる。台湾の総統と副総統を殺害し、台湾政府機能の武力制圧。
でも台湾政府及び総統は殺害される前に、「米軍さん、助けて」と救援を呼んでいた。この時、米軍が介入するとどうなるか?
まさしく今回のウクライナ―クリミアにおけるロシア軍と同じである、ということだ。中国―台湾の関係において米軍が介入する、というのも同じ。


台湾住民が住民投票で中国併合を拒否しても、それは「国際法違反だ」ということになる。まあ、形式的にはそうなりかねないだろう。米軍は台湾に介入できない。現実にそんなことが起これば、中国の国際的立場は大きく揺らぐわけだが。インパクトは、クリミア問題どころではないから。

ただ、ロシアの立場を考えると、必ずしも極悪ということにはならないだろう、というのが普通の見方ではないだろうか。

コソボ介入が正当化されて、クリミア分離を希望する住民投票が否定される、というのは、一般人の感覚からすると「ヘンなんじゃないの?」と思うかもしれない、という話である。


外交は、勝った者が勝者で正しいのであり、法的に正しいかどうかというのは必ずしも重要ではない。立場が物事を決めるのだ。