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続・辺野古沖第一水域に関する防衛大臣告示は違法

防衛大臣告示が違法であり、それを基にした刑事特別法の適用が無効であることについて、当方の主張を述べる。

官報の内容を探したが、ネット上では見つけることができないなかった。全文を読みたいが、報道ベースからしか分からない。


因みに、タイトルはこれ>
 アメリカ合衆国が使用を許される施設及び区域について、共同使用、使用条件変更及び追加提供が決定された件(同一二三)


違法と考える根拠について、少し分けて書くことにする。


1)海は誰のものか?

最大の論点は、これだ。防衛省が米軍に「施設及び区域」を提供する場合、それは誰のものなのか、ということである。誰かの土地であるとか、明確な所有物であって所有権者が好きに処分できるというのなら、米軍に提供できるだろう。

しかし、海はどうなのだ?
法学上の論点としては、海に隣接する海岸などの土地部分については国有地等であるとされたりするが、沿岸から遠く離れた海は「誰のものか」ということが明確に定まっているわけではないのだ。

少なくとも国有財産ではない。
そもそも国有財産法に規定されていないから、だ。
行政財産でないなら、普通財産か?


一般に、海(や海上権)は「領海」であることは政府が主張できても、国有財産という規定が法文上で存在しない以上、国が「自分の持ち物」であると主張することはできない。敢えて所有権を設定するとしても、地方自治体の財産であるとする説が標準的であろう。

海は、「法定外公共物」であって、国がその所有権を主張できるものではない、ということである。


2)「施設及び区域」提供の手続

ざっと書くと、以下のような流れになっている。

在日米軍から施設特別委員会宛に国有財産提供の提案
・施設特別委員会から防衛省へ提案内容を伝達
・国有財産所管部局は防衛省からの意見徴取に応じ防衛省に回答
防衛省から施設特別委員会に提案
・施設特別委員会が提案に合意した場合、日米合同委員会に承認勧告
・合同委員会承認後、防衛省から関係省庁へ通知→所管部局へ通知
防衛省及び関係省庁は閣議請議の合議を実施
閣議決定の稟請→閣議決定
閣議決定後外務省が米国と協定締結手続
・協定締結後、外務省から防衛省に通知
防衛省が施設及び区域提供決定の官報告示、関係省庁へ通知


新聞報道からは、防衛省が関係省庁に意見徴取を行ったのは、農水省だけのようであり、国土交通省(港湾関係担当なので)が回答したかどうかは不明である。


いずれにせよ、重要ステップは、日米合同委員会の承認、閣議決定、日米間の協定締結、ということになる。

その結果が、7月の官報告示ということになろう。
アメリカ合衆国が提案したりしなければ、この水域提供までのステップは開始されないし、アメリカ合衆国が日米合同委員会で承認を拒否すればいいのだし、協定締結を阻止すれば、防衛大臣告示にも至ることがないのだ。


要するに、アメリカさまの言いなりで、日本側が沖縄県民を犠牲にして、手続きを強引に進めたのだ。国民を見殺しにする安倍政権は、アメリカさまのお陰で政権維持が安泰ということにしてもらっているのだ。マスコミもこれを支え続けているのである。


3)沖縄県知事の公有水面埋立に関する権限及び手続

裏切り者の現沖縄県知事には、埋立の免許についての権限がある。これを認めたことにより、防衛省が工事開始手続を進め、第一水域拡張の大臣告示まで行ったということだ。

ただし、沖縄県知事に許認可権があるとしても、米軍に沿岸部や海域を提供することを決定したりする権限まではない。埋立許可の免許を与えるかどうか、だけである。法定外公共物であるところの「海」が地方自治体の財産であるとしても、知事にその処分権限が存するわけではない。


4)漁業権だけが権利ではない

地元漁協を抱き込んで制限水域を設定することができたように考えているのかもしれないが、それはあくまで農水省所管の漁業権関連だけである。防衛省が米軍への「施設及び区域」提供手続を推進する為に、農水省から回答を得ているとしても、それには漁業以外の意味などない。
そもそも農水省が財産所管部局というわけではない、ということだ。


5)国に海の処分権限はない

既に結論に達しているが、最初の項で述べたように、領海内の海の部分が国の財産ではない、ということなら、根本的に政府がその処分権限を有しない、ということになる。

防衛大臣告示までの手続に瑕疵はない、といかに主張しようとも、大前提として米軍が提供の提案を行えるのは、そもそも「国有財産」についてのみ、である。2)の手続事務は国有財産の場合だけ、適用される。国有財産ではない以上、制限区域を設定したり、米軍に提供すると勝手に宣言する権利など、日本国政府には持ち合わせていないのだ。


念の為、国有財産法を見てみる。

国有財産とは次のものだ。


国有財産法 第2条  
この法律において国有財産とは、国の負担において国有となつた財産又は法令の規定により、若しくは寄附により国有となつた財産であつて次に掲げるものをいう。
一  不動産
二  船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
三  前二号に掲げる不動産及び動産の従物
四  地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
五  特許権著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利
六  株式、新株予約権社債(特別の法律により法人の発行する債券に表示されるべき権利を含み、短期社債等を除く。)、地方債、信託の受益権及びこれらに準ずるもの並びに出資による権利(国が資金又は積立金の運用及びこれに準ずる目的のために臨時に所有するものを除く。)


沿岸から遠く離れた海の上は、国の持ち物か?(笑)
いずれも該当しないのであるから、権利主張はできない。仮に4号規定の「準ずる権利」を主張するとしても、矛盾が残る。

国が往生際悪く、「いやいや、領海内だから国有財産だ」と主張したとしよう。そうすると、行政財産か普通財産かのどちらかになる。


国有財産法 第3条  
国有財産は、行政財産と普通財産とに分類する。
2  行政財産とは、次に掲げる種類の財産をいう。
一  公用財産 国において国の事務、事業又はその職員(国家公務員宿舎法 (昭和二十四年法律第百十七号)第二条第二号 の職員をいう。)の住居の用に供し、又は供するものと決定したもの
二  公共用財産 国において直接公共の用に供し、又は供するものと決定したもの
三  皇室用財産 国において皇室の用に供し、又は供するものと決定したもの
四  森林経営用財産 国において森林経営の用に供し、又は供するものと決定したもの
3  普通財産とは、行政財産以外の一切の国有財産をいう。


もしも普通財産である場合には、普通財産の所管大臣は財務大臣ということになっている。

国有財産法 第六条  
普通財産は、財務大臣が管理し、又は処分しなければならない。


そうすると、米軍への提供事務手続においては、財務省の関係部局の意見徴取が必須となる。しかし防衛省農水省に意見徴取したのみである。防衛省が施設特別委員会に提案する前の段階で手続過誤があるので、それ以降の過程は無効だ。

それに、普通財産だろうと行政財産であろうと、国有財産の目録一覧のような記録が必須のはずなのであるから、財務省にその記録があることを証明する必要がある。


国有財産法 第11条  
財務大臣は、各省各庁の長の所管に属する国有財産につき、その現況に関する記録を備え、常時その状況を明らかにしておかなければならない。


文書主義の官僚組織が、今回指定された制限区域の「財産目録が存在しない」などということがあるか?


話を戻して、普通財産ではなく、行政財産だと主張したとしよう。
すると、行政財産であるとすれば、処分性の問題が生ずるのだ。


国有財産法 第18条  
行政財産は、貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又は私権を設定することができない。


2項以下に除外規定が置かれているものの、いずれも本件には該当しない。そもそも行政財産は、貸したりできない、ということだ。米軍への提供とは、何だ?譲与か?信託か?


また、第6項において、『行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度において、その使用又は収益を許可することができる。』と定められているが、いちいち海で泳ぐ人とか船で通航する人に「許可を与える」ことをやっているのか?


どの場合であっても、国が国有財産であることを主張することなど、到底できないということだ。
国有財産ではないなら、国に処分権限はなく、米軍に提供することは不可能。
国有財産であることを言う場合であっても、
・行政財産ならば貸せない=「施設及び区域」としての提供は不可能
・普通財産ならば財務大臣及び関係部局は財務省
・国有財産目録がない
・国有財産の使用許可(海上通航等)を出したことなどない


よって、いずれにせよ国の手続、処分、協定締結事務、全てが無効であり違法である。


防衛大臣告示は、根拠のない全くの出鱈目であり、制限区域を設定する権限などないのだ。
これを基にした刑事特別法適用などというのは、不当逮捕であり、国家の暴虐、非人道的国民虐待以外のなにものでもない。


長くなったので、とりあえず。
次項では、アメリカ側の違法性について書くつもりである。