怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

福島原発事故を巡る東電の大罪〜3

続きです(追記あり)。


疑問点7:
1号機のMSIV全閉が起こった理由は計器電源喪失が原因か?


①主蒸気管の異状?

アラームタイパによると、主蒸気管閉信号が出る前に別のアラームが見られていると思われる。

・14時47分50秒920
STM LINE RAD A   HGIH

・14時47分50秒930
MAIN STM VALV A   CLOSE
STM LINE RAD C   HGIH
MAIN STM VALV C   CLOSE

・14時47分51秒720
STM LINE RAD B   HGIH
MAIN STM VALV D   CLOSE
MAIN STM VALV B   CLOSE
STM LINE RAD D   HGIH


推測では、CLOSE信号が出る直前に、「主蒸気管放射能高」信号が出されたようであり、A弁及びC弁が立て続けに閉鎖されたように見える。同様にBとDでも閉鎖信号が出たように見えるわけだが、Dはほぼ同時に閉鎖と放射能高信号が出た為に表示が前後していたのかもしれない。
「主蒸気管放射能高」信号はMSIV閉鎖を自動起動するはずである。


②SGTSの自動起動と自動停止

通常だと原子炉スクラム後には、SGTSが起動する。いわゆる「閉じ込める」機能を確保する為である。PCIS(格納容器隔離系)も起動する場合がある。
1号機アラームタイパでは次のようになっていた。

・14時47分21秒920
SGTS B START ON

・14時47分50秒920
SGTS B START OFF

一度自動起動したSGTSは何故か30秒未満で停止となった、ということであろう。次の瞬間には、多分別の機能の「ラディエイション モニタ」(高濃度検出?)が自動起動した、と思われるのである。


・14時47分51秒720
SGTS RAD MON HI(L/R) ON


SGTSの通常の空調システム(建屋内部を陰圧に保つ)が一度動かされたのに止まって、「放射能高の場合」の別機能が動作したように見えるということ。


これらアラームタイパからの、スチームライン(A〜D)放射能高とSGTS機能を見ると、いずれの警報も一致して「放射能高(RAD HIGH?)」状態が発生した可能性を示しているのではないか、ということである。
その理由とは何だろうか?
制御棒挿入時に燃料棒の一部損傷が発生した、とか?


③D/G起動信号はMSIV閉信号よりも後

アラームタイパでは、D/G起動はMSIV閉より少しだけ遅れて発動している。

・14時47分51秒940
6.9kV BUS VLT 1D LOS ON

・14時47分52秒080
6.9kV BUS VLT 1C LOS ON

・14時47分57秒070
DIES GEN CB 1D-1 ON

・14時47分58秒920
DIES GEN CB 1C-1 ON


これらの時間が、2号機や3号機の場合と一致しているようには見えない。
また、MSIV手動閉としていたのは3号機であった。自動閉ではないようだ、ということである。本当にタービンバイパス弁(BPV)制御を使っていなかったのか?(もしも使っていたなら、3号機だけがRCICの起動時間が遅かったことと整合的である)
計器電源喪失が原因であれば、全部同じく自動閉となるはずなのだから。



疑問点8:
1号機は津波が来るまで何をしていたのか?


あくまで推測でしかないが、東電が公表していたものとは違うのではないかと思う。拙ブログでの見解を述べてみたい。

スクラム直後からの数分では、各種のアラームが発せられるので、全部を確認するのは難しいだろう。少なくとも、制御棒挿入などの基礎的事項の確認作業に追われることになるだろう。
主蒸気管の放射能高信号でMSIVが全閉となり、原子炉は隔離された状態となった。ここで、SGTSなどの「放射能高」信号か、D/W(ドライウェル)圧力上昇か放射線量上昇、原子炉圧力低下、などが重なっていたら、どのように判断しただろうか、ということである。

原子炉圧力低下は、ICが動いていたから、という理由の他、SRV関連による理由というのも想定されよう。
同時に、D/Wの変化をどう読むべきか?
「ひょっとすると、圧力容器からの漏洩がD/Wにあったのではないか?」
そのように考えても不思議ではない、ということだ。
そもそもMSIV閉が「主蒸気管放射能高」信号で発生していたなら、D/W内放射線量上昇があっても「おかしくない」と現場で判断したとしても整合的であろう、ということ。


記録から分かることは、

ア)圧力抑制室プール(S/C)の水位警報がアラームタイパで頻繁に見られた
イ)格納容器圧力上昇、S/C差圧上昇
ウ)CCSを機能させたとの証言、動作記録(15時04分頃B系 同08分頃A系)
エ)SRVの動作状況が津波前に見られないこと

などである。そして、運転員が「漏れを確認する為、ICを手動停止させてみた」と証言したとされる、国会事故調などの記述だ。


推測されるのは、例えば、ア)からSRVの弁機能かその周辺(接合部やS/Cへの配管系)の故障か損傷か異状である。
本来であると、開閉が自動的に起こって閉弁されるのだが、漏れが続くと蒸気がS/C内に持続的に噴き出すことになろう。しかも、アラームタイパでは正常水位信号と水位高信号が交互に頻繁に出てるので、水位計のうち噴出部付近の水位計だけが異常値を示すもののプール全体は大きいので他水位計は正常値を返す、の繰り返しだったとか?

他には、D/Wへの漏洩であるが、この場合にもSRV周辺の漏洩箇所があれば、MSIVが全閉になっても漏れるので、D/W放射線量上昇か圧力上昇(温度上昇までにはもう少し時間がかかるのかもしれない)が観察されていたのでは?

そうすると、SRVのどの弁に故障があるか分からず、手動で弁を閉止した、ということなら、SRVの動作記録が存在してなくても、おかしくないかもしれない。
また、ICを手動停止した理由として、リークがないか確認した、という証言があったことは、D/Wへの漏洩を想定するなら整合的だ。圧力容器を出たICに接合される配管のどこかにリークが存在する場合、D/Wへの蒸気漏洩になる可能性があったので、「閉じてみた」ということであろう。

また、CCSを作動させていたなら、これとも辻褄が合う。
何故なら、D/Wに放射性物質が噴出している場合には、D/W中に格納容器冷却系のスプレイを噴霧することで物質飛散防止効果があるし、リーク箇所からの蒸気噴出による温度・圧力上昇に対する低下効果が期待できるからだ。条件イ)とウ)を説明することができる。

チャートでも『TRS-1601-71A』でS/Cプール水温が低下していたが、もしも東電が言うようにICが動いたのでSRVが全く作動しなかったとするなら、SRVからの蒸気が流入することのなかったプール水を冷却する意味は殆どない。逆に、前述のようにD/WかS/Cへの漏洩があると判断していたなら、格納容器スプレイでもS/C冷却のいずれでも有用であり意味がある。

すなわち、津波到達以前に、D/WかS/Cへの漏洩が強く疑われた状態だったのではないか。
そうであるなら、格納容器隔離は確実に行われるし、リーク箇所を探索する操作をいくつかトライするとしても、当然かもしれない。それが、IC閉弁とか、SRV閉などであったのではないか?

そうではあっても、RCICのなかった1号機ではICを閉じてしまうと冷却能が失われるので、HPCI起動で注水力を確保すべきだったと思う。SRV+HPCIがあれば、上まで水位が保たれ、たとえリークが存在していても水位低下よりはまだマシだったかもしれない。満水にしてしまえば、格納容器冷却でもどうにかできた可能性もある。


それから、リーク箇所探索を行っている最中に、弁の閉操作を手動でやったりしているうちに、丁度閉じた状態で「電源喪失」になってしまったが為に、後々開弁操作が困難になってしまった可能性があるのではないかな。
それは、

・D/WかS/Cへの漏洩で、堅固な格納容器隔離が機械的に発生してしまう
・リーク箇所の探索の為、各弁の手動閉操作を行っていた途上で電源喪失

などにより、
原子炉の調節能の大部分が失われた、という結果を生じたのではないか、と。


簡単に書けば、

格納容器に漏れる→閉じ込めようとする→各種弁は原則閉じられる→後にアクセスが困難になる

ということ。
それは、後のベント作業が非常に困難になってしまった、ということだろう。


なので、1号機に関して、整合的な説明があるとすれば、格納容器内へのリークの存在が示唆されること、ではないか。しかも、燃料棒損傷等による放射線量上昇でMSIV全閉に至ったのであれば、やはりD/W放射線量高となるかもしれない、ということである。