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福島原発事故を巡る東電の大罪〜5

(続きです)

疑問点9:
1号機の原子炉運転モード切り替えが遅かったのは何故か?


アラームタイパでICの自動起動信号の直前にあるのが、原子炉モードの切り替えのようであり、通常スクラム後にはモードを「運転」から「停止」へと切り替えるわけである。それが実行された時間が、スクラム47分から約5分後の52分だった、ということだ。


14時52分

RX MODE SW STAT ON
RX MODE SW OPER OFF
RX MODE SW REFUEL ON
RX MODE SW STAT OFF
RX MODE SW SHT DOWN ON
RX MODE SW REFUEL OFF


当初、この信号の意味が全く分からず、非常用復水器の稼働と停止ではないかと思ったりしていた(http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/0e8f10d4335ff8043a8de02e1c0ad6ea)のだが、その後の東電説明により原子炉モードの「停止」操作であることが判明した。

原子炉スクラム後にするべき当初の動作として、制御棒挿入確認と原子炉モード切替操作であり、運転から停止にするのが普通のはずである。各種説明や運転マニュアルなどでもそうなっているだろう。

ところが、1号機の運転員はこの操作を実施したのが5分も経過してからだった、ということである。どうしてなのだろうか?
考えられる理由はいくつかあるが、単純ミスだけだろうか?
これまで書いてきたように、過去に経験したことのない状況に陥ってしまっていたとしたら、「どのように操作すべきか」が混乱して分からなくなってしまっても不思議ではないんじゃないか。
中央制御室が、地震被害によって、通常の操作ができるような状態になかった?
もっと深刻な警報(既に漏洩関係の可能性を指摘した)が出ていて、そちらに気を取られてしまい、「停止」操作を失念したとか?


スクラム、MSIV全閉、発電機トリップ、ポンプトリップ、となってから、原子炉モードを「停止」にするというのは、どうしてなのか?



疑問点10:
ICに自動停止機能は存在したのに、何故手動停止は必要だったのか?


津波前であっても、スクラム後から非常に多くの警報に対応しなければならず、やるべきステップ数は多いだろう。また、外部電源が喪失していたということなら、D/G起動後の電源切替操作もやらねばならなかったはず。これらを同時処理するのが困難な上に、ICを手動でコントロールするというのは、かなり熟達した人たちでなければ難しいだろう。


そもそも、機械的にパラメータで制御するのは、人間のミスを減らす為にあるわけで、多数の作業を処理しつつ機械がそれを補ってくれるはずなのだ。
なので、難しい判断を必要とする原子炉操作は、元から「使い慣れないIC」なのだから、自動制御に頼った方がよいに決まっている。

ICの自動起動は7.13MPa、という条件と書いたが、自動停止(自動の閉弁だろうか)条件があった。
復水器への蒸気管差圧(300%)か、復水器からの復水戻り管差圧(300%)信号でトリップする。マニュアルで見ても、ICは基本的に手動停止させない。電源喪失原因が何であれ、IC手動停止は「原子炉圧力が1.04MPa以下」であって、手動停止はない。



疑問点11:
無停電交流電源装置(CVCF)は全く無効だったのか?


東電が言うには、MSIV全閉となったのは計測機器電源が喪失(外部電源が喪失したことによる)したからだ、ということだった。
本当に、そんな現象が起こるのか?

普通の重要機器を考えてみるとよい。例えばパソコンなんかでも、停電に備えて、無停電電源装置を設置していることはあるだろう。これと同じ原理が原発施設でも採用されていない理由があると思うか?

本当は、外部電源が落ちたくらいで、全部の計測機器が電源喪失となるわけではないだろう。基本的には、CVCFが備えられているので、非常用ディーゼル起動で給電が開始されるまで停電状態になんてなるわけないのでは?

そんなに安い設備だったら、重大な緊急事態の場面で、最初の数秒が「計測機器が電源落ちて空白時間帯です」って、なってしまうではないか。

アラームタイパからすると、D/W圧力計やS/Cプール水位計が動作しており、それはMSIV閉信号が出る14時47分50秒直前でも計測していたことがうかがわれる。主蒸気管AとCが先に閉信号が出たが、BとDの信号が出るまでの間(51秒710)でも、「SUPPRESSION LEVEL」及び「DRYWELL PRES」の計測信号が出されていたように見える。


*D/W圧力計やS/Cプール水位計は、全交流電源が喪失すると、計測できなくなる機器である(DC電源で監視可能なのは、原子炉圧力と水位(狭・広帯域)計である)。これら計測機器が生きていた、ということは、1号機MSIV閉信号の時点で交流電源は使えていた、ということを意味する。


これは恐らく、CVCFが機能していれば「計測機器電源」は一時的に外部交流電源が受電できない状態であっても、内部のD/Gが2台使えるわけだし、計測機器を停電にすることなど通常ではあり得ないだろう、ということだ。

また、このCVCFはHPCIとも関係しており、交流電源喪失状態になった場合には、原子炉スクラム後原子炉水位の調節には、やはりHPCIを使えるようにする、ということになっているわけだ。原子炉圧力の監視と調節は、基本はSRVとHPCIなわけで、しかも計測電源が喪失(外部電源やD/G起動できず使用できない=全交流電源喪失の場合)したとしても、CVCFがあるので「HPCIタービン入口蒸気圧計」で圧力監視が補われるということになっているのである。したがって、HPCIを起動しない理由というものは、基本的には存在しないと言えよう。もしあるとすれば、水位高L-8信号でトリップする場合くらいだろう。

前項の原子炉「停止」モードにするのを忘れたいたくらいだとすると、HPCI手動起動まで頭が回っていなかったことは想像に難くなく、余程とんでもない状態にでも陥っていなければ、スクラム+MSIV閉後の基本操作を取らない理由はないだろうからね。


東電が何か重大なことを、事故直後からずっと隠し続けてきたのだろう。内部の人々も、自分の失敗を隠そうとしたりしたか、非常にマズいことを情報集約に回さなかったが為に、対策が誤りであったり遅れたりしたことは間違いないだろう。


隠そうとしたことが、3月11日の1号機の状況を極端に悪化させることになったはずだ。


計測機器電源が全号機の「MSIV全閉」理由でない、とすると、東電の出鱈目が明らかになるわけだ。
意図的に、嘘を言い続けてきた、ということだ。
これが犯罪的ではない、と?