怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

福島原発事故を巡る東電の大罪〜6

疑問点12:
1号機の「原子炉水位が分からない」とはどういうことか?


枝野官房長官の発表などで「水位が分からなくなっている」という文言を聞いたように記憶している。普通に考えると、「言うに言えない」ってことであり、バレたらまずいので「分からないと言うしかない」くらいに非常にヤバい状況ってことだと、殆どの人たちは受け止めていたのではないか。


なので、まず「水位が分からない」というのは、裏返せば「燃料棒が露出しているであろう水位です」とか「冷却材はほぼゼロです」というような話ではないかと。

他には、電源がないので計測できない、という可能性はあるだろう。東電はそれを言ってきたわけだ。パラメータが分からないから、やむを得ないのだ、と。これについては後述する。

別の可能性というのも存在する。
操作ミスとか運転員(東電の対策本部の頭でっかち)たちの知識欠如に由来する場合、だ。
操作ミスというのは、現場の運転員たちが自力でやってしまうこともあるし、遠く離れた本部の連中が、教科書的知識だけに基づいて誤った指示を出してしまい、かえって状況を悪化させたりするか、時間と労力だけを浪費させ徒労に終わるだけということもあろう。


具体的なミスの事例は存在する。
2007年10月30日の1号機において、原子炉圧力が計測できなくなった。A系とB系にそれぞれ4系統ある配管の弁の誤操作により、計測数字が表示されなくなったというものである。一つの系には、原子炉保護系に2管、IC系に2管が接続されており、その元弁が閉止されてしまった為であった。
ここから分かることは、原子炉圧力を測定するのに、保護系は2×2(A、B)と4管が使われていること、IC系にも同じく圧力測定用の配管が存在すること、の2点である。IC系の圧力測定を行うのは、前述した通りにトリップ条件が差圧によるものであるからで、安全機構を動作させる為には圧力数値が分からなければならない、ということだ。


仮に、どこかの配管からリークが疑われたものの、場所の特定ができない時、とりあえず可能性のありそうな所を「閉めてみろ」という指示に基づいて、手動でこうした元弁を閉じたりすると、計測用配管も閉じてしまって圧力が測定できなくなってしまう、ということ。誤操作というのは、事故発生以前から存在している場合(顕在化しなかったのは偶然使用される場面がなかったから)でも、事故後に実施した操作でも起こり得るから、何が間違いか、何が問題だったか、というのを検証するのが難しいこともあるのだ。


東電は普通の計算モデルを持っていたはずだろうから、たとえ計測数値が正確に分からない場合であっても、おおよその見当はついていたはずだろう。注水が止まっていれば、内部水の量とか発熱量は殆どが分かるはずなので、水がどのくらいの時間で「なくなってしまうか」というのは、計算できるはず、ということ。


過去の研究モデルのざっとの水準でも、2時間を過ぎると燃料棒露出の可能性がでてきて、2時間半〜3時間もするとメルトダウンが始まるであろうことは言われていたわけでしょう?

つまり、17時半〜18時くらいの時点では、既にこのままでは「メルトダウンの可能性大」というのが明白であったわけで、格納容器に接近できた時期にあらゆる手段を講じるべきだった。最初の2〜3時間が勝負を分けることになるのは、原発を管理する人間たちならば誰もが分かっていたはずだろう?
にも関わらず、何ら有効な方法をとることなく、無為に時間だけが過ぎてしまったのだよ。誰も解決策を見出したり、的確な指示もできなかったということだ。


因みに、当日のネット配信記事では、次のような発表だった。


読売新聞 3月11日(金)18時26分

福島第一原発の1、2号機が運転停止

地震のため、両機とも運転を停止したが、原子炉を冷却するシステムが復旧しないという。同本部によると、2〜3日は問題ない見通し。

=======


何という暢気な姿勢であろうか。18時過ぎの時点でさえ、「2〜3日は問題ない」見通しって、超甘いことを言っていたわけだよ。こんな記事を書かせた連中というのは、どこのどいつなのだ?本部の人間って、こんなにバカなのか?
結果は、真逆で、2〜3日もしないうちに原発の爆発が相次いだんじゃないのか。メルトダウンどころか、メルトスルーという世界でも類を見ないレベル7の事故を起こし、核物質をまき散らすことになったんじゃないか。


18時半の時点で、1号機はメルトスルーに至っていたかもしれないのに、だ。
格納容器はまだ保たれていたであろうが、内圧はうなぎ昇りになっていたであろうに。水位が読めません、なんて段階ではなかったのだよ。今の福島原発のような、壊滅的事態を招くであろうことは、ほぼ想定できたであろう。現場を知る人間ならば。


水を入れる方法を、3時間も誰も考えていなかったことが、不思議でならんわ。



(追加)16時半頃


3月11日の夜、電源車が何台も到着したはずだろう。それから、何時間も大勢で何をやっていたのか、本当に不思議でならない。しかも、皆さんは本業の電気屋さんたちなのですよね?電力会社の、本職の、専門家たちなのですよね?
それでも、電源が供給できるようにならない、というのが、全く分かりませんわ。


病人がいるとしますか。救急搬送された人でもいいんですが、とりあえず「やるべきこと」は限られていますね。
基本中の基本は、点滴をつなげられるようにすること、つまり「血管確保」=輸液ルート確保、です。原発の給水ラインを確保するのと、何ら違いがない。


東電や保安院がやったことというのは、現地に「輸液ボトルを100本運べ」とか、「輸血用の血液100単位を運べ」ということで、病人のベッドの横に輸液ボトルや血液パックが山積みにされたわけだ。

これでどうやって治療できると?
作業が慣れている人間がたった一人でもいれば、点滴セットや延長チューブや三方活栓などは、忘れず組み立てられるわけ。でも、知らない人間がやると、ボトルや血液がたくさんあっても、「入れようがない」ってことになるんだよ。現場で組み立ててから、「延長チューブがないので届きません」って、何を言ってのかと思うね。

細くても難しくても、とりあえず「何が何でも」ルート確保、これが最優先に決まっている。輸液ボトルを大量に輸送する納品業者が100人いたとしても、決してルートは確保されないんだわ。たった1人でもいい、刺すべき血管が分かること、そして実際に刺せること、これが実行できれば、最低限1ルートは確保できるわけだよ。必要なのは、たった一人の「分かる人間」であり、時々刻々対応し判断できる人間、だ。東電は、それすらもできなかった、ということ。


1号機は、兎に角1ラインでもいいから、給水ラインを確保しなければならなかったのに、「計器を読むこと」なんかに時間を無駄にかけてしまっていなかったか?
血圧がいくらか、なんて、数字見ても見なくても、ルートがなけりゃ手段が限られるんだから、血圧測定の結果が出るまで待つとか無意味。正確な数字を知ってみたところで、やるべきことはルート確保だから。血圧が極端に下がってるな、とか、逆に上がってるなってのは、パッと見で分かるんだから、必死でルートを確保するに決まってる。

また、輸液してても、「何かおかしい」と感じたら(入っている感じがしない、効果が感じられない、等)、チューブ類が途中で外れてるとか漏れがないか、チェックするのも当たり前だろうに。
全体像を把握して判断する、というのがどうして普通にできないのか、全く分からない。


3日以内に輸血しないと死亡するかも、という場合、無駄に24時間とかを使うと思うか?何日もダラダラと引き延ばすか?
そんなわけがないだろうに。全力で輸血準備をするだろ。だが、東電は3日経っても間に合わず、全てを壊滅させた。


2号機や3号機は、24時間以上経過していて、その間、奇跡的にバッテリーが継続し、RCICやHPCIやSRVが機能しており、1号機のようなメルトダウンが免れていたというのに、どうしてあんなに何十時間も経ってからでさえ、冷温停止ができなかったのだ?
電源復旧をしてバッテリー車を繋いだと言っていたのに、それでもダメってどういうことなの?
普通は、10時間くらいもすると、冷温停止に至るわけでしょう?
長いケースでも12時間もすれば、RCIC(HPCI)使用から低圧系の何かで冷却が終われるくらいになるんですよね?
S/Cのプール水は、冷温停止にできる量をはるかに超える水量が入っているのですよね?


それで、どうして、36時間以上経っても冷温停止にできなかったのかが分かりません。ひたすら水を入れればよかったのに、冷温停止にできない理由というのが、全然分からないわけです。要するに、誰も冷却方法もラインも分からなかった、打開策も正確な指示も考えつかなかった、ということですよね。

それが、原発を管理してきた東電、保安院原発メーカーや技術者集団の、出した答えだった、ということなんですよ。


簡単に言えば、「どうしていいのか、分かりません」だ。
そして、現実は、その通りになり、反映された結果が、3基とも爆発、だ。


でも、次回からは、「オレが答えを知っているから、大丈夫だ、オレに任せろ」ということになるんですか?どうして?


2011年3月のお前ら(の実力)と、今のお前らでは、一体全体何が違うと?
そんなに、実力が上がったとでも?
嘘だろ、そんなの。
昨日までろくに手術できなかったのに、何人か殺せば、できるようになるとでも言うつもりか?明日は、手術が成功できると?アホだな。


格納容器は健全だ、って豪語してたんなら、作業ができなかったなんてことはあるわけないだろう?放射性物質が漏れることなどあり得ないし、建屋が吹き飛んだくらいでは漏れないんだろう?(笑)
被曝だって、全然へっちゃらなんだろう?


だったら、どうして1日や2日で、代替ポンプ仮設とか、電源復旧とか出来なかった?2号機や3号機に給水ラインを作ることさえできなかったわけだろう?
その程度の簡単なことすらできなかったのに、どうして次からは大丈夫だと断言できるんだ?
分からない人間が何人集まっても、分からないんだよ。


(更に追加)


疑問点13:
IC系配管の破断は検出できなかったのか?


既に書いた通り、ICの圧力計測用配管というのが2管は接続されているであろうことが分かった。
そして、他にも機能があるであろうことも分かった。東電資料では、一切述べられていなかったわけだが。


それは、「IC配管破断検出器」(dPIS)である。
当初、運転員の証言として、ICの手動停止はICの配管にリークがないか確かめる為、ということがあったであろう。
だが、元からdPISが備わっていたのであれば、ICを起動して開弁状態になった時に配管のどこかに破断の存在が疑われる時には、圧力測定で圧低下が観察されるから破断検出されるはずなのだ。目視確認とか、そういうレベルの話ではないのである。

機械的にリークの警告は検出可能であったはず、ということ。アラームがなかったのであれば、破断の可能性はほぼ無視してよかったであろう。もしICの閉弁をする場合でも、A系かB系の片側は残しておくべきであった。発生蒸気が戻り水になるICのシステムは、最も原子炉水量を維持するのに役立つのだから。


それから、計測用配管2管と同じなのか別なのか分からないのだが、差圧によるトリップ条件の発動に必要な配管が「差圧検出用取出配管」である。もしもIC系の配管にリークを疑うなら、ICに接続される配管やこの差圧検出用取出配管系に漏洩ということだ。これらが機械的にdPISで感知できないという可能性は果たしてどれほどあるかということと、たとえ微小リークが疑われたとてICを止めるリスクとの比較でどうか、という点からして、IC停止を正当化できるほど強い理由は誰も立論してないだろう。


何の為の自動化なのか、よく考えてみるべきである。