怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

福島原発事故を巡る東電の大罪〜10

(続きです)

色々と疑問点を調べているうちに、ちょっとよく分からない感じになってしまいました。
迷いもあるのですが、とりあえず書いておきたいと思います。


疑問点21:
ガス作動弁はどうやって動かしたのか?


この点について、疑問を抱いた理由はいくつかある。
ひとつは、1号機の水素爆発がどうして発生してしまったのか、ということだった。

格納容器圧力は設計値の約2倍まで上昇していた、ということで、一応の容器破壊は免れていた段階であったのではないかな、ということであった。メルトスルーが生じて格納容器にリーク部分が生じれば、水素ガスが蒸気などと一緒に抜けていくかもしれないが、建屋内に爆轟を生じるほどに溜まったとも思えなかった。ベント作業によって、格納容器圧力が下がったが、その時にベントライン以外に漏れて、建屋内に水素ガスが溜まった、ということも、にわかには信じ難かった。


過去の火災事故例でも、原子炉建屋が吹き飛ぶというのは、あまり類を見ないことでもあった。

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-07-04-18


当初、想像した理由というのが、タービン発電機内に封入されている水素ガスが漏れたのではなかろうか、というものだった。冷却用として、水素ガスが大量に用いられているはずなので、タービンと原子炉建屋で連絡している何らかの配管が破断するなどして、原子炉建屋に流れ込んでしまったのではないだろうか、と。

だが、1号機のみならず3号機や4号機までもが、大量に漏れ出る、といったことは想定し難いのではないか、と思えた。
で、記事に書こうと思っていた矢先、東電が突然の発表。


2号機のベントが失敗していた、というものだった。
何故今頃になって、そんな大した論点でもない”失敗”を公表したのだろう?
理由というものが、全然わかりませんでした。

排気塔を出る際に破られるはずの、ラプチャーディスクが破れていませんでした、ということを言った所で、特に何かが分かるというものではないでしょう。東電の責任が何か変わるものでもないし。



とにかく、頑丈な建屋が、特にタービン建屋ではなく原子炉建屋が次々と爆発したことの理由について、当方の推測を述べてみたい。


ズバリ、ベントラインや給水ラインを形成する為の操作に、水素ガスを使ったのではないか、というものである。


①置換用窒素ガスは1プラント分しかない

タービンに封入されている冷媒用水素ガスは、大規模災害時には基本的に「別の不燃ガスに置換せよ」というのが原則なのだ。通常では、水素ガスを排気して、窒素ガスに置換する装置を作動させれば、安全に水素ガスは消失するのである。しかし、この窒素ガスの量が1プラント分しかないので、今回の福島原発のような多重事故を生じると、水素ガスを置換できないのである。

火災防止の為に、水素ガスの緊急排気を行うこともできるそうだが、それが実施されたかどうかは不明である。火災や爆発事故防止の為には、二酸化炭素に一度置換してから排気する、といった手法もあるようだが、そんな時間的余裕があったとは思えない。なので、水素ガスはそのままにされていたのではないかな、と。

なので、1〜3号機のどこかのタービンで水素ガスから窒素ガスへの置換が行われたのかもしれないが、それが実施できたのは1つだけだったはずだ。


②ガス作動弁用のガスが尽きたのではないか
(1号機のSRV動作記録が秘匿されていたことと整合的である)

各種の弁は、大きく分けて電動弁と空気(ガス作動)弁がある。空気弁は実際には酸素濃度を下げる意味から、空気ではなく窒素ガスが用いられているのではなかろうか、と。

そうすると、窒素ガスは弁作動用のもの、建屋内の酸素置換用のもの、タービン内水素置換用のもの、と多様な利用が想定されていたであろう、ということである。配管類やガスのボンベ・タンク類は全部別々の設計や構造になっており、独立系であるということなら、窒素ガスが減ったとしても弁作動用ガス圧が低下する、といったことは起こらないのかもしれない。この辺りの構造がどうなっているのかは、全く分からない。



ただ、タービン冷媒用水素ガスに関してでさえ、水素トレーラーがプラント内に存在することは珍しいわけではないようである。大規模災害時には、この水素トレーラーの退避なり、水素タンクとの接続をきちんと管理すべし、というのが防火上の措置ということである。多分、タービン建屋のどこかか、いくつかのプラント分のタンク(ガス建屋?)がどこかにあるということではないかな、と。



ガス動作弁に関して言うと、通常は殆ど用いられないSRVが2号機でも3号機でも、目一杯活躍していたわけです。他の弁についても、通常以上に動作を必要とされた場面が多かったのではなかろうか、と。そうすると、動作用の窒素ガスがなくなってしまったりすることはないのだろうか、と。実際、1号機のベントラインを作ろうとした際にも、電動弁は電気がないので動かないとか、ガス動作弁のガスがなくて遠隔開弁ができない、といったことがあったはず。そうした中で、現場で手動で開いたといった話が出ていたのではなかったかな、と。



ベント作業が難航したのは、そうした開弁ができないということだったはず。
そこで推測されたのが、ガス動作弁を開弁する為に、窒素ガスが尽きてしまっていたのなら、どうやったのだろうか、と。ひょっとすると、水素ガスボンベしか残っていなかったのではなかろうか?

窒素ガスボンベの代わりに、水素ガスボンベを接続して、仕方なくガス圧を維持したりしたのではなかったか?


そうすると、1号機の水素ガスが滞留した理由として、ガス動作弁を開弁する為に水素ガスを用いてしまい、しかもそれまでSRV動作についても水素ガスでどうにか作動させていたとしたら、どうなんだろうな、と。


これが建屋内に充満してしまうことになり、遂には爆轟を生じてしまったのではないかな、と。
1号機の燃料棒が露出した状態になっており、爆発前までに炉心を水没させられるほどには給水できたとは思えず、ジルコニウムと水との反応で生じた水素が水素爆発の原因となったわけではないのかもしれない。


そう考えたりしたわけだが、蒸気とジルコニウムがあれば十分な量の水素を発生させられるのかもしれず、よく分からない。ただ、窒素ガスの量が1プラント分しかなかったということ自体が問題であり、複合事故が生じた時に問題になることは想定できたであろう。


4号機までもが原子炉建屋が吹き飛ぶのは、ちょっと不自然であり、理解し難い。

水素ガスが約18%といった高濃度でなく、ずっと低濃度でも破壊はできる、という東大の先生のご意見も読んだが、疑問に感じた。使用済燃料プール水から発生する水素ガス濃度なんて、かなり限られているから。それよりも、水素ガスボンベが意図的なのか、誤ってなのかは不明だが、窒素ガスボンベの配管に接続されてしまった場合の方が爆発するような気がする……、ということである。


これは、単なる想像に過ぎないので、現場の人たちにしか、本当のところは分からない。