怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

安易な「米軍基地撤退後のフィリピン」を真に受ける無知なテレビ評論家たち(再論)

よく見かける意見として、

「米軍基地がフィリピンから撤退したので、中国軍にスプラトリー諸島を占領された」

というものがある。

一部の軍ヲタたちが用いるありがちな例、ということなのであろうが、こういう人たちは「たった1例」の実例提示で、これを一般則のように主張できると思い込んでいるのであろうか。
まあ、起こった出来事として、事実ではあるし、そういう一面はあるのかもしれないが、それはあくまで特殊な1例であるかもしれず、鵜呑みにするには慎重さが求められるはずであろう。そういうことを理解できないのかもしれないが。

例えて言えば、「○○を投与したのに、〜に感染して死亡した」という例がたった一つあるというだけで、「○○は〜には無効だ」と主張するようなものであるかもしれない、ということだ。本当に無効かどうかを確かめられるわけじゃない。

だが、テレビなんかでいい加減な意見を披露して偉そうにしている評論家連中には、考える能力がなく知識もないので、安易なテンプレ的主張をバカの一つ覚えみたいに繰り返すのかもしれないな。

フィリピンのスービック基地とクラーク基地から米軍が撤退したので中国が島を占領した、と何の証明もないのに断言するわけである。本当にそうなのか?
いえることは、
・92年にフィリピンの基地から米軍撤退
・95年に中国はミスチーフ環礁を占領
という事実だけである。この両者について、因果関係が特定できるわけじゃない。

しかも、陰謀論を笑うヤツラに限って、こういうのを何の疑いもなく主張しているのが、極めて不思議なのだな。「自分だけは正しいことを知っている」と確信して疑わないというその姿勢こそが、常々無知な他人を陰謀論と笑っている連中自らが実践している、という矛盾なのである。

つながりのある事象かどうかが不明な2つの事柄について、何らかの因果関係を作り出して結び付けて論じるのが「陰謀論」なんだろうな、と思っていたけれども、傍から見れば何らの違いもないようにしか思えないな(笑)。


参考までに、南シナ海での島嶼領有権を巡る紛争というのは、中国とフィリピンの間だけの問題ではないようである。


①74年パラセル諸島での紛争

西沙諸島 - Wikipedia

中国は、沖縄に海兵隊がいて、フィリピンの海軍基地や空軍基地に米軍がいても、そういうのには関係なくパラセル諸島を実力行使で奪った、ということですな。


②88年赤瓜礁を巡る紛争

赤瓜礁海戦 - Wikipedia

これも同じく、沖縄海兵隊が存在し、フィリピンの米軍は当時残っていたのにも関わらず、中国は占領した、ということなんですね。ベトナム相手だから、米軍は中国の好きにさせておいた、ということでもあったんでしょうか。
或いは、ベトナム戦争の恨みを「中国に晴らさせた」という陰謀でもあったんでしょうかね?(笑)


③90年代後半の中沙諸島最大の島の争い

黄岩島 - Wikipedia

フィリピンは中国からの侵入を排除しているようですけどね。米軍がいなくなった後にも関わらず、ですな。


スプラトリー諸島最大の島、「太平島」は台湾が占領

太平島 - Wikipedia

軍の飛行場とか作ってしまったみたいですけど。こんなの、米軍の存在に関係ありますかね?



これで、本当に「米軍撤退でフィリピンは島を獲られた」と言い切れますかね?


それと、スプラトリー諸島を占拠しているのは、中国軍に限ったものではないようですね。マレーシアとかベトナムとかいくつかの国々が占拠しているようなんですが、実際のところはどうなっているんでしょうかね。

ファイル:Spratly with flags.jpg - Wikipedia

ごちゃごちゃしていて、あまりに複雑すぎてよく分からないくらいですね。

たしかに、フィリピン単独の軍事力で解決ができるとは思えないわけですが、だからといって米軍基地があれば解消できているかといえば、それは疑問ですね。もし、そう信じて疑わないのであれば、「何ておめでたい連中なんだ」とは思いますな。


日本の事実を言っておいてあげよう。

「沖縄海兵隊」は、ずっと存在し続けてきたが、日本の島は占領されたままじゃないか(笑)。

千島列島は、どうだ?
北方領土は未だ還ってこないばかりか、海で何度も銃撃を受け拿捕され続けてきたじゃないの(笑)。不法占拠されたまんまじゃないか。米軍基地もあり、島を奪い返すのが得意なアメリ海兵隊がいても、だ。

じゃあ、竹島はどうか?
構築物を作られたまんまだろ。米軍基地があっても、海兵隊がいても、そういうことには「無関係に」韓国に竹島に上陸され構築物を設置されとるじゃないの。

こういうのを、全て取り返してきてから、「米軍がいれば(米軍基地があれば)島嶼は守られる」とか、外国からの不法占拠を防げる、とか主張するべきだろうな。
フィリピンの例を挙げるだけで、基地がなくなり米軍が撤退すると島を獲られる、なんて言えるのなら、今の日本の状況は一体何なのよ、ということですわな。


普天間基地があろうとなかろうと、大して違いがあるんですか?

竹島北方領土を取り返してから、言えっての。




2015年6月24日

追記:


最近においても記事に無駄なコメントが多いので、過去記事を何年分も遡るのが非常に面倒でしたが、少し追記しておきたい。


①最近の南シナ海における中国の動向

特に問題とされているのが、中国が埋立工事を行っていること、滑走路などの構築物を建設していること、といったことがある。
米中間での会談でも、幾度か取り上げられているが、米国は中国にこれを「やめさせる」という明確な姿勢を打ち出したことなどない。具体的な外交政策上でも、そうした動きはない。

簡単に言えば、口で言うだけ、である。
それも、懸念している、という程度の表明であるので、米中が裏で握っているなら、プロレスを見せているに過ぎない。

 2009年12月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/f25c3374e9a86322bc60ff598b1e648d


②中国の南シナ海での動きが活発化したのは2012年くらいから

少なくとも、この記事を書いた2010年当時には南シナ海における中国の活動状況は、今ほど目立っていなかった。
むしろ、尖閣における「海底ガス油田」の開発で大袈裟に中国との対決姿勢を煽っていたに過ぎない。では、あのガス田開発問題は、その後どうしたか知っているだろうか?(笑)マスコミでも殆ど目にすることなどなくなったのでは?

この当時には、鳩山政権が普天間基地移転問題で、県外移設を語った為に大いに揺れていた時期であり、殊更に中国の脅威と沖縄海兵隊の存在意義を喧伝する必要性があった為、米国が中国に対し協力を求めたとしても何ら不思議ではない。基地が本当に必要か疑問視されていたのだから。

  2010年1月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/dd87dfdabed84b7f89f4b3f9cc392d0c 

実際、2010年以前には南シナ海における権益について、中国が「核心(中核)的利益」と呼んだことはなかった。この発言は中国高官からの「外交メッセージ」として出されたに過ぎない。具体的行動に移ったのは、もう少し後の2012年頃からだ。「中国海軍の脅威」をアピールする為だ。2010年10月頃に使われた手は、尖閣での漁船衝突事件だった。


③中国の埋立行為が国際法違反であるなら、何故制裁措置が取られないのか?

滑走路等構築物を建設する行為が本当に外国領土の侵略であり、国際法違反だということが確実ならば、何故安保理にでもかけるとか、何らかの経済措置を実施しないのか?

米国の貿易相手国の第一位は、中国である。
しかも、埋立開始以降も中国からの輸入額は拡大している。本当に、米国が中国と対峙するなら、何故経済制裁を実施しない?
本気で覇権を争うつもりなら、例えばロシアに実施したような制裁措置はいくらでも可能だ。多国間で実施せずとも、米国が単独で行うことが可能だし、中国の貿易にとっては痛手である。対米輸出額はトップシェアだから、だ。

何故、こんな簡単な措置を取らないのか?
答えは簡単だ。無意味だから、だ。
争っているポーズを日本人のアレな連中に見せておけば、コロリと引っ掛かるからやってるだけであり、現実には米中間の協力・連携は深まっている。軍事的にも、軍隊同士の共同行動が実施されているし、戦略対話も当然行われているではないか。


④実効支配は中国だけか

上述した通り、海域の領有主張は中国とフィリピンだけでなく、ベトナムやマレーシアや台湾などの実効支配がある。滑走路建設は、中国以外のフィリピンやベトナムも(台湾も、だが、中国の一部と言われるかも)実施済みだ。米軍基地の撤退が中国の埋立の原因となった、ということは何ら証明されていない。


⑤何故フィリピンに米軍基地を復活させないのか

撤退した基地のように、米軍基地を復活させ、駐留軍をお願いすればよいのではないか?沖縄の基地のように、海兵隊に常駐してもらえばよいのではないか?

自衛隊に協力を求めるといった報道があったが、そんなことをする前に、米軍にお願いしておけばよかっただろうに。
元から基地があったこと、米比軍事協定は99年から締結され臨時の軍巡回は行われてきたこと、というのがあるわけで。米軍に依頼しない理由があるとすれば、やはり主権侵害を嫌ったから、自衛隊の方が過剰な介入や政治的介入などの問題が少ないと判断したから、といった理由があるのではないのか?

本気で中国の軍事的脅威が問題というなら、米国海兵隊基地を設置すべき(笑)だろう。
日本と違い、双務的軍事協定が締結されているわけだしな。


⑥小まとめ

要するに、日本国内で「中国軍が、中国軍が」と大袈裟に騒ぎ、攻めてくるぞ、とか脅している連中は現実を見ることができないのだな。
本気で米国が中国と対決していることなど、何もなかろうに。むしろ、日本をいたぶる合間に、米中貿易と経済関係は強化されたのだよ。韓国でさえ、対日貿易を大幅に減らし、中国が筆頭シェアへ、対米貿易が次に、ということで、中韓両国は、日本との経済関係の希薄化を推進したのだ。日本は両国への輸出が相対的に減って、日本からの経済的自立が確立されたのだよ。


結果、日本は中韓と切り離され、対米依存を深めたということになる。これは、今後TPPで一層の隔離効果をもたらし、日本は「狩られる」場とされてしまうだろう。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/79f9f6869f95e345df77bf8be731e897
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/079d6198b5e4d5cba6e441fcfc190704



6/28 23時半頃

偶然、以下の記事を発見した。

http://b.hatena.ne.jp/entry/geopoli.exblog.jp/24635022/

http://geopoli.exblog.jp/24635022/


2010年時点で書いていたこと、そして先日追記したことの総まとめ的な論説が海外記事で書かれていたという紹介だった。

国際法上の視点、ということだが、当のブログ主曰く『突っ込みどころが多い点は否定できない』だそうで、ならば即座に突っ込めばよいのにね、とは思う。
突っ込みが正当であるなら、当該記事の主張は崩せるのではないですかね。どうして、その作業を行わなかったのだろうか、と気になる。