怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

シリア難民はアサド転覆戦争の犠牲者

世界中が数百万人にも及ぶシリア難民問題について、高い関心を持つようになったが、このような惨状が生じた最大の責任は誰にあるのか、よく考えてみるべきである。これほどまでに事態が悪化する前に、厳しい批判の目を向けておくべきであったのだ。それができなかった為に、壊滅的な状況となってしまった。


シリア問題については、過去に拙ブログで取り上げてきた。


12年8月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/b3314873404dcf29512d58a4143a804f

13年8月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/ed32bb044e401db26eedc835b8647143

13年9月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/808b0173b976212af4c721c37b261b46

15年2月
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/6e8003678144e5aaaa05e76e50bfc249
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/9bd2212390f5f52161566e6f0483925d


最近になって、ロシアがシリア政府への軍事支援を開始するに至ったが、拙ブログでは基本的な考え方は変わっていない。

そもそもの発端は、2011年の「アラブの春」といった革命機運の高まりということではあるが、それは人為的に発生させられた運動であり、その主導的役割を担ったのは米国であろう。煽動工作活動が、見事にうまくいった、ということだ。

その便乗として、シリアを親イスラエル・親米政権に統治させたいという目論見があったものと考えている。それが、アサド政権の排除計画であり、これは米国単独のものでなく、加担した国々は当然あった。

真の敵とは、一体誰なのか、それをよく考えてほしい。
拙ブログなりにこれまでの流れを整理し、簡単なまとめとして書いてみたい。


1)アサド大統領は極悪人だったのか?

テレビ映像でシリア難民がスマホや携帯を普通に使っていることに気付いた方々はいるだろう。ニュースやネット情報でも、現地に残っている人たちが、やはりスマホやネットを使っているということをご存じかと思う。

ここで、ふと疑問に思いませんか?
どうして、ネットワークが使えているのかな?と。戦火でボロボロのシリア都市部ですら、WiFi環境が残っているということを、不思議に思いませんか?
スマホの提供会社の通信網は現存しており、どういうわけだか完全破壊からは免れている、ということなのですね。
普通の激戦状態の国であると、放送・通信網は乗っ取られるか、それを妨害・阻止する為に設備は破壊されるでしょう。敵軍に鹵獲されて利用されるより破壊して逃げた方がよい、ということはよくあるのです。特に、相手がテロ勢力である場合、軍用の通信手段は保有していないことが普通であるので、携帯やスマホ通信網というのは、重要な通信インフラということになるでしょう。これをそのままにしておく理由というのは、ないわけです。


もしも、世間で喧伝されるが如く、アサド大統領が非情で極悪非道ならば、どうして一般市民に通信網を利用させておく必要性があるのでしょうか?北朝鮮とか中国共産党がやっているみたいに、制限を厳しく課すこともできるし、アクセス制御や情報統制も可能なはずです。政府軍関係者以外は使用できなくすることなど、難しいことではないでしょう。
仮に、反政府勢力に施設が占拠されてしまった場合であろうと、主要な基地局を破壊できれば、全部を使えなくすることはできるでしょう。シリアにスマホ通信網の供給業者が何十社も存在していて、残存通信網が何回線もあるのだというのも、ちょっと信じ難いですね。

この一事からでも、北朝鮮レベルの独裁国家とは思われず、中国の情報統制水準よりも緩いのではないか、としか思えないわけです。


騒乱以前では、日本人留学生がシリアに行っていたこともあるし、日本語教師としてシリア在住の人もいたようです。普通に考えると、極悪な軍事独裁者が支配する国に留学したり就業したりしに行くとは思えませんから、極端に迫害や統制が酷いとか文化・生活水準が著しく低いということではなかったでしょう。戦火の中でインターネット網やスマホ通信網の新設工事は行いませんから、2010年以前のインフラですら、それらが普通に利用できる程度には生活水準は保たれていたということです。
他には、シリアが国連の機関等から、虐殺が非人道的だとする非難が度々出されていたということもなかったのであれば、最悪レベルの極悪国家とは思えないわけです。アサド批判で出されるような、悪魔の権化が如しというのはプロパガンダに過ぎないのではないかということです。


2)2011年以前のシリアはどうだったのか

度々テロによる攻撃を受けていたことはあったでしょう。
ダマスカスにおいては、04年から毎年自爆テロが発生し、死傷者を出しています。また、06年には在シリア米国大使館の襲撃事件が発生、治安当局が対テロ戦を徹底して行う必要性に迫られていました。
アサド政権が自国民に発砲し死亡させた事件としては、08年3月に3人死亡、5人負傷、10年3月にも1人死亡、数名負傷ということがあったようです。いずれも、治安当局が、テロ犯罪を攻撃するということで発生した死傷事件であるということです。もしも、真に極悪非道国家だったのであれば、死傷事件のニュースなどは情報秘匿となって、海外に知られることはないでしょう。それに、反政府主義者たちを根絶やしにする為に、大規模な掃討作戦で殺しまくることがあっても不思議ではないでしょう(因みに、米国ははるかに大勢の民間人を世界中で殺害しまくっており、数千〜数万人規模で殺害したテロ国家である)。

けれども、そうはなっていないわけです。
テログループは、主にクルド系の反政府活動を行う自爆攻撃をも厭わない連中です。シリアの治安維持の為に、自爆テロを行う犯罪者たちを射殺することがあっても、やむを得ない場合もあるのではないか、アサド政権が対峙していたのは、そうしたテロリストたちだったとしか言いようがないのです。


イスラエルとの関係で見れば、レバノン問題というのが最大の焦点だったろうと思いますが、どちらかと言えば、シリア側から攻撃的になるということはなく、むしろ退いていったものと思えます。シリア軍のレバノンからの撤退によって、イスラエルの増長は激しくなり、イスラエルはシリアへの空爆ガザ地区攻撃などの軍事行動が非情に目立つようになったのです。まさしく後顧の憂いが退縮したことで、思う存分に攻撃できるようになったかのようです。

振り返ってみれば、2000年代において、イラク、アフガン、イエメン、ソマリアなどが問題視されていたわけですが、これにイランや北朝鮮が加わっているとして、シリアが極悪非道の軍事独裁国家で、残虐暴君のアサド大統領が人道上の大問題である、ということなっていなかったのではないかということです。


3)シリア陸軍はなぜ弱体化したのか?

騒乱の当初であると、反政府テロ集団が対抗できる戦力というのは、たかが知れていたでしょう。あるのは、カラシニコフくらいだったはずです。
さて、叛徒が2〜3万人で政府軍を攻撃できたとして、手持ちの武器が自動小銃のみであると、シリア正規軍の陸軍戦力に対抗できたでしょうか?
その可能性は、極めて乏しいというのが、拙ブログでの見解です。たとえ叛徒の勢力が5倍とかになって、10〜15万人が各地で蜂起してシリア政府の正規陸軍と戦って勝利できるかというと、甚だ疑問です。

2011年の主な騒乱は、民衆の暴動であり、放火や爆弾テロといったものが主流でした。治安部隊への発砲や攻撃というのもあったわけですが、それでも銃撃戦程度であって、市民への被害レベルは限定的であり、街中が瓦礫の山と化すような戦闘にはならないでしょう。たとえ国際社会から批判を浴びたとしても軍隊を出動させるだろうし、戒厳令を敷いて軍隊が完全に制圧してしまえば、暴徒程度は雲散霧消できるし、自動小銃程度の攻撃能力しかない反政府テロ集団が陸軍部隊を壊滅できるはずもないでしょう。
アサド政権は無差別に住民を虐殺していたのではなく、むしろ軍隊による徹底した制圧戦を実行しなかったので、デモや暴徒が長期化したものと思われるのです。


また、シリア陸軍には、ある特徴があります。それは、戦車の保有台数が非常に多い、ということです。世界中のベスト5に入るほどに、戦車を有しているのです。その全部がフル稼働できなくても、主砲が使えずとも弾避けにはなりますし、機銃掃射レベルなら反政府テロよりも圧倒的に強いでしょう。4千両のうち、1500両しか使い物にならずとも、相当な戦力であることは間違いありません。

旧式のT-72T-64であろうと、反政府テロが有する自動小銃に比べ、圧倒的に有利なはずです。ところが、空軍基地を反政府テロに占拠されてしまったりしているのですね。遮蔽物の少ない空港で、歩兵戦力だけで、政府軍を完全排除できるものなのだろうか?装甲車両は、政府軍がたくさん持っているのに、です。


本当に戦車千両を相手に、歩兵が自動小銃でもって、戦って勝てるものなのでしょうか?そんなことは、到底考え難いでしょうね。

特別の支援がなければ、戦車部隊を相手に勝てるはずがない。特別の支援とは、第一に安価な対戦車兵器を十分に行き渡らせること、第二に対戦車ミサイルで攻撃できる無人機なんかが支援すること、第三にもっと規模の大きい航空支援攻撃ができること、でしょう。

当初の市街地戦で安価な兵器による攻撃が継続されたが、効果を挙げるには時間がかかったはずです。シリア陸軍だってバカではありませんから。
そこで、無人機攻撃が豊富にできるであろう米国やイスラエルが大活躍で、膠着状態の戦闘箇所で、政府軍の戦車を攻撃し破壊していったのではないかなと。これにもそれなりの時間を要した、ということになりますか(恐らく、本格投入となったのは、2012年末頃か13年に入って以降ではないでしょうか)。
大規模航空支援をするようになったのは、「イスラム国」喧伝でうまくいくようになってから、で、14年の夏以降、そして有志国連合でアラブ諸国空爆参加するようになったというわけです。この頃になると、シリア軍の持つ対空ミサイル兵器はほぼ完全に沈黙状態にできるようになったから、でしょうね。破壊し終えたか、制圧(捕獲)したか、です。例えば戦争慣れしてないUAE空軍が空爆に参加して、これが楽々実行できるというのは、対空兵器の心配は極めて少ない(反撃はほぼゼロ)ということを意味するんですよ。


多分、シリア陸軍の戦車の数が多かったので、そこを潰すまでに時間がかなりかかった、ということではないかと思います。長期化の最大の理由は、これではないかな、と。シリア正規軍がテロ集団と同等レベルにまで弱体化したことによって、イスラム国のような軽装武力でも対抗できるようになってしまった、ということではないかな。



4)「たる爆弾」による攻撃は、本当に政府軍によるものか?

樽状の容器にガスボンベや可燃物などを大量に詰めて、金属片なども多数入れておき、殺傷力を高めてある急造の爆弾、ということらしい。
これがシリア政府軍によって大量投下されており、そのせいで民間人の死傷者が大量に出たという説明が付けられているようなのです。

この説について、本当にそうなのか疑問に思うので、書いておきたい。

いつ頃から、たる爆弾が投下されるようになったか、知らない。
ただ、初期の頃の反政府テロ集団の戦力と言えば、小銃しか持ってないのであれば、爆弾で攻撃する機会は、殆ど皆無に等しいでしょう。つまり、シリア空軍が航空戦力でミサイルや爆弾などの兵器類を消耗することは、殆どなかっただろう、ということです。市街地にバラバラに分散する歩兵に対し、一人や二人の攻撃の為に爆弾を投下してビルを吹っ飛ばす理由がない。

そんな無駄なことをするくらいなら、地上部隊が戦車隊と共に展開して掃討する方が確実だし手っ取り早い。シリア空軍が保有する攻撃機で地上攻撃をするのには、相手の戦力が相当数集結している拠点とか、比較的大きい戦線になっていて突破がどうしてもできないような場所になっていないと、空軍による攻撃という意味がない。

正規軍の進軍突破を阻止できるほどに強力な機銃陣地とか、相当数の歩兵の展開とか、そういう地点じゃないと攻撃目標が定まらない。


例えば民間人100人いるビルに、テロ2〜3人がいて、治安当局と銃撃戦になっている時、そのビルを空爆して完全破壊するということは、想定しづらいということ。テロ部隊100人くらい、政府軍も数百人が撃ち合いになっている場所って、民間人がそのまま残っているような場所なのか?
しかもそこが、たる爆弾で空爆される、というのは、政府軍さえもが一緒に吹き飛べってことだよね?


たる爆弾は、あまりに疑問点が多い。
・そんなに爆発力があるのか?:
写真などで見ると、ビルがかなり吹き飛んでいたり、街角全体にブロック(コンクリート?)の破片が相当広い範囲に飛び散っている。ガソリン満タンで落としたって、ここまでの爆発力があるとも思えないわけだが。建物半分を吹き飛ばすには、かなりのガス爆発みたいなことにならないと無理。隣の建物とか、壁ごと吹き飛ばせないし。そういうのは、超巨大な樽じゃないと無理だ。

・どうやって点火できるのか?:
樽状の物体を落下させた時、着地した衝撃で毎回爆発させることってできるのかな?通常の爆弾だと信管みたいなのがあってきちんと爆発するが、たる爆弾は空中姿勢を制御できないから、落下面を一定にできないので、点火方法がない。直接点火してから落とすのか?火炎瓶みたいに?

攻撃機にどうやって搭載でき投下できる?:
シリア空軍にはスホーイ24か何かの攻撃機がある、ということらしいのだが、たる爆弾を投下するとして、どうやって吊り下げる?あんまり太っちょでズングリな形だと、地面に着いちゃうんだよ?
お手製の爆弾だとして、パイロンに付かないと運べない。しかも、それがスイッチ一つの操作で投下できなければならないんだよ?よほど精巧な作りをしないと、無理では。


実際のシリア国内の写真
参考>http://www.afpbb.com/articles/-/3062281?page=3


運搬、投下、点火、爆発という一連の方法を考えてみても、たる爆弾がそんなにうまく爆発させられるというのが、不思議。ジェット攻撃機で投下攻撃なんかできるかな?
本当に政府軍攻撃機による投下だと誰が分かるのか?
ヘリか、投下口のある低速プロペラ機(輸送機?古い爆撃機とか?)とかなら、点火して落とすとか何らかの方法で爆発させられるかもしれないが、普通のジェット攻撃機では恐らく困難だろう。
これを、目視攻撃で、政府軍と対峙している敵勢力が展開しているであろう「辺り」に、どういう風に落下するか分からないけど、適当に落としてみるってことだよ?

どんだけ一か八かの作戦なんだ。
味方損害が出たらどうするか、って考えるでしょう?ならば政府軍が遠く離れている場合に使われると?
それは政府軍と戦闘していない場所なのに、反政府テロ部隊がそこら辺に集結している、とかが何故かシリア空軍にはまる分かりで(米軍みたいに無人機や衛星があるわけじゃない)、そこの辺りに適当に攻撃してみろ、と命令が来て、たる爆弾で空爆
命中させる方が極めて困難で、まぐれ当たりを期待するしかないのに?


前述したように、当初空軍による攻撃は必要性が乏しかったはずであり、空軍のミサイルや爆弾類はほぼまるまる使われずに残されていても不思議ではない。そうであるなら、空軍力を活かすのならば、ミサイルや対地ロケットや機銃掃射などが選択されるはずだろう。それとも、戦車が何両か奪われて、それを爆撃とかならまだ分かる。けれど、たる爆弾で空爆という意味は、軍事的にはほぼ皆無だろう。住民への嫌がらせか、政府軍に罪をなすりつける為か、というものでは。

反政府テロ集団に、空軍基地を奪われたという報道があったやに記憶しているが、正規軍人でなくヘリのパイロット程度の能力しかないなら、そういう素人集団がやった可能性があるのでは。素人ゆえに、お手製爆弾を積んで、投下してみるということはあり得るのではないだろうかと。ジェット攻撃機は専門的訓練を受けた人間じゃないと無理なので。

それと、参考に挙げたAFPの記事に、毎日朝夕のだいたい決まった時間に軍用機が飛んでくる音がする、というのは、もしもそれがシリア政府空軍なら十分な運用能力がまだ残されている、ということではないかと。偵察飛行を毎日決まって行える、というだけで、空軍部門の余力がないと無理な話だろうと思うので。
そうであるなら、有志国連合が易々と空爆しに行ってるのは、ちょっとおかしいな。対空戦闘をケアしなくていい、なんてことはないわけで、対地攻撃任務に専念できるというのは、かなり疑問だな。

(もし米軍の無人機なんかが毎日飛んでいる、ということなら、話の筋が通るねってとは思う)


(つづく)