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日本国憲法と第9条に関する論点整理〜7

1の定義に従って、拙ブログの解釈を書いてゆくこととする。


2 憲法9条の解釈

 1)1項について

国際紛争(非軍事的・軍事的紛争)を解決する手段」としては、

a)国権の発動たる戦争
b)武力による威嚇
c)武力の行使

を放棄する、というのが条項の規定するところである。


a)は前記ア)の「戦争」の定義が順当に当てはまり、所謂「古典的な戦争」像というものであって、これは違法であるし国際平和への犯罪だから放棄すべきものとなる。b)も文言に示された通りで論争余地はほぼないだろう。
残りのc)であるが、帝国議会の議事録から分かる通り、制定趣旨は自衛権は放棄していないけれども、国際紛争の解決手段としての「武力の行使」(武力攻撃+その他)は放棄することになる。
従って、日本が許容される「武力の行使」とは、自衛力の行使の場合のみ、である。

日本の領域以外での、「イ)武力衝突」や「ウ)破壊活動を伴う敵対状態」では、武力の行使は原則として認められない。


 2)2項について

日本は戦力の保持が許されない。ただし、自衛力だけは保有できる。

平たく言えば”戦争の道具”となるものは、持つことが許されないのだから、専ら防御に徹するというものだけが許容されるのである。自衛隊は、専守防衛である限りにおいては、戦力と見做されない。


戦力は定義②から、どのような任務なり機能が意図され目的とされているのか、が問題となる。軍事的紛争に対して、これに介入することを目的としている組織なら、それは戦力と解釈するべき、ということである。

武力衝突を解決しようとか介入しようというのは、例えばシリアやイラク領内で活動するイスラム国勢力を武力攻撃によって排除する、といった事態である。現実に米軍はその任務を遂行している。これに対して、兵站、基地業務、航空機及び兵器整備その他支援をするということになると、「武力の行使」の定義の範疇に含まれる行為となるので、憲法違反となる。


つまり、自衛力以外の「武力の行使」を実行することを意図した組織は、そもそも「戦力」に該当してしまい保持が許されないし、実行しようとする行為が自衛力の行使以外の「武力の行使」に該当するものはやはり憲法違反として許されない。


自衛隊が交戦しても違法性が阻却されるのは、5)の定義③の自衛力行使に伴うものであって、国連憲章(例えば2条4項)にも反しない場合であり、あくまで暫定的に防御するような状況である。いわゆる自衛権の行使、である。

その際、侵害者(国)に対して、自衛隊ばかりではなく、米軍やその他外国軍隊が共同して対処するのは、日本の領域内では許される(日本が援助を要請している場合)。日本の領域内にいる侵害者を攻撃する為に、地方空港を外国軍の戦闘部隊に使用を許可することは自衛権行使に他ならないので許容される。


しかし、ベトナム戦争のような場合、米軍がベトナム空爆しに行く為に日本の区域(米軍基地含む)を使用するような場合においては、日本への武力攻撃がない状況下では、違法であり、憲法違反かつ国連憲章自衛権発動要件にも反している。当時の沖縄が日本施政下になかったから可能だったものであり、現在同じことを行えば違憲である。また、米軍への各種支援(例えば航空部品提供や整備)を行うのも、「武力の行使」に該当する可能性があるので、違法となる。


例)「空戦ニ関スル規則」案 44条
Art. 44. It is forbidden to a neutral government to supply a belligerent Power, whether directly or indirectly, with aircraft, component parts thereof or material or ammunition for aircraft.

これから分かることは、直接間接を問わず、航空機とその部品や軍需材料を提供することは許容されない、というのが戦時法規的な考え方である、ということである。



因みに、インド洋での給油活動はどうだったのか、というのを考えてみようとしたが、不明点が多くてできなかった。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-S38-P2-759_2.pdf

p782〜783がないので、ここの部分だけ条文が不明である。何故?
何かを隠す必要があったのでしょうか?
インド洋上の給油活動が、国際法上でどういう評価をされるか、というのが問題になるからなのでしょうか?
19条の

『交戦国軍艦は平時に於ける軍需品の通常の搭載量を補充する場合に限り中立の港又は泊地に於いて其の積入を為すことを得
右軍艦は又最近本国港に達する為に必要なる量に限燃料を積入るることを得中立国か供給すへき燃料額を定むるに付軍艦の燃料艙の全容量を補充するを許すの制
(以下不明)』

あたりが関連しているようなのですが、条文が読めないので分かりません。


もし、洋上給油が中立国義務に反しない行為であれば、「武力の行使」の定義からは外れるので、不可能ではないのかもしれない。
紛争当事国(米国とアフガニスタン及びイラク)への関与が、国際法上で中立義務に反しないことや被害国(米国)の協力・援助要請があるなら(武力の行使の定義②、③の適用が外れる)、行為自体が違憲ではないという評価は可能という意味である。


結局、自衛隊が日本の領域外に行き、国際紛争に際して、「武力の行使」に該当する行為を行うことは許されない、ということである。

本来、自衛隊は「自衛力の行使」の場合にのみ、武力攻撃その他の「武力の行使」ができる存在だから、である。自衛力の範囲とは、行使の地理的な限度と害敵効果の甚大性が問題となろう。


前記定義からすると、「戦力」を否定しつつ「自衛力」保有は現行憲法上可能である。平和条約や日米安保条約での記述に矛盾せず、自衛権の否定にもならない。国連加盟と憲章にも反しない。交戦権は例外的に存在できる。
自衛力の行使については制限が課せられており、「武力の行使」該当性からの制限と、「国の交戦権」からの制限が及ぶ。


いずれにせよ、自衛力の保有が肯定できるのは、「通常の軍隊」とは違うものだから、であり、普通の軍隊と同じ権能を有することになってしまえば、それはすなわち「戦力」としかならないので違憲である。
通常の軍隊と同じものにする方法は、やはり憲法改正しかないということになる。