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日本国憲法と第9条に関する論点整理〜10

集団的自衛権について書いてみる。

前回の記事では、刑法上の正当防衛や緊急避難では、自己の防衛のみならず、他人の権利を防衛しても、処罰対象とはならない(ある限度内において)ということを述べた。


これは、自衛権にいう「自国防衛」=個別的自衛権、「他国防衛」=集団的自衛権、という考え方に近いのではないか、ということである。確かに、集団的自衛権の行使を言う側にとっては、他人の権利防衛も合法である場合が認められるべきだということになろう。


日本以外の国では、集団防衛条約に基づく行動とか、国連憲章42条に基づく行動などの場合には、これを違法とはしないことはあり得る。他国の防衛する権利は、法秩序や平和の維持という面において、必要とされる場合は考えられないわけではないということである。ここに反対する意見というのは、かなりの少数派ではないか。


では、日本がこれを実行することはできないのだろうか?


再度、憲法9条の考え方に立ち返ってみよう。
日本のとりうる態度なり行動というのは、どうなるのか。


・原則1:(第1項から)

軍事的紛争(戦争、武力衝突など)に際して(解決手段として)
武力の行使(武力攻撃、その他)はできない

・原則2:(第2項から)

国の交戦権(戦時法規適用の諸権利)がないので、武力の行使はできない、が、
例外的に不正な侵害に対して保有する自衛力により防衛する、すなわち自己保存としての自衛権の発動は可能(この場合のみ武力の行使が許容される)



以上から、原則2に述べた、但書的な例外によって武力攻撃が可能、これが一般的にいう自衛権の行使であって、違法とはならないとされる状況である(従来の政府見解)。


「武力の行使」の条件面から見ると、実際に行使できるのは、自国へ攻撃を受けた時だけ、ということになる。


では、自国が攻撃を受けてない場面というのは、何なのか?
日本以外の何処かで軍事的紛争がある時、他国を防衛に行く、ということになるのであり、原則1で言う「武力の行使」ができない状態に当てはまってしまう。


軍事的紛争ではないのだ、その場合にのみ他国を防衛するんだ、ということはあり得るが、軍事的紛争でないなら、何から防衛するのかということになる。

これまでPKOイラク派遣では、「軍事的紛争ではないこと」を立論することによって、海外派遣と活動を正当化してきたわけである。過去における海外活動は、

 ①軍事的紛争ではないこと(停戦合意、非戦闘地域、云々)
 ②「武力の行使」に該当しないこと(一体的運用、云々)

ということを毎回政府側が立論を繰り返してきたことにより、可能としてきたということである。


政府見解の集団的自衛権とは、
『自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利』
とされている。


「日本国は、集団的自衛権を有するか」と問われれば、国際法上の権利を有する立場にある、となろう。
では、「現実に行使可能か」と問われたら、集団的自衛権は行使できない、となろう。理由は、「武力の行使」は憲法により原則禁止されており、唯一例外となる(武力攻撃可能)のが自己防衛行動のみだから、である。


自衛隊の行動が憲法上許されるかどうか、という点は、大きく分けて2つの要件で考えられていたのである。
第一が、参入する対象(種類と場所)、第二が行為の内容、である。
行為の内容が「武力の行使」に該当するものについては、参入対象が軍事的紛争となり(他国より武力攻撃が発生しているから)、当然我が国への武力攻撃が発生する場所というのは自ずと限定的と考えられる。