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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

世界の外貨準備高膨張は何故生じたか?

国際収支の基本式が変更になってまだ日が浅いので、旧式の考え方で説明しますが、悪しからず。
お馴染みの式は、次のようになっています。

 経常収支+資本等移転収支−金融収支+誤差脱漏=0

かつては、

 経常収支+資本収支+外貨準備高増減+誤差脱漏=0

でした。


ここからは、例によって例の如くに架空の喩え話で考えてみたいと思います。
さて、全世界に2つの国だけがあるとします。甲国と乙国です。誤差脱漏は考えないものとしましょう。国際収支が次のようになっていたとします。簡単にする為に、貿易と直接投資のみがあるものとしましょう。

【第1期】

甲: 貿易収支100+(乙への直接対外投資−50)=外貨準備高 50(増加)

乙: 貿易収支−100+(乙への直接対内投資50)=外貨準備高 −50(減少)


この状態を10期継続したら、全世界の外貨準備高の残高はどれほどになっているでしょうか?
全世界の連結決算では、単年で見るとゼロにしかならないので、何期経ってもゼロのはずでは。


なので、恐らくはゼロでしょう。甲は残高が増加して500まで残高が増えますが、乙はマイナスが継続するので、−500となりますよね。外貨準備が大きなマイナスとなる場合、それは何を意味するのでしょうか?

甲は、乙に対し「債権500」分を有し、対外債権国となっているということでしょう。一方、乙は甲に対し対外「債務500」を抱える対外債務国となっているということではないでしょうか。
ただ、国際収支統計の性質からすると、合計はゼロになってしまうのではないでしょうか?

貿易収支は、黒字国から相手を見れば赤字国であり、合計はゼロです。経常収支でも同じでしょう。また、対外投資も受け入れ側から見れば対内投資ということで、やはり全世界で見ればゼロにしかなりません。


では、外貨準備高の合計額が全世界の総量で増加してゆく場合には、どういうことなのでしょうか?
誤差脱漏の間違ってた部分が積み上がってしまった?
他には、何があるでしょう?


貿易や対外投資以外ですと、所得収支部分があるはずですね。
所得収支は、受取利息などの部分です。

となると、全世界の合計額を見た場合、外貨準備高が5兆ドル相当積み上がっている、という場合には、単年の経常収支や対内・対外直接投資部分は常にゼロになってしまうはずなので、フローで溜まることは考えられず、残されるのは所得収支の大幅なマイナスがどこかに積み重なってきてるはず、ということでは?

つまり、外貨準備高が増加した国は、どこかの国から受取利息などでプラスになってきた、ということであり、その増加期間中には、必ず5兆ドル分の支払超過になっていた国が存在しなければ、話が合わないのでは?

それは、誰か?ということなのですよ。
途上国はそんなお金を払えるはずがないでしょう?いくら何十国も束ねてみたって、中国その他に外貨準備高をそこまで増やせる支払能力がある国はないはずです。


要するに、アメリカなんじゃないですか?という話ですね。

1995年の外貨準備高は、日本は1724億ドルでしたが、05年には8231億ドルになりました。中国は、736億ドルから7690億ドルとなったわけです。米国は同期間では微減でした。大きな変化はなきに等しかったわけです。

では、中国以外にも香港、台湾、韓国、ロシアなどが揃って外貨準備を増加させることができた理由とは何でしょうか?


そんなことが可能なのは、米国しかないのではありませんか、ということです。
ユーロ圏では通貨統合に伴って、外貨準備をそれほど必要としなくなった背景がある為か、同時期には1千億ドルくらいは減少していましたが、ここ数年では違った傾向かもしれません。


世界中の全員が、外貨準備高を増加させるということはできません。
借金をする人がゼロの世界では、全員が貯金しても、利息を受け取ることができず、貯金が増えるということはないはずです。なのに、全員の貯金額が自然と増えているとすれば、それはどこかに異常なりインチキがあるのではありませんか、という話なのです。


95年1月時点で、全世界の外貨準備高は1.2兆ドルしかありませんでした。けれど、05年9月には4兆ドルにまで増加したわけです。しかも、2002年までの増加ペースは遅かったのに、2001年の9・11以降だと顕著に増加し、2002年1月からの約2年半で1.85兆ドルも増加しました。

まさしく、アメリカの戦争の時期ということです。イラク戦争は、このような経済上のインチキを覆い隠す為に実行されたに等しいわけです。FRBの徹底した緩和政策期間とも合致しており、日本にとっては悪夢の氷河期だったわけです。


では、その後、外貨準備高はどうなったでしょう?
リーマンショック後でも、膨張を続けたわけです。世界中で。
ならば、代わりに大幅に減った国はあったのでしょうか?
貿易も直接投資も各年毎の全世界連結決算なら、常に一定でゼロにしかなり得ませんからね。


結局は、米国が対外債権を握るべく、投資資金を国内で「貨幣創造」によって生み出し、これを海外市場の株や債券に多額に投資して利益を奪うと共に、経常収支赤字を穴埋めするべく外国からのファイナンスをやってきたわけだ。その債務の積み上がったのが、全世界中の外貨準備高のドル建部分になっている、ということでしょうね。
しかも海外からの借金の利払いをなるべく軽減しようと、低金利調達を心がけており、それが為替レートの支配で米国だけに有利な資金調達となっている、ということである。


今世紀に入って以降の、米国の異常な緩和策の連発により、全世界の経済上の歪みが度々顕在化しているものとしか見えない。
それは、必ず「イカサマ」的要素がどこかに存在している、ということだ。


参考:

2013年10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/0bf8e08970c02a347fdd35eab731f22f