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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

世界を驚かせた「UKショック」

人は、思ってもみなかったことが起こると、とても不安になる。その不安は、瞬く間に世界の市場に波及した。
東京、ロンドン、ニューヨーク、どの株式市場も狼狽売りが殺到したようだった。私のささやかな年金資産も、少なからぬ打撃を受けたのだった。


英国がEUを離脱する―Brexit―という予想外の決断を、国民投票で選んだ。当初から、現状維持の残留派が優勢と見られていたが、結果は意外なものだった。英国のブックメイカーは、予想にかけては自信が大アリのはずだったが、今度ばかりは大きく外したのだった。


事前のシナリオでは、波乱の様相を見せながらも、スコットランド独立運動の時と同じように、現状維持派が勝利するというものだったろう。少々の混乱の要素さえあれば、それで良かったはずだった。

しかし、G7サミット以降の終盤になって、状況は俄かに曇ってきた。どうも離脱派が勢いを増しているようだ―、そうした危機感が高まっていった。残留支持だった女性下院議員の殺害は、残留派に同情票を集め、また弔い合戦の意味を込めたものだったが、離脱派の勢いを止めるには及ばなかった。


そうして、今回の想定外の結果が生じてしまったものであろう。


イングランド人は、世界を驚かせることにかけては、才能がある。レスター優勝のことではない。


イングランド人は、ずっと以前から、欧州と袂を分かつ経験を有していた。ヘンリー8世英国国教会ローマ教皇の下から独立させたのが、その好例だ。イングランド人は、欧州列強国の「官僚主義的で、口うるさく、形式ばった」システムや態度が、昔から気に入らなかったのだ。


当時のイングランドは、スペインやフランスの干渉に苛立ち、ローマカソリックのしきたりや縛りに辟易していた。
フェリペ2世がメアリ1世と結婚して、「ブラッディメアリー」の名の如くカソリックへの揺り戻しが大きかったこともあり、イングランド人は、かえってローマからの離脱を強く望むこととなった。

勿論当時のスコットランドは、イングランド人の治世下よりも、大陸(フランス)との関係継続を望んだのも、今回と同じなのである。ヘンリー8世が強いインフレ(改鋳=造貨)政策を採用したのも、現代の金融(緩和)環境と似ているのかもしれない。


イングランド人は、大陸を覆っていたローマ教会から分離独立を果たし、英国国教会を成立させた。

今回のEUからの離脱は、そうしたイングランド人気質が反映されたかどうかは分からないが、自由を好む気持ちは分からないではない。

今回、失脚することになったキャメロン英首相は、さしずめヘンリー8世時代に大陸やローマ教会との強いパイプ役で権勢をふるったトマス・ウルジーといったところか。


多数の映画が作られてきたが、輝かしき大英帝国の礎を築いたエリザベス1世の時代は、そのすぐ後にやってきたのであり、今年90歳を迎えられたエリザベス2世の現代に今回の離脱劇が起こったというのも、何かの縁なのかもしれない。