怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消処分を巡る国の訴訟について(追記あり)

和解以降の計画通り、国が沖縄県を提訴することになった。

http://ryukyushimpo.jp/news/entry-321027.html


裁判での論点について述べる前に、まず、個人的感想を書いておきたい。

安倍政権は、平成27年11月に代執行訴訟を提起したが、裁判での敗北が確定的となったことを受けて、和解へと逃げ込むことにしたのである。当初より、代執行訴訟では「100%勝てる」と豪語していたにも関わらず、出鱈目な法の運用を行ったことにより、国自身が出していた、行政不服審査法に基づく審査請求及び執行停止申立てを「国自身の手により取り下げる」結果をもたらし、更に勝訴間違いなしと確信していた代執行訴訟の両方を同時に失ったのである。

本件経緯から明らかに分かることは、国が、自分勝手に一人相撲を取り続けていたというものである。
国が、審査請求と執行停止を行い、代執行訴訟を仕掛け、いずれも「なかったことにしたい」ということで、全部取りやめになってしまったということである。

こうした国の姿勢が示すものは、根本的な法の無知である。法制度を正しく理解し運用する、という基本原則から大きく外れているということである。それが、国の制度濫用や濫訴を生じたものであると言えよう。

国は、行政不服審査法地方自治法の趣旨、制度の意義などを理解できていないばかりか、本来国自身が正確に運用するべき義務を負っているのに、代執行の手続を正しく行うことすらできなかったということである。

そのような国が、「国の主張は正しい、国の手続きは合法的だ」と言うわけであるが、どこまで信用できるのだろうか?これまで、散々間違いを犯し続けてきた国が、「最初からずっと国の方が正しいのだ」と主張すること自体、信ずるに値しないものとしか思われない。
専門外の素人以下の程度でしか、手続を理解できていなかった国が、今回の訴訟に限っては正確に合法性が理解できるということも解せないわけである。なら、最初から正しく理解できていたであろうはずだから、だ。


国は、恥も外聞もなく、代執行訴訟での失当を判決で指摘されることを回避するべく、和解へと逃げ込んだだけである。しかも、その和解の道筋というのは、本件訴訟で見られる通りに、最終的には「砂川判決や過去の代執行訴訟での判決の場合と同様に、最高裁が国側勝訴に味方してくれる」ということを、期待してのものである。まさしく、法も裁判所も、政治で動かせる、と軽視していることの表れであり、真意は「代執行訴訟での失敗を隠して、別の訴訟の枠組みへと誘導したい」ということでしかない。


国にとって、訴訟そのものは、単に形式的に体裁を整えておけばよいと考えており、それ故、国が「是正指示をする」という意味のない手続を踏んだものである。「代執行訴訟のルート」を国自身の手で潰してしまったので、今度は「別ルート」を開拓すべく、少し後戻り(国交大臣の是正指示→国地方係争処理委の審査)して「形式を満たせば」新たな訴訟を開始でき、最高裁へ持ち込むことさえできれば「今度こそ、最高裁が味方してくれるので必ず勝てる」と胸算用している、ということである。


こうした発想は、法秩序への挑戦であり、国の裁判制度を根底から覆すに等しいものだ。安倍政権の本件争訴の道のりは、将に「法」を踏みにじり、裁判所を蔑ろにするという、言うなれば「法への叛逆」行為である。

それが証拠に、代執行訴訟は「閣議了承」の下、実施されたものであり、行政の日本最高レベルでの意思決定をしたにも関わらず、「誰一人」それが不当ないし失当であることを気付くことができない程度であることを実証したのである。


15年11月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/7b0feab3b9353f848a4a03473e5eff49

閉会中審査の安倍総理の弁を再掲しておこう。

普天間の返還は一日も早く実現しなければならない。この基本的な考え方の上に立って、移設作業の事業者である沖縄防衛局長は、一刻も早く移設作業を再開するため、迅速な手続きである審査請求を行うとともに、執行停止の申立を行なった。これを受けて国土交通大臣沖縄県の意見を聴取した上で重大な損害を避けるために、緊急の必要性がある等の判断のもとに行政不服審査法に則り、執行停止の決定を行なったものであります。一方、このようなプロセスの中で政府として改めて検討した結果、翁長知事による埋め立て承認の取り消しは違法であり、著しく法益を害するものであることから、この問題の解決を図るためには、最終的に司法の判断を得ることができる代執行等の手続きに着手することがより適切な手段であると判断され閣議において政府の一致した方針として了解されたものであります。』


閣議了承で政府の一致した方針だったはずの、代執行訴訟が崩壊したということですね(笑)。
どうしても、別の手続きに乗せるよりなかった、と。

挙句の果てには、騙し半分の和解文書を根拠に、ロクに仕事もできない訟務局に再び提訴をお任せした、と。愚か者が集団になると、愚かな決断を繰り返すということの典型例でしょうか。



(時間がないので、とりあえず。後で追加します。)

追記は以下です。


国の訴状を見ることができないので、とりあえず、国の主張と本件訴訟提起について、反論の一例を示しておきたい。


1)国の主張の根本は、「取消処分は違法」という言い切りのみ

ブレずに変わっていないのが、これである。県知事の取消処分以後、そのことだけを主張していた。沖縄防衛局の審査請求でも、代執行訴訟でも、和解後でも、国地方係争処理委員会の審査でも、そして、現在でも、ずうーっと同じである。
そして、審査請求後でも執行停止決定でも、代執行訴訟や係争委審査でも、大臣の是正指示でも、どの時点においても、「違法である」ことの論証が皆無である。

つまり、国の主張点は、中身がない。あるのは、反論することだけ。しかも、無駄に長文を連ねているだけ(無用な官僚の頭数だけは大勢おり、意味も中身もない作文だけは得意)で、国の主張は簡潔にして明瞭ということが一切ないのである。


普通、「知事の処分は違法である。何故なら〜これこれこういう理由だから」と簡潔に示すことができるだろう。拙ブログですら、国の代執行訴訟は要件を満たしてないことの理由を、挙げて説明しているのに、だ(笑)。
唯一出された論点は、昭和43年最高裁判例のみ、である。

参考:
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/6285ad6c968ae5b68fe319db1ccd4eeb
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/f47d48e0f48a0e42a0d3a549597c70f3


この論点でさえ、判例の理解不足と適用不備があり、仮に判例に基づき不利益の比較衡量を行った場合でも「取消処分が違法」であることの立論は不可能である。定塚誠訟務局長(以下その他官僚諸君)は、利益不利益の重大性・程度等の比較さえ満足にできていない。
口で断言するだけなら、どんなことだって言い切れる。「代執行訴訟は100%勝てる」と全く同じである。これに続くのは、「何故なら取消処分は違法だから」ですかね(笑)。それは、訟務局の俺ら基準ではそうだからだ、ということだけですね。恐らく、今回の裁判においても、次の主張は同じであろう。

翁長沖縄県知事のした、埋立承認取消処分は違法だ
→違法だから、大臣が「是正の指示」
→よって「是正の指示」は適法だ=国が正しい(今ココ)


形式的には、是正の指示が適法なもので、何らの理由もなく県知事がその大臣指示に従わないのであれば、国が正しいかのように言うことができるわけだが、実際には「国が正しい(適法である)」ことの証明は、どこにも存在していない。国が、自分自身でそう言っているだけ、である。


和解後に出した、国の是正指示には、違法と国が判断した根拠及び理由が記載されていなかった。単なる、言い切りのみ。通常、理由を附して是正の指示をするべきところ、その論証を国土交通大臣は一度も行っていない。違法と認定するなら、それが説明できないわけがない。何故、違法であることの論証を国自身が実施しないのか?

理由がないから、であろう。説明の根拠を有していないから、ということだ。だって、あるなら、最初から、その旨指摘できるからである。つまり、是正指示の前提となるべき「埋立承認取消処分は違法」の論証を、国は一度もできていないということである。

参考までに、拙ブログにおいて、大臣が是正指示を行った場合には、大臣のした処分違反を違法性の理由として挙げることが可能な場合がある、ということを例示した。

15年11月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/bf7e5efbaafe1bec40232961a216b126

「論点12」である。あくまで素人考えで書いた是正指示の文書の雛型を書いてみたのであるが、本件の国交大臣指示文書「国水政第98号」は、大差ない出来栄えだったようで、しかも説示すべき理由が記載されていないものだった(笑)。調べていくうちに知ったのであるが、これもあまりに不備だったもんで、撤回文書が出され(国水政第101号)、別に文書が出された(国水政第102号)らしい。ここでも、法に基づく適正な手続や運用が全くなっていない、ということだろう。いわゆる「入口論」で何度も失敗しているのは、霞が関官僚自身であるということだ。お粗末極まりない。

剽窃以下のレベルでは、官僚のお仕事の意味がない。


2)国は「常に正しいことしか言わない」はず

まさか、この原則さえ成り立たない、ということか?(笑)
ペテン師や詐欺師のような口先だけの組織ではないはずであろう?国の主張というのは、常に適法であり正しい、という原則が必須のはずだ。

審査請求、訴訟、係争委審査を通じて、国がどのような主張をしてきたか、それを以下に概略をまとめてみた。


◇国のこれまでの主張

ア)知事の埋立承認取消処分は違法
イ)本件埋立工事が実現できないと、
―1;回復不可能な「重大な損害」を生じる
―2;重大な損害を避けるため「緊急の必要がある」
ウ)イ)の要件を満たすので執行停止を決定(=執行停止は適法)
オ)原則として行政庁は授益的処分の取消ができず、例外的な場合のみ
カ)授益的処分の取消の際は、不利益の比較衡量が不可欠
キ)防衛局は「私人同等」である(故に審査請求ができる)



これらから、いくつかの矛盾点について、指摘しておく。

(a)
徹頭徹尾、国が現在でも主張し続けているのがア)であり、それが正しいなら和解する理由も意味もなく、国(防衛省)が審査請求を取り下げる理由がない
(=どうして和解し、また取り下げたか、その理由を言え)

(b)
イ)−1及び2が正しいなら、執行停止を取消する理由がない
(=執行停止を取消できるなら、その事実そのものが、最初からイ)の要件は成立していなかった(つまり国は嘘を言った)ことの証明となる)

(c)
執行停止期間は、消滅しない。事実、平成27年10月29日より、埋立工事を防衛省が実施していた。和解しようと、沖縄防衛局が申し出を取り下げようと、執行停止決定は効力を発揮し、執行停止決定を取り消すまでは有効だった。
行政不服審査法34条2項[処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をすることができる。]により、執行停止を職権により維持は可能だった。

ならば、執行停止を取り消す理由がない。
(=どうして、執行停止を取消たのか、理由を言え)

(d)
執行停止により工事再開ができていたことから、国交大臣の行った「執行停止」決定は防衛省にとっての授益的処分であった。すると、国はオ)と主張していたのであるから、原則として執行停止を取り消すことができない。
もし取り消すならカ)の比較衡量により、「執行停止を維持した場合の不利益」と「執行停止の取消した場合の不利益」では、執行停止を維持した場合の不利益が大であるので「取り消した」としか言うことができない。

国は、オ)やカ)を主張していたのであるから、その原則に基づいて行動するよりなく、従って、「執行停止を維持」した場合の不利益が甚大につき、執行停止を取り消すに至った、というのが必然となろう。
申立て者が取り下げたので、執行停止を維持する利益(根拠)がなくなったから、というのは、理由になっていない。
何故なら、執行停止決定事由たるイ)は「国が重大な損害を受ける」からであって、申立ての取り下げで維持する利益を喪失しているなら、国自身に執行停止の理由は元々存在しないということになるからだ。

この不整合を説明できる方法は、恐らく国側にはない。その場しのぎの、言い分を積み上げてきただけだから、である。

(e)
キ)の通りに私人同等なら、沖縄県条例や知事の指示にまずは従うべき。岩礁破砕措置の場合においても、知事の指示には従っていない。都合のよい、国と私人の使い分けに過ぎない。


3)審査庁は裁決を一度も出していない

これも代執行訴訟の時から指摘してきたことだが、審査請求の後に、裁決を出す権限は審査庁にあり、審査結果は行政庁を拘束する。
そもそも、代執行訴訟などをせずとも、審査請求に対する審査を迅速に行い、その結果を出せば済むことである。
大臣指示も見当外れであって、国が最初から主張してきた「知事の処分は違法である」ことの立証を、裁決の中で完璧に行えば、それで事足りていたことであった。

大臣が是正指示など出す必要性などなく、審査庁たる国土交通省が処分庁(沖縄県及び知事)に裁決で示せばよかっただけだ。
これを国がわざわざ回避しており、最初から裁決を出す気など毛頭なかったものと見るしかない。無知によるものか、裁決で示すべき「承認取消処分は違法」の立論が不可能だったので回避したのか、分からないが、国が自らの権限と義務を放棄したのは間違いない。


しかも、代執行訴訟と和解案に関係なく、平成27年3月30日に農林水産大臣の出した執行停止通知書も効力を有するのであり、「沖縄県指令第1381号」は知事権限が停止されたままだった。
代執行訴訟と主務官庁も異なるのに、緊急性があるとして執行停止を決定しておきながら裁決を出すことなく漫然と長期間放置し、審査庁の持つ権限を放棄したことは明らかだ。


質問主意書においても、取り上げられたものである。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b189322.htm


国の答弁は以下の通り(一部引用)。

行政不服審査法による執行停止については、本案である審査請求に係る裁決があるまでの間、審査請求人の権利保全のために行われる暫定的な措置であるため、同法第三十四条第七項において「すみやかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない」とされているところ、本件指示において「海底面の現状を変更する行為」を「停止した旨の報告を、本書受領後七日以内に行うこと」及び「この指示に従わない場合は、許可を取り消すことがある」とされていたことから、農林水産大臣は、本件指示の日から七日後の平成二十七年三月三十日に、本件決定を行ったものである。
 これに対して、同法による審査請求については、同法上、裁決までの期限は定められておらず、現在、農林水産省において、審査請求人及び処分庁の主張等の内容を精査し、本件指示の適法性も含めて審査しているところであることから、裁決の時期及び内容に関する答弁は差し控えたい。


要するに、国は、自ら審査請求できると言うだけ、口で言ってもろくに審査せず、本来なら裁決を出せる権限を有しているにも関わらず、これを漫然と放置した挙句に、代執行訴訟に打ってでるも、法制度を満足に理解しておらず、失敗に終わったということである。

失敗しただけならまだしも、次なる訴訟を求めて、本件提訴を行ったものであり、審査庁の義務(1審判決に相当する過程であろう)を果たさないばかりか、国が期待している国側勝訴判決が出るまでは濫訴も辞さずの姿勢が顕著となったものである。


4)小括

少なくとも、国地方係争処理委員会の通知が、国の主張を取り入れて「国が適法であり、沖縄県が違法である」といった結論を出しているものではないことは明らかであり、その理由について国はよく考えるべきである。

国がやっていることは、国地方係争処理委員会の審査過程を、沖縄県に提訴させる道具として利用しているに過ぎず、和解条件のいずれにも該当しないことが判明するや否や、今度は政府自らが提訴する新たな攻撃材料を探すのに利用した。

和解で示した「是正の指示」は、自らの代執行訴訟の失当をなかったことにして、次の訴訟への道を開く為の方便として用いられた形式的文書であり、このような国の行為を、裁量権の濫用と呼ぶのである。

この期に及んで、国が法を弄ぶのは言語道断である。

国が行ったことは、沖縄県知事のした「埋立承認取消処分」に係る代執行の権限を、県と和解することにより権利放棄したに等しい。
国交大臣が代執行で「埋立承認取消処分」の取消を行うのも、同じく大臣の「是正の指示」で本件処分の取消を行わせるのも、権力行使の形態が異なるだけで、実質は同じである。
代執行訴訟の失敗を糊塗すべく、和解という口車を使って、本件訴訟へと土俵を移し替えただけのものである。本当に国の言い分が正しかったのなら、代執行訴訟で判決を受ければ済んだ話である。それを和解に逃げ込んでおきながら、本件提訴に至ったことは沖縄県を騙したに等しい。
国は代執行訴訟について和解したとしても、地方自治法245条の八第1項に基づく大臣の勧告、同法245条の八第2項に基づく大臣の是正指示がなされた事実は消滅しない。
国は大臣の是正指示に従わなかった沖縄県に対し、代執行訴訟を提起し、これを放棄したものであるから、同内容の是正指示を同法245条の七第1項に基づいて発出したとしても、訴えを取り下げることを確約した同一人である国が、再び同じことを指示してこれについて訴訟提起するというのは、訴えの利益がない。
それならば、最初から和解などせずに、大臣のした是正勧告や指示の合法性について、判決を受ければよかったのだ。敗訴を回避するべく、和解したから無理な話だったわけだが。


結局のところ、国がやっていることは、法の趣旨も制度も無視し、あちこちを乱食いして、順序も手続も滅茶苦茶で、出鱈目を繰り返しているというだけである。