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辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消処分を巡る国の訴訟について〜2

学習能力が欠如している、安倍政権と訴訟戦略を支えているはずの法務省訟務局及び各省訟務担当官僚たちは、懲りずに無駄な訴訟を提起してきたようなので、反撃を試みることにする。

彼らのような、法を悪用する立場の存在に、どうしても負けるわけにはいかないのだよ。

まず、訴訟の前段階の国地方係争処理委員会の部分から見てみる。


国地方係争処理委員会の審査>http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/keisou/

審査の結果>http://www.soumu.go.jp/main_content/000425426.pdf

重要部分は、以下である。

当委員会としては、本件是正の指示にまで立ち至った一連の過程は、国と地方のあるべき関係からみて望ましくないものであり、国と沖縄県は、普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力をすることが、問題の解決に向けての最善の道であるとの見解に到達した。

国が窮地に陥ったのは、彼らが和解で「罠」を仕掛けて待っていたはずの、「沖縄県に提訴させる」という計画が狂ったことである(笑)。

国=法務省防衛省国土交通省、外務省の連合軍(笑)が勢揃いしても、沖縄県知事の埋立承認取消処分を違法であると立論できる方法が、未だ見つかっていない、というのが最大の弱点であった。代執行請求訴訟では、完敗が確定したので、裁判長に和解を勧められ、不承不承従った、というのが和解までの流れだった。

そこで、国が泣きついた先が、最高裁である。国は、最高裁なら「国が勝訴間違いなし」の判決文をきっと書いてくれるだろう、と期待しているということである。過去の代理署名に関する代執行訴訟では最高裁判決で勝利した経験があり、二匹目のどぜう(笑)を狙ったものだったろう。
とにかく、代執行訴訟では大失敗したので、別建ての訴訟ルートを利用することに方針変更したわけだ。
それが、係争委の審査結果からの、沖縄県が国を提訴する、という筋書きだった。しかし、その愚劣な思考は、再度の失敗を呼び込むことになった。


代執行訴訟での和解内容は、以下のようなもので、一部を書き出す。


◇和解の内容(別紙1,p9)

・(国交大臣の)是正の指示に不服があれば指示があった日から1週間以内に当委員会に審査の申出を行う

当委員会が是正の指示を違法でないと判断した場合に、審査申出人(沖縄県)に不服があれば、審査申出人は、審査の結果の通知があった日から1週間以内に地方自治法第251条の5第1項第1号に基づき是正の指示の取消訴訟を提起する

当委員会が是正の指示を違法であると判断した場合に、勧告に定められた期間内に相手方が勧告に応じた措置を取らないときは、審査申出人は、その期間が経過した日から1週間以内に同法第251条の5第1項第4号に基づき是正の指示の取消訴訟を提起する

・審査申出人及び沖縄防衛局長と相手方は、是正の指示の取消訴訟判決確定まで普天間飛行場の返還及び埋立事業に関する円満解決に向けた協議を行う

=======

話を見通し易くする為、県が国を訴える条件というのをまとめると、2つになる。

国(国交大臣)の是正指示が

 a)違法でない(=国が正しい)
   ⇒県は指示に従って「承認取消処分」を取り消せ

 b)違法である(=国が間違い)
   ⇒国は委員会勧告に従って措置をせよ
  (けど、国は措置する気は毛頭ないので、措置しないよ)


いずれの場合にも、沖縄県側が不服と思うはずなのだから、訴訟提起せよ、と。
a)は、国の指示に従いたくないので「是正の指示」の取消訴訟、b)は国が措置をしないという不作為を止めて措置せよ(違法確認訴訟)と。

どちらも原告が県、被告が国となる。この目論見がうまく行かなかったというのが、係争処理委員会の結果だったというわけである。


和解条件からすると、沖縄県が訴える条件には該当してないので、和解を尊重するなら、県側が訴訟提起するというのはあり得ないだろう。係争委もきちんと協議せよ、と言っているわけだし。

しかし、国としては、何が何でも早急に白黒つけたい、ということで、法務官僚諸君がまさに「汚名」挽回の機会とばかりに、国が提訴したというわけである。普通は挽回すべきは名誉らしいが、訟務局あたりになると随分と違うものらしい。次期大統領が何を言い出すか不安なので、強引に既成事実を生み出す為の工事推進を何が何でもやっておくという魂胆でもあるのか?


ここまでの流れは、国が思い描いていた、和解での「次の訴訟プラン」が崩れた、ということである。代執行訴訟での完全崩壊に続いて、又しても失敗、と。

で、和解の沖縄県側が提訴する条件には該当しなかったので、県が提訴しなかったから、仕方なく、国が違法確認訴訟(県が大臣の出した是正指示に従って処分取消を行わない(=不作為)のは違法である)を提起した、というものである。

今回も代執行訴訟で指揮したのと同じ多見谷寿郎裁判長が担当らしい。今度こそ、の目論見でもって待ち構えていたことだろう。だって、和解に至ったというのは、本来的にそういうことですので(笑)。


違法確認訴訟の国側の落ち度について、次の点を指摘しておく。

1)和解条件からの逸脱

和解の文書を読めば分かる通り、訴訟提起は沖縄県が行うものとされている。国は、その根底から誤っている。提訴可能な場合とは、

 ア)国地方係争処理委員会の審査結果が前記a)で、不服の場合
 イ)同係争委の結果がb)で、勧告の措置をとらず国の不作為の場合

である。係争委の結論は、ア)、イ)のいずれでもないので、提訴条件に該当しない。


2)国地方係争処理委員会の結論は、「勧告」ではない

細かいことを言うようだが、地方自治法に定められる「勧告」が出されてない。

地方自治法 250条の十四
2  委員会は、法定受託事務に関する国の関与について前条第一項の規定による審査の申出があつた場合においては、審査を行い、相手方である国の行政庁の行つた国の関与が違法でないと認めるときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び当該国の行政庁に通知するとともに、これを公表し、当該国の行政庁の行つた国の関与が違法であると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。


訟務局のアタマのレベルとは違う。いずれにも加担しないという注意を払って審査結果が出されたものである。これは、言わば「伝達文書」のようなものであって、法的な意味としては拘束力が乏しく、同法250条の十四 第2項にある「勧告」ではない、ということだ。恐らく、悩みに悩み抜いて出された、苦渋の結論だったろうと思う。

そして、勧告ではないから、国が措置をとらない場合という不作為にもなり得ないので、同法251条の五 1項4号の適用は不可能となる。また、1項1号の「結果の通知又は勧告に不服」条件にも該当しない(係争委は、国が正しいので沖縄県の処分を取り消せとは求めておらず、県はこれを不服とせず係争委の見解に従い協議を申し出ている)ので、適用されない。


地方自治法第251条の五  
第二百五十条の十三第一項又は第二項の規定による審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となつた国の行政庁(国の関与があつた後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を被告として、訴えをもつて当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めることができる。ただし、違法な国の関与の取消しを求める訴えを提起する場合において、被告とすべき行政庁がないときは、当該訴えは、国を被告として提起しなければならない。
一  第二百五十条の十四第一項から第三項までの規定による委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき。
二  第二百五十条の十八第一項の規定による国の行政庁の措置に不服があるとき。
三  当該審査の申出をした日から九十日を経過しても、委員会が第二百五十条の十四第一項から第三項までの規定による審査又は勧告を行わないとき。
四  国の行政庁が第二百五十条の十八第一項の規定による措置を講じないとき。



4号規定の措置とは、次の条文によるものである。

地方自治法 第250条の十八
第二百五十条の十四第一項から第三項までの規定による委員会の勧告があつたときは、当該勧告を受けた国の行政庁は、当該勧告に示された期間内に、当該勧告に即して必要な措置を講ずるとともに、その旨を委員会に通知しなければならない。この場合においては、委員会は、当該通知に係る事項を当該勧告に係る審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。


従って、同法251条の5第1項の規定は、1号も4号も本件では該当していない。


3)国が違法確認訴訟を提起できる条件とは

自治体が訴訟提起せず、指示にも従わないというような場合に、国側から提訴できる。


地方自治法 第251条の七  
第二百四十五条の五第一項若しくは第四項の規定による是正の要求又は第二百四十五条の七第一項若しくは第四項の規定による指示を行つた各大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該是正の要求又は指示を受けた普通地方公共団体の不作為(是正の要求又は指示を受けた普通地方公共団体の行政庁が、相当の期間内に是正の要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じなければならないにもかかわらず、これを講じないことをいう。以下この項、次条及び第二百五十二条の十七の四第三項において同じ。)に係る普通地方公共団体の行政庁(当該是正の要求又は指示があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を被告として、訴えをもつて当該普通地方公共団体の不作為の違法の確認を求めることができる。

一  普通地方公共団体の長その他の執行機関が当該是正の要求又は指示に関する第二百五十条の十三第一項の規定による審査の申出をせず(審査の申出後に第二百五十条の十七第一項の規定により当該審査の申出が取り下げられた場合を含む。)、かつ、当該是正の要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じないとき。

二  普通地方公共団体の長その他の執行機関が当該是正の要求又は指示に関する第二百五十条の十三第一項の規定による審査の申出をした場合において、次に掲げるとき。

イ 委員会が第二百五十条の十四第一項又は第二項の規定による審査の結果又は勧告の内容の通知をした場合において、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関が第二百五十一条の五第一項の規定による当該是正の要求又は指示の取消しを求める訴えの提起をせず(訴えの提起後に当該訴えが取り下げられた場合を含む。ロにおいて同じ。)、かつ、当該是正の要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じないとき。

ロ 委員会が当該審査の申出をした日から九十日を経過しても第二百五十条の十四第一項又は第二項の規定による審査又は勧告を行わない場合において、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関が第二百五十一条の五第一項の規定による当該是正の要求又は指示の取消しを求める訴えの提起をせず、かつ、当該是正の要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じないとき。

2  前項の訴えは、次に掲げる期間が経過するまでは、提起することができない。

一  前項第一号の場合は、第二百五十条の十三第四項本文の期間
二  前項第二号イの場合は、第二百五十一条の五第二項第一号、第二号又は第四号に掲げる期間
三  前項第二号ロの場合は、第二百五十一条の五第二項第三号に掲げる期間

(以下略)


国が提訴できる条件とは、本件であれば、

 ウ)国地方係争処理委員会の審査結果で、「国は正しい(=違法がない)」こと
 エ)にも関わらず、自治体が指示の取消訴訟を提起せず、
 オ)指示にも従わないでいること

が全て成立している場合である。


それが、同法251条の七 1項2号のイの規定である。
しかし、本件で見れば、係争委の結果が、国が正当であることなど一度も言っておらず、従って法251条の五 1項(1号及び4号)の沖縄県が訴訟を発動する要件を満たすことができないので(必然的に沖縄県が提訴しないということになる)、本条「2号のイ」規定に基づいて国が不作為につき提訴できる前提を欠いている。
同時に、本件提訴は和解の条件からも、導き出すことができない。


4)国は訴えの利益を自ら放棄した

最もバカバカしいのが、この論点であろう。国は、自らの権限と義務を放棄したのだから、訴えの利益は、自分で既に喪失させたのである。
にも関わらず、今回の提訴というのは、いかなる法益があるのか?


①沖縄防衛局が行政不服審査法に基づく審査請求、執行停止申立て
②国交大臣が請求受理、執行停止決定

この時点で、審査庁たる国交省が「沖縄県の取消処分は違法、よって知事のした埋立承認取消処分を取り消せ」と裁決を出せば、それで答えは出せていたものである。
審査庁は国交省&大臣、処分庁=沖縄県&知事であり、誰がどう見たって、後から出した
地方自治法245条の七の指示」
よりも、
「国交大臣の裁決」
の方が法的拘束力が確定的であり、処分庁(沖縄県)は従わなければならない。次の裁判へのステップも高裁からということで、本件訴訟のような遠回りの過程は回避できていたはずだ。


にも関わらず、代執行の着手を閣議で決めたわけだ。
地方自治法245条の八の勧告、是正指示
④大間違いが発覚し、和解


そして、どういうわけか知らないが、①と②を国は放棄した。
法的拘束力が確定しており、大臣から処分庁への命令に等しい「裁決」を自ら棄てたということ。何故?審査庁が持つ、権限と義務を放棄したい、と国が自ら望んだから、ということしか言いようがないですね。


代執行訴訟前の勧告と是正指示は、恐らく残存したままにしながら、新たに「245条の七に基づく指示」を発出、という、迷路のような堂々巡りの行政行為を連発。
裁決なら国交大臣が審査権を行使するはずのところ、これを敢えて国地方係争処理委員会に審査させることを「和解条件」として国が自ら同意。
今度は、国が審査結果に不満だということで、本件提訴となったわけだ。


国のやったことは、最初に行政不服審査での国交大臣の権限を行使せず、代執行訴訟と和解後の指示では、国交大臣権限を前面に出してきて、国の指示が正しいことを争う、と。
けど、和解では裁決の権限を放棄した、と。


このように、大臣なり国の権限として法律上行使が許されるものを、正しく用いることが出来ておらず、自ら放棄を宣言してみたりしている、原告たる国には、どのような守るべき法益があるのか?

本件訴訟で保護されるべき法益が仮にあるなら、最初から国が受理をした審査請求の結果として裁決を出せば済んだことである。審査の時間が足りないなどというのは、理由にならない。現に、代執行訴訟の顛末も、国地方係争処理委員会の結果も、6か月も経過することなく答えが出せている。
そもそも、執行停止決定に国自身が挙げた理由は、「重大な損害を回避するのに緊急を要する」から、ということであったのだから、90日もかからずに裁決結果を出せばそれで済んだこと。その権限を放棄したのは、誰あろう、国自身である。

自ら国が放棄した権限を、何故、裁判所が国の代わりに「権限の保護」をしなければならないのか?愚かにも程がある。

不服審査の請求を受理した以上、審査庁は原則として裁決を出す義務がある。その義務を果たすことなく、司法に肩代わりをさせようというのが、本件裁判の意味である。その前提としての国地方係争処理委員会での審査も、本来なら国交大臣がすべき審査を、沖縄県を通じてさせた挙句に、次なる答えを求めて裁判所に願い出たというのが、これまでの実態である。
国は、自らなすべき義務を果たすことなく、権限も放棄しておきながら、裁判所に「権限の裏付け」を依願しているに等しい。



国の本件訴訟は、訴訟の入口に立つ資格さえない。