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「テロ等準備罪」の危険性について

今日は、籠池証人喚問の話題で持ち切りであろう。全く見てないので、それはおいといて。


政府が密かに提出したという「テロ等準備罪」らしいが、あまり必要性についてきちんと説明されてはいないようだ。
恐らくは、「テロ防止」などという大義名分とは別の狙いがあるものではないかと思われる。
何といっても日本は、「レンタカー代金の割り勘」という罪で何日間も不当に逮捕勾留されてしまうような国であるので、どんな難癖でも理由を付けてしまいさえすれば、逮捕できてしまうわけだ。
しかも、その勾留決定には裁判所が協力的ということで、恐るべき警察権の発揮ができる国となっているわけである。恣意的に警察は好きにできる、ということを意味する。


さて、拙ブログでの注目点について、以下に書いてみたい。

当初の「共謀罪」といったネーミングが報道などで広まっていたこともあり、政府は名前を変えたようである。それが「テロ等準備罪」と手短に表現されるようになったものである。

提出法案の条文で、次のようなものがある。


組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律

(実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)

第六条の二 
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役または禁錮

二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。


当方の理解で書けば、この条文の意味を平たく言うと(2項は類似なのでここでは無視)、

・組織的犯罪集団の定義=「別表3」の実行を共同目的として繋がってる連中
・組織により遂行される行為を2人以上で計画した者、が対象
・その計画者の誰かが資金や物品手配、場所下見等の準備行為をしたらアウト
・犯罪行為は、「別表4」
・10年超の懲役以上の罪の場合―5年以下の懲役か禁錮
・4〜10年の懲役以下の罪の場合―2年以下の懲役か禁錮


別表3には、罪の種類が縷々挙げられており、90号まである。別表3と4を分けてあるのは、組織の定義に用いるから、というのもあるかもしれないが、基本的には分かり難くする為(笑)であろう。
「六条の二」にある1項1号の「別表4」は、一部引用すると次のようなものである。


別表第四(第六条の二関係)

一 別表第三に掲げる罪(次に掲げる罪を除く。)

イ 第十一条(犯罪収益等収受)の罪

ロ 刑法第七十七条第一項(内乱)の罪(同項第三号に係る部分を除く。)並びに同法第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)及び第百九十八条(贈賄)の罪

 (以下略)


「別表3」のうち除外規定があるから、ということと、別表3掲載以外の罪が2号以下、6号まで追加されている、という構造になっている。例えば、5号規定は、日米安保に関連する「刑事特別法」第4条の偽証罪(懲役3か月〜10年以下)が加えられており、本法改正は公判での所謂「証言拒否」をある程度封じる効果を狙ったものかもしれない。


いずれにせよ、とても分かり難い構造にしている、ということであろう。最も効果が高いとか、狙っている法律が何なのかを隠したい時にこそ、こうした法案を用いるのではないかと思えるからである。


確かに別表3の多くは、犯罪行為が並んでいるわけで、そういうことに関連して計画したり準備行為に該当するというようなことは、一般社会ではまず起こらないだろう。ただし、それは、その人が「政府に従順である」というような条件だから、かもしれない。子羊のように、何でも「黙って受け入れる、いうことを聞く」という人なら、狙われることもないだろうから。


本法案の重要な肝の一つは、多分、知財関連ではないかと思うわけである。どうしてかと言えば、当然「TPPが頓挫したから」である。ここに「攻め手」のとっかかりを何が何でも設けておきたい、ということではないかと。


「別表3」には、例えば

不正競争防止法
特許法
実用新案法
意匠法
商標法
著作権法
種苗法

が入れられており、権利侵害の申立てがあれば、捜査対象となってしまうかもしれない。


具体例で考えてみよう。
標的Xに対し、Xの持つパソコンを捜査したいとしよう。
Xの仲間Yの持つパソコンにある「Word」がXに違法に複製されてインストールされているのではないか、という嫌疑が米国企業から出された、と。ならば、違法ソフトの複製を組織的にやっているとの名目で(かつてオウム関連でパソコンショップが捜査対象となっていたような記憶が)、XとYの「準備行為」として強制捜査に着手と。捜査の一環で家宅捜索して、捜査したいパソコンを押収できることになる。この後に起訴するかどうかは別問題だろう。兎に角、中身を詳しく調べたい、という目的なのだから、起訴できてもできなくてもどちらでもいい、ということになる。ソフトのシリアルナンバーだけの違いということだと、捜査を拒否するというのも割と難しいかも。捜査後に、「捜査した結果、違法ではなかったので返却するね」とか言われても、どうすることもできないし。


イスラム国関連の家宅捜査で、フリー記者のパソコンが押収されたりしてたように思うが、ああいうのがもっと簡単に着手できるようになるかもしれない、ということである。


捜査対象になっている、という嫌疑の目でもって、社会的に評判を落とすといったこともできてしまうかもしれない。
罠サイトを用意しておき、あるウェブページを訪問したら、何かのファイルなりデデータがダウンロードされるように仕組んでおく。
その罠サイトは、実は児童ポルノ販売等の組織的犯罪集団であったことが発覚し、捜査対象となったら、そのウェブページからダウンロードした先である、という言い分で捜査される、とか。技術的にどうなのかは、当方では分からないが、犯罪者たちが詐欺用にニセサイトを作ってたりして、ウイルス感染していることからすると、可能かもしれないなと思えるわけである。


しかも、自分のパソコンには何らかのファイルなりが実際にダウンロードされてしまっているわけで、その罠サイトの連中との「関係性」なり「計画」なりを自分自身で「全く身に覚えがありません、犯罪行為とは無関係です」って言っても、「物証があるぞ、データはお前のパソコンに入っていたぞ、ホレこの通り」とか示されて、否定の根拠を提示することなんて、かなり難しそうだもの。「痴漢で逮捕」でもって有罪無罪に関係なく、社会的に抹殺される例みたいに、ならないとも限らない。


罠サイトに誘導する場合だと、例えば、「基地反対運動」を謳ったウェブページなどを作って、そこに有用な情報が掲載されているかのように、ツイッターやブログなどで情報を拡散する、とか。最初の半年とかを善人のように見せておき、罠の実行のチャンスが来たら、ウェブページにそうしたプログラムを仕込んでおけばよい。そういうページを作成するのが犯罪者集団などではなく、政治的に邪魔な存在の、葬り去りたい連中を罠に陥れる為に、権力側が意図的にやらないとも限らないわけである。
或いは、ウィキリークスのような、権力側にとって忌々しい存在に、協力的な人間たちをあぶり出す為に、罠を利用するかもしれないし。


そこまでやるかは別として、知財関連については、海外企業からの厳しい追及が日本につきつけられ、これまでよりは容易に摘発対象として捜査されるようになるだろう、とは思いますね。


日弁連等が反対していたのもあるし、本当に成立が不可欠な法律であるとは到底思えないわけである。かえって、日本の権力側(警察、検察など)に権力行使の口実を与えるだけで、不当逮捕が相次ぐだけでは。

不当勾留が平気で行われている日本の現状を見れば、危険極まりないということだ。