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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

加計学園の獣医学部設置に関する問題〜暴走する安倍と取り巻き官僚たち(追記後)

森友学園問題に続いて、本件が話題に上っている。安倍総理の問題として取り上げられているが、ネット上で散見される意見には、ずっと以前から提案されていたものなので何ら問題ない、というものがあるようだ。

一見すると、そうかもしれない。
が、それは「今回に限った話ではない」ということの裏返しなのかもしれない(笑)。


まず、今治市の提案は、平成19(2007)年10月の「構造改革特区」第12次提案に遡る。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kouzou2/jyoukyou/2007/12/pdf/21_1/mext2.pdf


これ以後、今治市は毎年のように提案を繰り返してきたようであるが、その努力の甲斐も虚しく採択されずに終わったということである。

理由としては、獣医師の需給、全国的な観点から必要性に乏しい、などといったことである。これは、文科省単独の意見に留まらず、農水省や業界団体である獣医師会のヒアリング等も踏まえたものであり、新たな学部設置の意義は見出せない、ということである。


今治市の大学を誘致したいという気持ちは分からないではないが、慎重な議論が必要であり、一自治体の為にやるべき制度変更なのかどうかは、十分に検討する必要がある。


07年の提案当時は自民党政権下であり、07年9月に安倍総理が電撃辞任した記憶は未だ新しいであろう(個人の感想です、笑)。
そうすると、今治市加計学園のコンビが07年10〜11月の第12次に提案するには、それ以前に準備期間が必要だったはずで、恐らくは安倍総理時代に資料が作成されていたであろう、と推測されるのである。


残念なことに、安倍総理の任期中には間に合わなかったのである。
今治市は提案を諦めていなかったので、その後も継続してはみたものの、福田、麻生の自民党時代はもとより、民主党政権になってからも採択されることはなかったのである。


その理由は比較的単純であろう。
社会全体として、獣医師不足が社会問題化していたりはしない、ということである。現状で特に困っておらず、政策対応が必要と認識されないのであれば、法制度を変更してまで取り組むべき課題であるとは判断されてこなかった、ということである。

獣医学部新設の発端は、恐らく第一次安倍政権時代である
安倍総理のご威光を当てにしていたか否かは、分からない)


さて、月日は過ぎて、10年後の2017年。加計学園今治市にとっては、まさしく「失われた10年」だったことだろう。

安倍政権が構造改革特区を廃して、新たに国家戦略特区なるものに衣替えしたわけである。特区の基本的な構想はほぼ同じだが、これと並行して、例の「産業競争力会議」(笑)で日本再興戦略なるものを考えたわけである。三木谷とかが入ってたやつね。

そこに次のような事項が書き込まれたのだ。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/hiroshimaken_imabarishi/imabari/dai1_sankou2.pdf


⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討

・現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。


2015年6月30日 閣議決定となったものである。これを根拠として、特区に採択というのが進められたわけである。


http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/menu.html

この「教育」の項に図がありますが、先の「日本再興戦略2015」に書き込んだ、そして、それを具体化すべく「国家箋扼特別区域諮問会議」で一校に限り特例措置を認めたということである。

国家戦略特区における追加の規制改革事項について(平成28年11月9日国家戦略特別区域諮問会議決定)」に従い、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するための獣医学部を、一校に限り特例的に設置認可の対象と出来る。』

これにより、今年1月に告示が出され、元からの提案主体であるところの加計学園が採用されるに至ったわけである。


こうした過程をもって、「手続的には何ら問題ない」「区域諮問会議が決めたんだ、安倍じゃない」、という主張は可能という見方はできよう。


拙ブログでは、本件は問題があると考えているが、その理由について述べる。


ア)過去の政府(行政庁)見解との整合性

幾度も提案してきたにも関わらず採択されなかったのには、相応の理由があったからであり、その理由を覆せる根拠なり新たな論点提示なりが行われない限り、「変更理由」というのは明らかではないわけである。何故、過去には認められてこなかったものを今は認めるのか、ということの説明義務は決定側にある。

安倍政権は、戦争法案の審議の際において、種々の政府見解や解釈を全く無視して、「過去のことはなかったことにする」かのような傾向が顕著だったわけである。憲法解釈でもそうだった、ということ。普通の、常識的な人間であれば、何等かの理由を提示するものと思うが、そういった説明がまるでなされずに、「変更するから、変更するんだ」というような、全く何の意味もないような繰り言を言うかのようである。

今回の特区の採択についても、「総理が望んでおられる」との理由で実施されたわけであるから、「変更するから、変更するんだ」の域を出ないものであろう。総理の「僕がしたいからするんだ」で、行政庁の見解なりがいとも簡単に覆ってしまえば、行政は著しく不安定になるとしか思われない。


イ)一自治体の過疎・少子化対策や産業振興策として大学教育を利用すべきか

今治市の説明資料等を読むと、どうも大学設置の目的がどちらかと言えば「産業政策」的発想なのではないか、という印象を受けるわけである。

また例で申し訳ないが、これが獣医学部設置ではなく、高速道路だったり、レジャーランドだったり、ハコモノだったら、どうなのか?
国の予算が投入されず、自治体独自の事業であって、環境省の同意か承認が必要な事業、のようなものの場合、国が「いいよ」と言えば実施できることにはなる。けれども、その事業の将来性や必要性が乏しいものであれば、「いいよ」と言わない方がよいのでは?

過疎地に「今度、大学を作ってくれ、無理なら専門学校を誘致してくれ」って要望が全国各地から出たら、設置するのか?、という話にもなってこよう。
何故「今治市だけが特別扱いされねばならないのか」が、全くの不明である。


ウ)国家戦略特区の意味とは?

原則として、特区で「お試し」で実施してみて、それで問題がないか、うまくいくか、そういうのを見た結果として、全国的にやっても大丈夫だな、というようなことを目指しているものでは?
終局的には、全国的に実施すること、すなわち法制度の改正ということであろう。全国的な施策として認めるようにすることであるので、一自治体に限っての特例というのは、本来趣旨から逸脱しているのではないか。

全国展開してみて大失敗だったものとして、法科大学院がある。あちこちにできてはみたものの、法学教育の質は果たして向上したのか、法曹を増やした結果はどうなったのか、よく考えてみるとよい。競争原理に任せた方がよいかどうか、検討が必要ではないか。多くの国民がそれを望むなら、まあ実施もやむを得ないかもしれないが。


エ)採択理由は明確にされたのか

少し話を戻すが、2015年6月閣議決定の「日本再興戦略」は獣医学部新設により日本の地方再生に資するという立場なのである。

そこで記述された条件は、

・現在の提案主体
・既存の獣医師養成でない構想
・ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野
・既存の大学・学部では対応が困難

であった。
満たされているのは「現在の提案主体」=加計学園今治市だけであり、他3点は不明である(現在の提案主体、の記述からすると、他の候補が手を挙げても採用するつもりがない、ということの表明であろう?)。

まず、「既存の獣医師養成ではないこと」と「既存の獣医学部では困難」なことを立論できていなければならない。既存との違いが明確にできるはずでしょう。

獣医師にしかできない「ライフサイエンス分野」で、既存獣医学部とは異なった養成方法というのが一体何なのか知りたい。
そして、卒業生は四国で就業、と?

既存の教育制度を経た獣医師たちと異なり、一般的な獣医師ではない新たな業務(=ライフサイエンス分野)を担う獣医師って、どこで就職(従事)するのだろうか?


口で言うのは容易い。



以上、疑問点等について述べたが、日本再生戦略に書き込まれて以降、「設置ありき」で進められていったものと思える。1月告示で、僅か2週間程度では、「獣医師にしかできないライフサイエンス分野」の構想だのを、実現できる学校なんてそうそう出てくるもんじゃない(笑)。

それほどの新規性の高い教育を、「誰が担えるのか」というのが最も気になる所である。既存の大学では、不可能な教育らしいので。是非、その内容について開示願いたい。


参考までに、加計学園理事長のご子息に、獣医師免許をお持ちの方がおられるやに聞き及んでおりますが、そうすると、もしも獣医学部が設置できれば、専門性を活かせる道ということで「渡りに船」とはこのことかな、と思わないでもない。


安倍政権は、過去との分断を掲げる政府であり、「全部ひっくり返す、なかったことにしたい」という態度・考えがうかがわれ、憲法議論においても、何の断りもなく「これまでの政府見解は覆すことにする」と宣言して終わる、みたいなものである。


そういう点からすると、革命的政権である、ということなのかもしれない。昨日言ったことも覆す、そういうタイプなのである。どこにも、まともな理屈もなけりゃ、説明もない。繰り返すのは、「何ら問題ない」という答弁だけである。
これを暴走政権、それとも独裁的政権と呼んだとしても、不思議でも何でもない。
10年越しの、前回は果たせなかった夢を、今は、安倍独裁の象徴として、実現できるところまで漕ぎ着けたのだ、ということだな。


ちょっと追加です。
国家戦略特区の区域諮問会議の議事を少し読んでみましたよ。
(どうせつまらんものだろうと思って、これまで全然目を通してこなかったんだが、それが失敗だったのかもしれん。マスコミとか政策関連の人たちとかも、全然監視の役に立ってないのかな。どうして人手の多い組織が読まないんだろうか?)

・H28年10月4日

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai24/sankou2.pdf

ここでは、今治市のプランが出ているが、獣医学部設置の話はない。議事要旨にも、取り上げられた形跡はなかった。

ところが、翌月の会議の席上では唐突に出てくるのだった。


・H28年11月9日

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai25/shiryou3.pdf

この案で、『現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。』


  同議事要旨

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai25/gijiyoushi.pdf


ここでは、農水、文科大臣を臨時に呼んで、言質をとることにしたものである。すなわち、両省はどうですか、と総理のご意向につきご下問し、意見があれば言ってみよ、と。

山本農水大臣は、早い話がイエスマンよろしく、農水省としては歓迎します的な発言だけで終わった。
一方、文科省の松野大臣は、若干の抵抗感を滲ませるも、

文部科学省におきましては、設置認可申請については、大学設置認可にかかわる基準に基づき、適切に審査を行ってまいる考えであります』

と言うのが精一杯で、ノーとは表明できなかったのである。これにより、もう決定事項となった、という形式にされてしまったのである。それが直ちに改正をする、という官邸・内閣府の姿勢が優勢となり、1月告示へと繋がったものであろう。文科省内部では、抵抗があったものと推測され、それは事務次官辞任劇といった「不祥事で粛清」という形で表面化したものと推測される。


つまり、前後の脈絡がない状況で、11月の会議直前に官邸サイドが「強硬にねじ込んできた」議題が、今治市獣医学部新設に伴う特区だったということだ。

一方、懸念を述べたのは、麻生太郎ただ一人であり、表面上は賛同を示しつつも、法科大学院みたいに失敗したら「誰が責任を取るんだ」と。
(その時点では、内心では「あんたは、総理の座を退いた後だろう?責任取れるんかいな」と思ったに違いない)


麻生大臣は、以前の自民党内の議論も熟知していたし、獣医師会の意向も尊重していたろうから、釘を刺したものと思われた。

これらをすべて跳ね除けて、実現させたのが、安倍総理だったということである。特区を所管する内閣府が手柄を挙げるべくお膳立てをしたのかもしれないし、官邸サイドから「(いつどうなるか分からないから=以前みたいに電撃辞任のような失脚もあるかもしれない、ので、)やれるうちに、全部やっとけ、ドサクサ紛れで今なら何だってできる」ということで、決定されてしまったのかもしれない。


これは、普通の国ではありませんよ。縁故知人の為に優遇措置をするという、独裁国家と何ら変わらない。


※※22日追記:

11月9日の議事要旨には、八田達夫議員(阪大教授)の以下の発言があった。

その一方、過去50年間、獣医学部は新設されなかった。その理由は、先ほど文科大臣のお話にもありましたように、大学設置指針というものがあるのですが、獣医学部は大学設置指針の審査対象から外すと今まで告示でなっていた。それを先ほど文科大臣がおっしゃったように、この件については、今度はちゃんと告示で対象にしようということになったので、改正ができるようになった


松野文科大臣の発言内容は、上に引用した通りのことしか記載されていなかったのだが、これはどういうことなのか?
告示のことも、その改正も何ら表明されていない。
この重要な発言部分が、何かの理由で、削除されたのか?
それとも、八田達夫議員は文科大臣の直接語っていない部分を「告示で対象にしようということになったので改正できる」と自分勝手にまとめを言ったのか?所管大臣でもないのに?

それは、事務方の振り付け要望に従って、そういうまとめを発言したのだろうか?
或は、本当は、文科大臣が告示のことも、これを改正して設置対象とすることも、会議の席上で説明なり発言をしていたものなのか?もしそうなら、どうして大臣の発言内容を正確に議事要旨に反映しないのか?
告示変更の話を、どうして文科大臣も農水大臣も一言も言っていないのだ?


こうした、インチキ臭い手法が、政権への疑惑なり不信感を増幅させているのだよ。