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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

辺野古埋立承認撤回に関する国交大臣のした執行停止決定及び裁決は違法

昨日、沖縄県の提訴した裁判の判決が出されたとの事。いつもの如く、沖縄県の敗訴と報じられた。

判決文はこちら

https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/chijiko/henoko/documents/191023hanketsu.pdf



率直に言えば、高等裁判所をしてこれか、と。まるで不出来な学生の丸写しレポートのような出来栄え。
裁判所の役割放棄に等しいのではないかと思うほどである。


国地方係争処理委員会の審査結果の低劣なコピーかと思ったよw

http://www.soumu.go.jp/main_content/000601070.pdf



係争委の判断は間違っていると思っていたが、裁判所はどういう考え方を出すかは分からなかったので、静観しているしかなかった。


拙ブログでは、以前から取り上げてきた話である。

https://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/1433db8cd9cb193ce989e3ac3d478552


今回出された判決につき、批判的に指摘をしておきたい。


1)沖縄防衛局は一般私人同然か

福岡高裁那覇支部も国地方係争処理委員会も、国の主張を受け入れている最大の誤りは、国の機関たる「沖縄防衛局」が私人と立論している点である。


沖縄防衛局がやっていることで、一般私人ではできないものとして

・埋立計画の根拠を所謂「日米安保条約」「日米地位協定」としていること
・埋立周辺海域について、制限区域を設定し一般人の通航等を公権力の暴力を用いて完全排除していること
・県が条例違反だと指摘しているにも関わらず、岩礁破砕許可申請をせず工事を強行していること
沖縄県知事の指示に全く従わないこと
・立入検査も拒否していること

など、枚挙に暇がない。


また、最高裁判決(平成28年12月20日 最二小)でも次のように判示している。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/358/086358_hanrei.pdf

(便宜的にa)~h)の記号を当方が振っているが、一文中の記述である)


a)本件埋立事業は普天間飛行場の代替施設(本件新施設等)を設置するために実施されるもの

であり,前知事は,

b)同飛行場の使用状況

や,

c)同飛行場の返還及び代替施設の設置に関する我が国と米国との間の交渉経過等

を踏まえた上で,前記第1の2(4)イのとおり,

d)騒音被害等により同飛行場の周辺住民の生活に深刻な影響が生じていること

や,

e)同飛行場の危険性の除去が喫緊の課題であること

を前提に,

f)①本件新施設等の面積や埋立面積が同飛行場の施設面積と比較して相当程度縮小されること,

g)②沿岸域を埋め立てて滑走路延長線上を海域とすることにより航空機が住宅地の上空を飛行することが回避されること

及び

h)本件新施設等が既に米軍に提供されているキャンプ・シュワブの一部を利用して設置されるものであること


このような埋立地の利用を計画する者は、一般私人においては存在し得ない。いずれも、一般私人の埋立免許申請において考慮が必要となる事項ではない。日本国政府のやっていることである。

これを一般私人と同じ、とする国地方係争処理委員会や高裁判事は、詭弁を通り越して単なる「国の主張に沿う為だけの屁理屈」を言うに等しい。


最高裁判決において、沖縄県知事が埋立承認時にした「判断」を適切だと評価しておきながら、本件高裁判決では埋立後の利用・事情の考慮など県知事の判断すべきことでない、というような断罪の仕方は、最高裁を無視するが如き暴論であろうww


また国は代執行訴訟時には

『国家間の約束事を実現できず、今後の諸外国との外交関係の基礎となるべき、国際社会からの信頼の低下などの我が国が受ける不利益』

と自らが主張していたのであるから、一般私人が外交関係や国際社会云々を埋立工事で考慮するべき理由などないし、本件埋立が国の事業であって私人の事業と同等でないことは疑いの余地がない。

他にも

執行停止決定書(平成26年3月30日 26水管第2801号  林芳正 農林水産大臣)には、

普天間飛行場代替施設建設事業が大幅に遅れることとなるため、普天間飛行場周辺住民に対する危険性や騒音の継続による損害、日米両国間の信頼関係への悪影響による外交・防衛上の損害等といった回復困難で重大な障害が生じ、当該損害を避ける緊急性がある』

このような主張を必要とする一般私人がどこに存在すると言うのか。

屁理屈以下の主張をする国、裁判所、国地方係争処理委員会、いずれも杜撰な論立てである。


2)現行行政不服審査法の施行後、国の機関は審査請求ができない

H16年4月以降に本件審査請求が出されたのであるから、行審法7条2項は沖縄防衛局に対して適用される。よって、審査請求が違法な手続であり、これを受けて審査結果を出した国地方係争処理委員会もまた違法がある。

執行停止決定を出した国土交通大臣と共に、国の工事強行をひたすら実現させるべく、出鱈目の法解釈論を並べているに過ぎない。現行行審法
改正の趣旨は、固有の資格での国の機関の審査請求を明示的に否定したものである。


3)公有水面埋立法で、国と私人では取扱に明確な違いがある

一般私人や地方公共団体の場合には「免許」、国は「承認」と条文上でも各種の手続上でも明確に区分されており、沖縄県の主張通りである。行政通達上も、公有水面埋立法の免許は行政手続法の適用範囲だが、承認は除外されていた。

これを私人と同等である、という主張は、こじつけ程度の暴論だ。


4)行政不服審査法の手続を骨抜きにする国と裁判所

公有水面埋立法の知事権限による「承認」は1号法定受託事務であるから、審査庁は国交大臣ということになる。裁決において、どんなこじつけであろうとも、国の暴力による強引な埋立事業を実現しようとすれば、常に国交大臣のオーバールールが使えることになり、事実上知事権限を剥奪するに等しい。今、アベ政権がやっていることは、そういう無法である。


知事が国の埋立事業を承認しない・或いは承認取消

→「国の機関」が私人になりすまし審査請求

→国交大臣が審査請求を受ける・執行停止決定や裁決を出す

→知事の判断・権限を全部否定でき、どんな国の埋立事業でも実現できる


今の国のやってる所業は、何重にも及ぶ脱法の繰り返しであり、これを権力に都合よく擁護するだけの存在として国地方係争処理委員会と裁判所、ということになっているのだ。

これほど違法と脱法をあらゆる分野で積み重ねてくる、日本の政府組織というのは一体何なのか。対抗すべき司法権さえもが、この無法の片棒担ぎしかしないというのは、どういうことなのか。


5)国交大臣は「執行停止決定」を自身の職権で取り消した

15年11月の代執行訴訟に先立ち、沖縄防衛局は10/13に審査請求と執行停止を申出た。10/27には石井国交大臣が執行停止決定をしたものである。これらは、16年3月の和解成立後に全て取り消されたのだ。


沖縄防衛局:埋立承認取消処分の審査請求の取り上げ

国交大臣:「執行停止決定」を大臣権限で取消、裁決権の放棄(審査庁は職権で裁決を出せた)


代執行訴訟の取り下げは、提起した訴訟の「和解による取り下げ」ということで理解可能だが、審査請求や裁決権を放棄する理由はないものである。現に、国交大臣が行った執行停止決定は発動され、たとえ防衛局が審査請求を取り下げたとしても、大臣が自ら執行停止決定を取消さない限り残り続けるものなのだ。


これを自分で取り消したのであるから、本件の執行停止決定も審査請求後の裁決も、保護すべき理由は残されていない。本当に保護が必要だったのなら、取り消さないはずだからだ。

国交大臣は裁判所命令や強制力が働いて取り消したものではない。勿論、取り下げた防衛局も同様だ。
自らの意志で取り消したんだぞ。



この国においては、法解釈も司法判断も、ほぼ滅茶苦茶な屁理屈だけで出来ている、ということだ。行政法は死んだのだよ。

徹頭徹尾、基地利権と米軍に都合よくなるよう、出鱈目の立論が出されてくるのである。


こんな国家には、法など無意味である。

屁理屈とネット詭弁士程度の連中があれば、それで済むということだ。


もう杜撰などというレベルではない。

国の根幹からして、崩壊しておるのだよ。