どういう積もりなのか判らんが、特に外資系グリード連中とか大穴狙いで一発当てたい連中とか、破綻するぞと脅すことが多いわな。
他には、財政再建派のタカ派的な人たちということだろうか。とりあえず、何が何でも増税したい、という連中(笑)ということである。
>http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120205-00000302-agora-bus_all
よくこういう議論を提示する人たちがいるのだが、これは本当なのだろうか?現実にもよく当てはまるものなのだろうか?
大抵の場合、経済学に詳しいわけでもなく、金融や日銀のことについて詳しいわけでもないから、「偉い人が言ってるのだから、きっと正しいに違いない」とか思われるのではないだろうか。政府の公債残高が平成10年には295兆円で、500兆円を超えると破綻するとか何とか言われたりしていたが、何も起こらなかった。年間の利払費にしても、10兆円くらいだったのが今でも大して変わっていない。要するに、過去の破綻論者たちというのは全て出鱈目だった、ということである。
当方は何もインフレだけで再建しろ、と求めているわけではないが、必要最低限の条件を整えてから増税を考えるべきだ、と思うだけなのだ。増収を図る努力もしてないし、歳出を抑える策も講じていないし、まだまだやるべきことはたくさんあるように思える。
日本国債に関する当方の考え方について、いくつか述べておきたい。
①「ドーマー条件」の意味とは
国の財政についての基本的考え方がどういうものであるのか、ということを理解するには役立つであろう。ただし、現実とは異なる部分というものが含まれているものと考えるべきである。
第一項のプライマリーバランスが黒字であるなら、債務比率拡大に対して抑制的に働くということは分かる。しかしながら、PBが黒字であるとしても、第二項に含まれる(金利−成長率)の部分がプラスになっている場合には、収束しない可能性があるということを示している。例えば、プライマリーバランス+0.2%、実質成長率+2%、名目成長率−0.5%(=インフレ率−2.5%というデフレ状態ということ)、といった場合、PB黒字かつ実質成長しているにも関わらず、名目金利の非負制約によって第二項がPB以上のプラスになる為に債務残高は発散することになる。
経済の実態として、実質成長がある社会というのが大事であるということがあるとしても、政府債務問題においては、決定的要因ではないということである。それよりも、「名目成長率の大きさ」が根本的問題なのだ、ということである。政府債務は、名目値の世界で評価されるものであり、ドーマー条件についても名目金利及び名目成長率というのが重要な役割を果たす、ということである。
②名目金利は操作可能である
中央銀行たる日銀は、「何をやっている組織なのか」ということを根本的に理解できていないのではないかという疑念を感じざるを得ない。政策金利をコントロールする組織であるはずだ。すなわち、金利というものは、ある程度の操作可能変数なのであって、成り行き任せにしかできないという代物ではない。(金利−成長率)という部分において、金利を抑制し続けることは不可能ではない、ということだ。その結果生じる副作用ということはあると覚悟する必要はあるものの、金利コントロールが根底にある、ということである。
③実質成長率を操作できないが、インフレ率には働きかけ可能である
名目金利を上げ下げする役割が日銀なのだ、というのが基本的前提。では、(金利−成長率)の部分において成長率は操作可能か、というのが問題意識である。確かに日銀が日本の経済成長をもたらせる、なんてことは、そうそうできるものではないかもしれない。けれども、長期的インフレ率というのが金融政策の結果生じるものであるなら、その変動を操作するのが日銀の役割ということになるわけである。すなわち、インフレ率を変化させる能力を有するのは、中央銀行であるということは当然なのだ。だからこそ、インフレ率高騰のような場合には、金利引締めなどが行われるわけですから。
従って、実質成長率を高めるということはできないかもしれないが、少なくとも長期的にはインフレ率のコントロールを通じて名目成長率をある水準以上に維持することは不可能ではないはずだろう。
以上①〜③から、(金利−成長率)の部分について、経済運営としてコントロールすることを心がけることが必要であり、その手段は日銀が有しているを考えられる。
今度は、もう少し現実的な話をしてみる。
④大部分を占める既発債の利払費は固定されている
恐らくドーマー条件の金利というのは、今期保有する債務全部が翌期には入れ替えられるというような想定ではないかと思う。実際は、そうじゃない。
例えば、10年利付国債の既発債というのは、過去の発行された時点での金利が適用されているのであり、昨年1%金利で発行した10年国債は、来年の指標金利がたとえ2%になったとしても、利払費はやっぱり1%分でしかない、という話である。破綻論者の多くは、こうした現実を無視している傾向があるように思われる。従って、直ちに政府の利払い負担が大幅に増えるというわけではない。
金利変動が起こった場合に、既発債は金利が固定だから影響が少ないとして、じゃあ短期債はどうなのか、と心配される方々も多いだろう。これについて、補足しておきたい。
そもそも日本の短期国債は発行額が少な目だった。が、債券で大儲けを企む外資系のガイアツを受けて(笑、単なる推測です)、発行額は大幅に増加したわけである。これが100兆円規模とかで存在していると、「海外投資家から売り浴びせられる」とか何とか心配するかもしれない。
万が一の場合には、日銀が全てを買うことは可能。なので、実物はいくら売られたとしても、それだけで破綻には至らない。
どうしても残高を圧縮したいのなら、おバカな為替介入を大量にやった結果保有する1兆3千億ドル超の外貨を売って、債券残高を圧縮できる。これをやった場合、強烈な円買いとなるので、円高不況のようなものを覚悟する必要があるかもしれないが、破綻論者どもの気狂いのせいと諦めてもらうか、破綻論者どもの「円が暴落する」という脅しへの反対売買効果が期待できるね、ということで納得してもらうしかない。勿論、全部売る必要はないし、2年以下の短期国債残高を50兆円分は残しておいてもいい。日銀のオペで使うには、短期債もあった方が便利だろうから、という側面がある為である。
他にも、どうでもいい財務省の天下り団体(独立行政法人や公益法人等)に流し込まれている積立金なんかを回収して、団体を解散させ資産売却などを進めれば短期債務は圧縮できる。NTT株とか、日本郵政株なんかの売却益で圧縮を進めてもいい。
それと、日銀の政策金利調節能力は、基本的に短期金利にこそ威力が発揮されるということであるはずで、長期金利へのアプローチに比べると遥かに容易。金利暴騰を防ぎやすい、ということだ。それとも、短期債の発行額を縮減し、長期債に借り換えることもできる。低金利時代に多く発行しておく方が有利、というのは当然だからだ。
整理すると、
・短期債残高圧縮は、政府資産売却、天下り団体解体で資金回収、外貨準備高圧縮、長期債への借換、日銀が買入など、で対応可能である
⑥名目成長率4%が達成されたなら
ここで大雑把な具体例で考えてみることにする。
財政再建を可能にする経済運営を実現させる必要がある。
その運営条件として、
・名目成長率4%(インフレ率をコントロール)
・名目金利4%(政策金利コントロール+国債買入)
・現在単年度国債発行額40兆円
・現在の内訳―借換額15兆円、利払費10兆円、新規発行額15兆円
・毎期新規発行額を1兆円ずつ減額(政府資産整理や歳出削減等)
・現在税収50兆円
・今後の税収は年率4%(弾性値を1)で増加(名目成長率と同じ)
・現在発行残高668兆円、現在名目GDPは500兆円
・現在国債金利は全て1%、来期から突然4%とする
・実質成長率はとりあえずおいておく
・1期ごとの利払費負担増は1.2兆円(30兆円の国債発行分が4%金利適用)
期数 名目GDP 税収 利払増 国債残高 債務比率(%)
今期 500 50 1.2 668 133.6
1 520 52 2.4 683 131.3
2 540.8 54 3.6 697 128.9
3 562.4 56 4.8 710 126.2
4 584.9 58 6.0 722 123.4
5 608.3 61 7.2 733 120.5
…
10 740.1 74 13.2 773 104.4
…
15 900.5 90 19.2 788 87.5
(債務比率以外の単位:兆円)
毎年15兆円借換で、新規発行額を15兆円→ゼロに抑制してゆくと、15年で残高が一定となる(788兆円)。これを維持するだけで、名目成長率が増大してゆくことから、債務比率は自動的に小さくなる。
利払いの増加分は、名目税収額が増加してゆく効果の方が大きいので、その増収分で賄える。弾性値が1.1なら、もっと増収効果があるので、利払い増加分以上に収入が増える。建設国債の償還分やその他支出増加分をこれでカバーできる、ということである。プライマリーバランスは15期経過までは赤字であるが、名目成長率の増加効果によって、債務比率は抑制されるのである。
注意すべきは、これまでと全く同じ支出を続けると、当然支出側の成長も同じく4%分があることになるので、その抑制をすることが必要になる。これは、前年と同額支出を続けるなら、ほぼ達成可能である。
1期目は、利払いが2.4兆円負担増となっているので、
初期値: 税収50+新規発行15+借換15+利払い10
が、
(税収52-利払増2.4)+新規発行15+借換15+利払い10=89.6兆円
となる為、支出可能額は0.4兆円減少する。
同じく5期目では、
(税収61-利払増7.2)+新規発行11+借換15+利払い10=89.8兆円
となるので、税収が伸びても支出を増やさないということで発行残高増加を抑制することになる。
また、経過年数が多くなると、同一金利4%で発行しているものの借換となる為、金利負担の増加がほぼ消えてゆくことになる。10年債の入れ替えは10年で達成されるので、恐らく10年経過以降の金利負担増加分はそれまでよりはるかに小さくなるはずである。
税収増分は、金利負担増以外のものに回せるが、新規発行額を抑制する(ゼロにする)までは、削減努力と資産売却などの収入増が必要となる。
税収の弾性値が1より大きいならば、もっと再建策は容易になる。
上記数値例というのは、かなり早い再建策を作ってみたわけだが、もうちょっと緩やかに支出側を変化させることは不可能ではないはずと思う。そういった手段なり方法なりを、もっともっと出すべきである。