非常に残念な結果をお伝えせねばならない。
製造業が大事だ、というのは、その通り。大事ではない産業など、そもそもないし。
過去の事実を、事実として受け止めて欲しい、ということで、この記事を書いておく。
各年ごとの労働生産性のデータである。
年 前年同期比(%)
90 1.3
91 0.1
92 -2.7
93 -3.0
94 -2.3
95 -1.3
96 -1.5
97 -1.3
98 -3.3
99 -3.0
00 -0.9
01 -4.0
02 -4.8
03 -1.9
04 0.3
05 -0.5
06 1.7
07 0.7
08 0.2
09 -7.7
製造業の労働生産性の低下は著しい傾向である。
92年以降、長きトンネルがずっと続いた、ということですね。04年のプラスまで、日本経済の足を引っ張り続けた、と言っても過言ではない、という結果にしか見えないわけです。
生産性が低下したのは、本当に輸出が苦戦し輸出額が低下したせいですか?
関税のせいですか?
円高のせいだったのですか?
超氷河期と言われた、悲惨だった時期(02年前後)を過ぎて、ようやく改善の兆しとなったが、06年以降の微々たるプラスは、リーマンショック後の大ダメージで震源地米国よりも酷い目に遭うことになったわけである。それは、「輸出企業」に依存していたから、だ。逆に米国は輸出企業の依存が小さかった、だからこそ、被害があの程度で済んだ、とも言えるかもしれない。
経団連の偉い方々、いいですか、04年から08年までの5年間で、輸出増額頼みで積み上げた生産性向上分は、合計2.4%分のプラスでしかない。厳密に言うと前年比を足してもあまり意味はないけど、まあ、ざっとの数字、ということで。
たったの「2.4%」だ。
ところがどっこい、09年には、その全てを吐きだした。それ以上に、大幅マイナスを食らったわけである。2.4%分のプラスなんて、あっと言う間にけし飛ぶマイナスを受けた。だから、輸出頼みで回復してきたように見せかけていた日本経済というのは、結局のところ、
「−5.3%」
が残されただけ、ということだ。
それ以前の12年間は全部マイナスで、生産性低下を強力に牽引してくれました、ということだな。
日本経済の足を引っ張ったようなものじゃないんですか?
これでも目覚めませんか?
製造業が頑張った、というせいぜい4〜5年間は、世界経済が稀に見る好調を維持していたお陰で偶然達成されただけで、そうした「ラッキーボーナス」が剥落した結果は、要するに「元の黙阿弥」状態ということではないのですか?
いや、何も責めているわけではありませんよ。
農業と製造業が争うとか、そういうセクター間で相争うことこそ、一番ハマりなのですから、責任のなすり合いをしたいわけではないです。製造業が悪かったせいだ、と日本経済低迷の原因を押し付けたりはしませんよ。
そうではない。
製造業全般の傾向として、個人的印象としては、「過剰設備」や「過剰人員」を結果として抱えることになってしまい、その転換が遅れた、ということがあったのでは、と。アジアに展開してゆく流れが出来ていたわけですし、台湾、韓国や香港の成長とか、そういうのもあったでしょうし、生産性回復は容易ではなかったでしょう。
その上、デフレと金融危機による銀行システムの混乱というのもありましたから、影響を受けなかったはずはありません。日本国内の多くの産業が、それで大打撃をこうむりました。
その上、増税(負担増)路線+賃金低下+利子所得減等により、購買力や意欲低下もあったでしょう。
持続的な低下傾向というのは、結局のところ、デフレの悪影響というのが最も大きく、その根本原因になっているのは、やはり賃金の低下であろう、と思うわけです。そこのところの回復が伴っていたならば、内需のここまで酷い落ち込みは緩和されていたかもしれません。
過去5年くらいだけ思い出して、産業構造の云々とか、生産性向上がどうとか、簡単には語って欲しくはないですね。
結果的には、リーマンショック後の崩壊寸前の落ち込みを支えてくれたのは、「日本国民全部」が協力したからですよ。
それも、税金と「自分の懐の金」を、「今の危機を乗り越えるには必要だから」という協力する気持ちで拠出したのだ、ということなんですから。
その恩恵に一番浴したのは、大企業を中心とした製造業だったのではありませんか?
首切りだ、期間工切りだ、派遣切りだ、という大ピンチの時に、黙って支えていたのは、多くの「別な業種の人々」だったのではありませんか?
そのようなことも忘れて、未だに独善的な姿勢に終始する、経団連の連中の気が知れませんな。
前にも言ったけど、「エースで4番」みたいな思い上がりは、いい加減にして下さい。
(つい先日の伊藤元重教授が読売に書いてた記事では「一本足打法型」と表現されていた。)
本当に日本経済にとって必要なことは何か、それをよく考えて下さい。
内需と外需、バランスとか、調和が大事なのだ、ということです。