怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

戸堂康之東大教授のTPP参加に関する論説について

天下のNHKでさえ、この有様ですか。残念至極にございます。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/99079.html

誰か肩書きの立派そうな人間を仕立てて、「言わせる」ということであれば、これでもいいんでしょうが。まるで「原子力ムラ」問題を彷彿とさせます(笑)。

因みに、『TPP御用学者 戸堂康之』でグーグル検索しますと、そうですか、という表示となっておりました。皆さんにも、是非ともトライしていただきとうございます。

で、経団連との関係は、こんな感じ、と。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2011/0901/07.html

へえ〜、そうですか。


それでは、戸堂教授のご意見の中身について、若干の私見を述べていきたいと思います。

①成功事例を示すことに、特段の意味はない

まず、学者としての見識を疑わせるのが、個別企業についての具体例を挙げている点です。

成功した企業があったこと、これを紹介することがダメだ、と申しているのではありません。そうした事例をもって、あたかも「TPP参加が正当である」かのように誘導するのは、学者の風上にも置けませんね、という話です。
たとえ、これまでに海外取引のなかった個別の中小企業が、海外に販路を拡大するなどして、成功したということがあるとして、それを一般化できるかどうかは分かりません。しかも、「”TPPに参加していないのにも関わらず”成功している」、ということであって、「TPP参加の正当化」の根拠たり得ません。

日本は鎖国しているわけではありませんから、紹介事例の如く企業が自分自身で海外に活路を求めようと思えば今現在の制度・環境下であっても可能であり、成功することもできる(事実成功者(企業)が存在するw)、ということです。

言えることは、あくまでそういうことであって、「TPPに参加すれば成功できる」とか「TPPに参加すべき」という結論を導くことなどできません。
戸堂教授の言い分を別な話に置き換えてみると、次のような話であっても正当化できることになります。
例えば、「ネギを首に巻いて一晩寝たら、風邪が治った!という人がいました。だから、皆さんも同じようにやってみましょう」という、民間療法的デマでもいい、ということです。たった一つの成功事例をもって、それで「効果がある」とか「有効である」とか「そうすべき」なんて話には、到底できないはずなのに、戸堂教授の誘導法はこれと似たようなものだ、ということです。これは、視聴者を騙しているのと同じです。


②TPP参加に関係なく、つながりを持てるし、知恵もしぼれる

よく、こうしたどうでもいい精神論をぶつなと思いますが、一応、書いておきます。「3人寄れば文殊の知恵」という格言が余程好きなようでございますが、TPPに参加してなくても、寄れますけど。何も東京に集まれ、ということじゃなくてもいいんでしょう?(笑)
アメリカ人とか、オーストラリア人とか、マレーシア人とか、そういうような国々の方々を繋がりをもち、知恵を出して、素晴らしいアイデアを出そう、ということを戸堂教授は言っているものと思いますが、だったら、例えば
シンガポールに事務所を作り、それらの人々を集める
メーリングリストなどで世界各地に散らばったまま対話
・バーチャル会議室のようなネットワーク技術で世界各地に散らばったまま会議
とか、いくらでも対応措置は考えられるんじゃありませんか?
現実に、多くの企業でそうした離れた場所から同時に会議に参加、といったことが行われているわけで、何も物理的に人間が移動して、日本のどこかに集結することが絶対的な条件ではないでしょう。
これも、TPP参加には、無関係な話ですね。


③海外市場参入企業の支援は他の政策でも可能

潜在能力が高くて、本来であれば、海外市場に拡大すべき企業がまだまだ沢山ある、ということなら、JICAだろが何だろうが使えるものは何でも使って、支援協力体制を作って、企業の海外進出を行えばいいのです。海外進出代行業務を一手に無償で引き受けてくれる公的組織があれば、それでもいいかもしれません。TPPの枠組みでなければ、それが実行不可能である、ということでもあるなら別ですが、そうでないなら、参加を正当化する理由とはなり得ません。


④貿易量と成長率の関係

『輸出額のGDPに対する比率でみると、実は日本はOECD34か国の中で下から2番目なのです。このようなグローバル化の遅れが、この20年の日本経済の停滞の大きな原因になっている』

学者ならば学者らしく、この論の正当性を論証すべきでしょうね。多分、ペーパーでも自分で書いていることでしょうから、それを知りたいですね。

下から2番目ということになると、最下位は多分「アメリカ」ですよね?
だとすると、戸堂教授の弁を借りれば、アメリカという国は、
・閉じた国(国を開いてないwww)
グローバル化の最も遅れた国
・生産性が低く、経済停滞の国
ということになりますが?よろしいか?

まあ、ある意味正しいな(爆)。

だが、過去15年とか20年くらいで見た実質経済成長率は、アメリカの方が若干高い、ということなわけでしょう?
本当に、「輸出額のGDP比」と「経済成長率」との間で、強い相関などが存在するのでしょうか?
重要なのは、純輸出であって、勿論、貿易量の少ない国はどちらかといえば低成長の国である傾向があると思いますが、経済規模による違い、というような別な条件なり要因なりが存在しているとなれば、輸出額の対GDP比という数字だけをもって評価できるかどうかは何とも言えないかもしれないですし。

EUだって、国別で見れば「輸出額」が大きくなるだろうし、対GDP比でもそこそこの数字なのかもしれませんが、EUを一国とみなして輸出額を見れば、そんなに大きな数字になっているとも思えないわけですよ。だって、域内貿易で事足りる、ということが多くなるわけですから。域外輸出量の対GDP比があまり大きくない、ということなら、米国、EU、日本に共通して言えることは、「成熟国型経済」(平たく言うと先進国ってこと)、「経済規模・人口規模」がある一定以上の大きさであること、というような、他の国々と単純比較するのが難しい要因があるのではないか、ということが考えられるわけです。


別な見方からすると、過去の日本は輸出量のGDP比が小さかったにも関わらず、高成長率を達成してきた、ということがあります。
(貿易量は、輸出額+輸入額、いずれも実額)

年   輸出額  貿易量  (対実質GDP比 %)
65   9.26   18.21
70   9.48   18.75
75   11.15   22.73
80   12.19   25.47
85   12.96   22.58
90   9.42   17.11
95   8.39   14.76


05   13.09   24.44
06   14.83   28.10
07   16.28   30.47
08   16.04   31.67
09   11.42   22.28


戦後最長と呼ばれた景気拡大期の03〜07年を含む期間で、貿易量の増加が見られた時期を取り上げてみました。リーマンショック08年までだと、確かに輸出額は大きく伸び、対GDP比も増加しましたが、成長率は低いままで終わりました。
上の段のデータで実質成長率の単純平均を出すと、4.87%でした。09年の-5.2%が酷い数字だったので、これを除外しても、輸出が順調に増加し好調と言われた05〜08年の4年間の平均成長率は1.275%でしかありませんでした。
95年以前だと高度経済成長の時期を含むからだ、ということがあるにせよ、輸出比率を拡大したからといって、経済成長率が高まる、とは安易には言えないのではないか、ということです。

現実に、03年以降、輸出拡大期において、多くの国民にとっては「実感なき回復」でしかなかったわけで、賃金上昇を伴わないものであった為に、大企業中心の輸出企業だけが儲けたかもしれませんが、成長率は低いままでした。はっきり言えば、思ったほど大したことがなかった、ということです。


さて、戸堂教授は今の日本で20兆円クラスの輸出増加要因といいますか、潜在力のある企業なりセクターなりがある、ということを支持するでしょうか?日本の中小企業の力を発揮するとして、全部が海外に出られるわけではないでしょう?一部ですよね。すると、それら企業の輸出増加の効果というのが、10兆円なり20兆円なりないと意味ないですね。それがあったとしても、08年の輸出量と大差ない程度かもしれませんよね?本当に、そこまでの競争力が、海外未進出の中小企業の中に眠っていますかね?


だとすると、08年くらいの水準に貿易量が戻るとして、成長力の大きな原動力となり得るかといえば、結構難しいのではないか、ということです。もしそうであったなら、05年以降の成長率がもっと高まっていてもよかったのではないか、と思いますね。


いずれにせよ、この戸堂とかいう東大教授の論というのは、全くお話にならないレベルのものです。
NHKの論説中のどこにも、「TPP参加を正当化できる根拠」は示されていない、ということです。

東大も堕ちたものですね、何度も言いますが。
東大教授で、この程度ですか(笑)。終わってるな。

日本の大学教育はどうなっているんですか?