未だに「交渉ごとなんだから、参加してみて、嫌だったら止めればいい」みたいな、安易な意見を言う人がいるようだ。
まあ、それが国際交渉のエチケットだ、とか、国際交渉でのお約束ごとだ、とか本職の専門家が言うのなら、そういうもんかな、とは思うが、それが本当にTPPでも通用するのかどうかは、疑問である。
どうしてなのか、って?
その理由を書いておく。
誰が「離脱は困難」と言っていたのか、というのが問題なんだよ。
>http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111024/biz11102417370014-n1.htm
国家戦略会議の一員であるはずの、米倉経団連会長曰く、
「途中離脱することはありえない」
と断言していますわな。どこの馬の骨とも知れぬ人間が言っているわけではないことくらい、誰でも判りそうなもんですよね。
日経新聞記事でも米国側意見として、「途中離脱論を牽制」となっていますわな。読売新聞記事でもそうですね。
>
http://ceron.jp/url/www.yomiuri.co.jp/world/news/20111029-OYT1T00287.htm
元記事が探せないので代用しておきましたが、「離脱すればいい」なんてのが現実的に可能なのかどうか、考えが及ばないのでしょうかねえ。いや、勿論、米倉経団連会長が何と言おうが、米国高官が何を言おうが、「そんなの関係ねー」とばかりに日本の都合で離脱しますよ、と表明してそれを確実に実行できるという担保なり約束なりがあればいいんですがね。
うちのブログみたいなただの個人が言うのではなく、日本を代表する大新聞であるところの、読売新聞や日経新聞が「そう書いている」というのが事実です。離脱なんて、そうそう簡単には許されない、ということが、示唆されているということではありませんか。
米倉経団連会長が言ったのを受けて、藤村官房長官が発言を修正したことを知らないんじゃありませんかね。
>http://alfalfalfa.com/archives/4732923.html
交渉に参加すれば離脱困難となる、とオレが宣言してるわけじゃねーんだっての。「官房長官が言ってる」んだろ。経団連会長や官房長官が、そう言ってるんだろうよ。
交渉もしたこともない、国際条約も国際交渉も何も知らない一般人が適当にあることないことを言ってる、と、それでも言いますかね?
>http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111025/stt11102509480004-n1.htm
玄葉外務大臣も、途中離脱は簡単ではない、として、産経新聞曰く、
『交渉途中で離脱すべきではないとの考えを示した。』と言ってるではありませんか。
官房長官と外務大臣が揃って「離脱は困難、すべきでない」ということを言ったとなれば、誰がどう考えたって「ああ、離脱は困難ということなんだな」と受けとるんじゃないですかねえ。
国際交渉の現場も知らなけりゃ、交渉の約束事も知らないし、国際関係の常識だって知る立場にない、当方のような一般国民からすると、重要閣僚であるところの官房長官や外務大臣なんかが「離脱は困難だ、orすべきでない」といったような発言をしたり、民間人でも国家戦略会議のメンバーに選ばれるような米倉経団連会長といった重要人物が「途中離脱はありえない」と言ってるのに、「いやいや、交渉なんだから嫌なら離脱できるよ」という何の保障も確約もない意見を簡単に信頼できるわけないっての。
交渉に参加してしまえば、離脱できなくなってしまうかもしれない、と判断する方が普通なんじゃないですかね?
閣僚や米倉発言を知らない人なら、交渉だから拒否すればいい、みたいな意見を簡単に信じるのかもしれませんが。要するに、無知であるからこそ、「嫌なら離脱すればいい」という意見を受け入れやすい、ということなんじゃないですかね。いや、あくまで形式的にいえば、条約批准をしなけりゃいいだけですから、議員が否決すればいい、ということには違いはないですよ。
だけど、韓国を見てごらんなさいな。
国会決議は、大混乱に陥ったでしょう?発効だって、大幅に遅れたじゃないですか。
米韓FTAの改正か破棄というのが、大統領選挙の争点とまで言われてるじゃありませんか。
手続きが進み出すと、国会で否決すればいい、なんてのは簡単にはいかなくなる、という見本と見ることもできるんじゃないですかねえ。
ま、そういう現実を見ないふりをしているのか、見たくないから拒否しているのか、無知だからなのかよく判りませんが、いずれにせよやっぱり「甘く考えている」としか思えないわけですわ。