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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

浜岡原発停止の確約問題

あまり目立ってなかったので、気付きませんでした。
菅政権時代の浜岡原発停止要請というのが、再開を確約していたということらしいですが、この確約内容についての文書は残されているのでしょうか。

http://mainichi.jp/select/news/20120512k0000m020141000c.html

(以下に引用)
 中部電力浜岡原発静岡県御前崎市)が運転停止した昨年5月、中部電が当時の海江田万里経済産業相から得たとされる「運転再開の確約」について、枝野幸男経産相は11日の閣議後会見で「そうした約束は聞いていない」と述べた。
 中部電はこの確約を浜岡再稼働の根拠の一つとしているが、経産相の発言によって事実上のほごとなりかねず、再稼働は困難さを増しそうだ。
 「確約」は、津波などへの安全対策が完了し、原子力安全・保安院の評価・確認を得た時は運転を再開できる−−との内容。海江田3件経産相(当時)が直接約束した、と中部電の水野明久社長が昨年5月9日の記者会見で明らかにしていた。
 これに対し、当時官房長官で、昨年9月に就任した枝野経産相は11日、「(就任時に)そのような引き継ぎは受けていない。(当時の)官房長官としても、そうした事実は把握していなかった」と述べた。
 「確約」を巡っては、現政権も拘束されるとする中部電に対し、菅直人前首相は毎日新聞の取材で「(中部電の)ある種の希望」と話すなど、見解の相違が表面化している。【森有正、丸山進】

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中部電力としては、大臣がまさか約束を破るなどとは思ってもみないでしょうから、口約束であろうとも信じて浜岡原発の停止要請に応じた、ということなのでしょう。
気持ちは判らないでもありません。国とか行政がペテンを働くなどとは、普通は考えませんから。けれど、民主党に限っては、ペテンの手法がごく普通です。八ッ場ダムにしてもそう、朝霞公務員宿舎もそう、消費税増税もそう、ガソリン税子ども手当もそう、一事が万事、ペテンなんですから。そういう連中の言い分を信じることの方が、はるかに危険ですわな。

松永事務次官が銀行団に緊急融資をしてくれと「政府要請」を勝手に行って、その時に恐らくは「3条但書適用」の旨か追加融資の焦げ付き(つまりは東電破綻処理)という事態にはさせないといったような言質を与えたものと思う。だからこそ、「3条但書適用」をしろと、経団連全銀協も狂ったように言い募っていたわけでしょう?「松永次官の口約束」が反故にされたら、銀行幹部は融資の責任を問われるから。2兆円もの融資が飛んだら、そりゃあ責任問題にも発展しますわな。


なので、中部電力の再稼働確約とやらも、実際のところは海江田大臣の約束というよりも、松永次官あたりが「大臣が確約すると言わなければ、中部電力は要請に応じませんよ」とか何とかいって、言いくるめたのではないかと思う。実質は、松永次官が「大臣の約束だ」と電力会社側に勝手に言って、それをもって大臣の確約と称しているに過ぎないのではないか、ということである。

本気の本気であれば、電力会社とて民間企業なわけで、覚書の一筆でも取るのが筋では。それを、業界と霞が関のズブズブ癒着関係&人的つながりで、根拠の不明確な口約束をしたということではないのか。
曖昧さを維持することによって、官僚と業界双方に無責任体制を作らせ、どちらも責任を取れないからこそ、双方にとって都合のよい願望を実現しようと必死になる、ということなのではないか。

まともな民間企業と行政との関係なのだと言うのであれば、普通は確約書だの覚書だのといった「証拠」を取らないはずがないから。誰が法的根拠もない口約束なんかを証拠とするものか。ビジネスの現場なのだと言うなら、言った言わないを避けるべく顧問弁護士にでも相談して、一筆取らせるであろうに。

そういうのをやってなかった、ということであると、中部電力側の過失(落ち度)を指摘されても有効な反論がないのでは。


現時点では、大臣の確約なんてものは存在しなかった、というのが行政側の主張であるようなので、これを覆すのは容易ではない。裁判でもやってはいかがか。


で、この浜岡原発停止の問題というのは、もっと別な問題を呼び起こす可能性があるのである。それは、認可取消問題だ。


○原子炉等規制法 第33条
主務大臣は、原子炉設置者が正当な理由がないのに、主務省令で定める期間内に原子炉の運転を開始せず、又は引き続き一年以上その運転を休止したときは、第二十三条第一項の許可を取り消すことができる。
以下略

この条文の意味は、主務(経産、文科、国交)大臣は許可取り消しができる、ということである。普通の発電用原子炉の場合、取り消し条件としては、
・許可から5年以内に運転を開始しない
・1年以上連続の運転休止期間がある
ということである。ただし、除外規定として、”正当な理由”があれば取り消しは免れる。

通常、”正当な理由”というのは、裁判でも問題になりがちではないかと思われる。裁判所が「それは正当な理由ですね」と認めるものが該当するので、認められなければ負ける。その明確な基準というのは、大抵の場合存在していない(基準があるなら、条文上で規定できるはずですし)。

例えば経産大臣の非公式要請というものが”正当な理由”に該当するかどうかは、裁判所の判断になるので定かではない。まあ、そうは言っても、形式的には経産省側が運転再開を認めない、というのが運転できない理由なので、常識的には正当な理由とされるかもしれない。
非常に厳しい見解をとるなら、原発事故への安全対策のいくつかが現状において未実施であること(例えば工程表で数年後に実現予定というのは、現時点での安全を損なっているのと同義であるはずだから)は、電力会社の負う原発を安全に運転するという義務を果たしているとはいえない、すなわち義務違反の存在を指摘することはできないわけではない。
債務不履行を言えるのであれば、運転許可が出されないことは正当事由には該当せず(未実施の安全対策が全て実現されれば許可できるであろうことが推認されるから)、許可取り消しを受けることはあっても不思議ではない、ということになる。


よって、浜岡原発の確約問題というのは、許可取り消し問題をも呼び起こし、期限の1年以上経過は確定的なので、反対派などがこれを盾にすることも可能になるかもしれない。