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続・アメリカのGDP統計って何なの?

世界に冠たる俺様国家、アメリカ合衆国の場合には、どうも怪しげなことが多い。以前にも取り上げたが、GDP統計の数値の操作の意味が判らない。中国の統計は胡散臭いとかの記事を目にするが、アメリカだって、大差ないんじゃないの?


アメリカで5年毎の改定の際、名目GDPと実質GDPを同額に揃える意味って、何なのでしょうか?
そういう操作は、全世界中で行われている、標準的な経済学上の決まりとか、会計学的な決まりとか、そういうものなのでしょうか?
だとすると、日本のGDPの数値が揃えられないことの理由が判らない。


前回記事(http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/eddf01b6334de782ecfab18557081ee6)でも取り上げた、wikipediaGDPを見れば、一目瞭然であろう。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%81%A8%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%94%BF%E7%AD%96


2000年時点で、実質、名目ともに9兆8170億ドルに揃えられているわけである。


これで見ると、90年時点の名目及び実質GDPは次の通り。


 ○90年(00基準)  名目 5兆8031億ドル
           実質 7兆1125億ドル


ところが、最近のものだと、違うわけである。
(参考:http://www.bea.gov/national/index.htm#gdp


 ○90年(05基準)  名目 5兆8005億ドル
           実質 8兆0270億ドル


これだと、05年の名目と実質が同じに揃えると、という話になっており、数字がいくらでも操作可能ということだな。これは、どういうことか?


インフレ率がどうの、という話であると、名目値と実質値との比較ということになるが、これは次のようなことだろうと考える。
それは、05年水準のドルで過去を見ると、現在価値が相対的に安くなっているので、「過去のドル」表示は今よりも高くなってしまう、ということである。


仮に、2000年時点のドルを、”d”と書くものとする。2000年当時の1000ドルは「1000d」と表記することにしよう。同じく、現在のドルを”D”と表記すると、現在の1000ドルは「1000D」と書ける、という意味である。


すると、90年当時に発表されてきた統計値と、現在から90年を振り返ってみた場合の統計値は異なる、ということである。具体的には、2000年基準だと、90年の実質GDPは7兆1125億ドルだったので「71125億d」ということになる。

これが、05年基準ドルだと8兆270億ドルだったのであるから、「80270億D」となるわけである。これらは、実質なのだから、本来的には等価であるはずだ。何故なら、90年の経済活動はパラレルワールドでもない限り、一つしか存在しないからである。同じGDPである、ということ。


すなわち、
  71125億d=80270億D

となり、過去の「ドル」(ここでは00年のドルだ)と今のドルは別物である、ということだ。整理すると、


 d≒1.129D


となって、現在みんなが「ドル」と呼ぶ通貨は約15%減価したものとなっている、ということだ。過去を振り返って、実質GDPの数字を大きいものに変えているのは、長期の経済統計の誤魔化しとも言うべき操作であろう。物価水準がどうの、とかインフレ率がどうの、なんて煙に巻いているかもしれないが、実態としては騙しているのとほぼ同じ行為、ということだな。


だから、所得が20年前に3万ドルだったものと、今の4万ドルを比べる時には、同じように「ドル」と呼ぶけれども、それは実質的に別な大きさを持つ通貨ということだ。ドルの価値は、大幅に減価している、ということだ。そして、実質GDPの大きさは、発表当時と違う大きさにすることで、名目値だけを見てもらうように小細工しているのである。本来、GDPの成長率や大きさというのは、名目値ではなく実質値にこそ比較の意味があるはずなのに、それをされると困るのはアメリカだからだ。


特に、借金の大きさやGDP比というのは、「対名目値」が大事なのであり、借金の膨張も名目値で増加するからだ。


現に、アメリカ経済の大きさなんて、実質規模で見れば、2010年時点で13兆630億ドルでしかない。名目値であると、14兆4990億ドルとなって、90年からみると、名目値では2.5倍に膨張させているが、実質値では1.627倍でしかない。


このように、アメリカの姑息な作戦というのは、本当は経済規模が小さいにも関わらず、それをいかに大きく見せるか、ということに腐心しているのだ。当方の手元にある、昔の資料がある。1978年時点でのアメリカの一人当たり国民所得が8744ドル、というものだ。国民所得であると名目GDPよりも大きくなる(海外分が含まれる)ので、正確ではないが、1980年当時であるとそのくらいでしかなかった、ということである(参考までに、日本は一人当たり6797ドル)。
78年当時の一人当たり名目GDPが10307ドル(00年基準)だと、名目GDP2兆2947億ドルであるから、人口が約2億2263万人であるということになる。


そうすると、当時のドルで一人当たり8744ドルだったのなら、当時の国民所得(ないし名目GDP)は約1兆9467億ドルであった、ということだ。1980年当時のドル価値は、現在の約1.1788倍であった、ということ。00年ドルより05年ドルが減価しているのも明らかとなったが、90年、80年と時代を遡ると、減価の程度はもっと大きいだろう。それは、当時に発表されていた名目GDP統計の数値は、今よりもずっと小さかったはずだろう、ということを意味する。
もしも一人当たりGDPが8744ドルだったとすると、名目GDPが2兆2947億ドルとなるには、人口が2億6233万人必要になってしまう。人口が2億5千万人を超えたのは90年以降なので、矛盾が生じる。


要するに、GDPの発表当時の数字を後になってから、いじくり回して大きく見せているのと同じ、ということである。


アメリカの経済規模は、実質GDPで13兆630億”05年ドル”でしかない。これが「05年ドル」ではなく、「80年ドル」から見れば約11兆ドルちょっと程度である、ということだ(13兆630億ドル/1.1788=11兆816億ドル)。当時の10000ドル分は、今の11788ドルに匹敵するので、給料の実感も違って当然だろう、ということになる。今の5万ドルの収入は、かつての42416ドルであり、昔の5万ドルと今の5万ドルでは比べるべくもない。この他に、物価上昇分があるわけだから。


例えば、1リットルのコーラが80年には1ドルで、現在3ドルだと、同じ5万ドルの収入でも目減りしている、ということ。日本だと、500ミリリットル瓶のコーラが1本100円か150円くらいだったと思うが、今でも100〜150円くらい(自販機で150円)だから、大差ない。80年に持ってた1万円は、今使っても、同じ程度には使える、ということになる。


まあ、アメリカさんの場合には、どうせ水増しでもしないと、借金も返せないし、年金も払えない、といったような裏でもあるのかもしれない(笑)。過去の数字をこっそりと書き換えてしまう、というヘンな方法は止めるべきだろうね。


それから、購買力平価でのGDPってやつね。これも別な記事に書くことにする。