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橘玲のマスコミ「大誤報」批判は全くの論外

この方の論というのは、結構ヘンなのがある。以前にも指摘したことがありますが。で、また発見した。

http://www.tachibana-akira.com/2012/11/5031


橘氏曰く、

三者委員会の調査と東京地検の不起訴によって、「かんぽの宿」問題が政治的なでっち上げであったことが明らかになりました。おかしな大臣によるデタラメな発言によって日本じゅうのメディアが大誤報を連発しましたが、いまだに一行の訂正もされていません。だとしたら、おかしな研究者がデタラメな実験をしたとしたも、たいしたことではないでしょう。

だそうです。


橘氏が「政治的なでっち上げ」と呼ぶなら、もっと具体的に何がどう「でっち上げ」で、マスコミ報道のどういう部分が「でっち上げ」なのか指摘するなり、立論すべきだろう。例えば、総務大臣発言の「(売却額)109億円はおかしい」という報道のどこがでっち上げなのか、説明できるのだろうか。それとも、特別背任等の告発に関する報道のどこがでっち上げなのか、その論拠を示すべきだろう。誤報と言うからには、真実ではないことを報じた、ということについて、橘氏が立論できるはずだ。


東京地検が不起訴処分としたって、「109億円が正しい」ことの立証になんてなってないし、西川社長が下した売却の決裁が妥当であったことの裏付けにもなっていない。何より、橘氏の断じる「誤報」の根拠となっていない。



wikipediaによれば、西川善文三井住友銀行頭取が日本郵政の社長に就任したのは、06年1月ということらしい。そうすると、06年3月期以降に発表された決算というのは、
 05(平成17)年度
 06(平成18)年度
 07(平成19)年度(公社半年、日本郵政半年)
 08(平成20)年度
ということである。
この間にあった疑義が本当に解明されたかと言えば、それは未達であろう、というのが当方の理解である。



この記事「かんぽの宿」疑惑の波紋〜8 )でも取り上げたが、会計検査院報告からは、何らかの違法行為が存在していたのではないかと疑わせる部分があったわけである。


会計検査院報告>http://report.jbaudit.go.jp/org/pdf/h220317_yousei_1_1.pdf


西川社長時代にどうしてそんなことになったのか、と疑問に思う点について指摘する。疑問点はいくつもあるわけだが、とりあえず簡単なものを挙げてみる。


○疑問1:不動産鑑定業者数が激減したのは何故か?
05年度の73業者から、18年、19年、20年といずれも3業者となっていた。


○疑問2:減損処理が毎年行われたが妥当なのか?
05年度の減損処理の結果が妥当なのだとすれば、その後、連続でそれほど多額の減損処理を必要とする合理的理由は何か?


○疑問3:西川社長が取締役会に諮らず売却契約の決定していたのは何故か?
普通、100億円以上もの資産売却になる場合、会社の組織として社長が独断専行で決めるものなのか?


○疑問4:売却直前の決算で物件費が約50億円も増額されていたのは何故か?
例年だと、約80億円前後で推移していた物件費が、直前に限っては約50億円多い130億円超となっていた。売却が決まっている施設に、それほどの多額投資を行う理由とは何か?


当方の疑問を特捜部風に「一つの絵」にするなら、

当初から資産売却方針は決まっていたのであり(実際、公社移行時から進められてきた)、売却先と額の問題というのがあるかもしれない、そうすると、会計処理を意図的に操作して、減損処理額を膨らませ、簿価を恣意的に引き下げることができ、その結果として買取側企業は安価に手に入れることができれば、実質的に「利益供与」と同じ結果をもたらすことが可能、つまり郵政民営化に伴って巨額利益を手にする企業が登場することもあるかもしれない、

ということだ。


120億円で売却するホテルに50億円もの設備を付けて売るかね?
だったら、50億円を投じないで、70億で売った方がうれやすいかも、と考えてもいいのではないか?
ヘンですよねえ?


それから、橘氏は減損処理について、きっと明快な説明ができることだろう。
例えば、「ラフレさいたま」の問題というのがあった。簿価が約15.6億円しかなかった、という件だ。

減損処理で、05年度末には113〜117億円とされていたものが、わずか数年で15億円まで減価してしまうことの、合理的理由を示せるはずだろう。これは、第三者委員会の人たちも、会計処理は適正だったと述べたのであるから、説明可能でなければならない、ということだ。

05年度末「115億円」 →08年度初め「15.6億円」

実質的な間は2年しかないわけで、その間にこれほど重大な変更があったことの合理的理由を示せなければならない。できないと、それは会計の虚偽ということだ。不動産鑑定の虚偽か、会計処理の虚偽ということになる。

15.6億円のうち「ラフレさいたま」の評価額は、土地6.6億円だった。この理由を示せるはずだろう。5500㎡の土地代がこの金額ということになると、単価は120000円だ。

当時の算定根拠が判らないが、最近のものならある。

さいたま市新都心の土地についての鑑定評価額>http://www.city.saitama.jp/www/contents/1340015365502/files/2405houkoku.pdf

 中央区新都心1番2及び3 : 836000円/㎡


住所は極めて近く(新都心3番2)、数百メートルほどしか離れていない。立地は似ている。それで、鑑定評価の単価が7倍も違うものなのか。
路線価だって、高々12万円の単価ではあるまいに。それなのに、こんなに土地代が安くなってしまうのは、どうしてかな?


土地の売却じゃない、事業も一体だからだ、というような出まかせを言う連中はいるが、それは不動産鑑定評価額ではないし、「ラフレさいたま」の「減損会計処理」の適正を言えるものでもない。会計上、明らかに異常な数字の操作があれば、それは虚偽記載ということになる。


日本郵政が依頼したという第三者委員会というのは、

 川端和治弁護士、黒田克司公認会計士、澁井和夫不動産鑑定士

だったわけだから、彼らがマスコミの前に出てきて、ラフレさいたまの減損会計処理について、数字で計算方法などを全て明らかにして、解説してくれればいいだけなのだ。
国会に呼ばれたが、残念ながら、彼らは誰一人出席などしなかったわけだが(笑)。数字の根拠を問われると、大変マズイ、ということになるからですかな?


まさか、総務省の数々の委員を歴任している川端弁護士が説明できない、とか、公認会計士協会副会長の黒田公認会計士が数字の根拠を言えない、とか、不動産鑑定額が毎年毎年違うということについて澁井不動産鑑定協会常務理事が説明不可能、なんてことになったら、日本の権威とされてきたものの多くの出鱈目が明らかになってしまい、誰からも信用されなくなってしまったら、大変なことになる、などという理由ではあるまい。


そして、この数字を認めたのが、承継財産評価委員会のメンバーだからな。民間人もそうだが、問題なのか総務省財務省の幹部の官僚たちが入っていたことだ。彼らの責任問題となったら、そりゃあ大変だから、官僚サイドも民間人の偉い人たちにしても、みんな「明るみに出たら、まずい」という方々ばかり、ということなんだな。だったら、隠そうと必死になったとしても、不思議でも何でもないと思うんだけれども。


あと、川端、黒田、澁井の第三者委員会が西川社長が取締役会に諮らずに、社長独自で決裁していたのは、「不動産売却は社長権限でもいいから」みたいに擁護していたわけだが、それは自己矛盾だろう。

何故なら、「かんぽの宿」等の施設売却が何故評価額よりも大幅に安いのかという理由として、「不動産の売却ではないから」ということを言っているわけだよ。すなわち、不動産処理ではなく、「事業の売却だ」と言っているわけ。ならば、社長決裁そのものが無効か、本来は取締役会に諮るべきことなのではないか?それが、不動産売却ではなく、事業の売却だ、ということだろうに。営業中の施設を事業全体として売却するのだから、社長独断の決裁は不当だったんじゃないですか?


それから、さも正しいかのように橘氏も言ってるが、「事業売却と伴に雇用維持もついていたからだ」という理由がある。売値が安くなるのは、しょうがないんだ、と。


その雇用維持は、どの程度、その効力が及ぶと思うか?
会計検査院の資料によれば、以下の通りだった。

『新設分割会社に承継される正社員の数を550人以下を目処とする。承継された正社員のうち対象会社において引き続き雇用されることを希望する者については、新設分割後も雇用させる。新設分割後少なくとも1年間は新設分割日における労働条件を維持させるものとする。』


700名もの正社員雇用を維持するなんて、一言も書かれてないの。「目途として、550人以下」だ。給料高い人間を切って、退職まで年限の残り少ない人とか給料の安い方の人を残せばそれでいいんだよ。550人以下だから、500人でも契約上は無効とも言えないんじゃないですかな。

しかも、労働条件は1年継続すれば、それ以後は変更してよい、ということになっているわけ。だから、年収500万円の人を正社員として雇って、労働契約の期間を1年後に見直し、として、条件交渉後に希望する人は「引き続き勤務を継続してもいい」ということにしておけば、いいだけなんじゃないですかな。例えば400万円ということにできるんじゃないか、という話だ。

1年経ったら、給料の見直しをして、大幅に引き下げてもいい、ってことだよ。その上、条件見直しを同意できない人は、550人の中に入れなければいい、って寸法なんだからさ(笑)。「どうしますか?」って聞かれたら、多くの人が切られることを怖れて、労働契約に同意してしまうことだろう。だって、行き先がなくなるから。クビになるよりはマシ、と思って条件引き下げを受け入れるんじゃないですかねえ。


で、圧倒的多く(2700人くらい)の従業員は契約社員やパート等の人たちだから、1年を経過すれば、いくらでも労働条件変更なんかできる。嫌なら、他から募集して調達すればいいだけだから。なので、雇用維持なんて話は、殆ど有名無実。効力の及ぶ期間にしても、1年かそこらでしかないわけ。宮内さんともあろうお人が、そんな「お情け、温情ビジネス」なんかやると思いますかね?


事業継続にしても、売却凍結期間は2年だったか、そんなもんでしかない。しかも、特別な事情があれば、売却してもいい、ってことだから、実質的には「採算がかなり酷いので売ります」ということで、処分しても契約違反にはならないんじゃないですかねえ。そうすると、非常にお安い値段で不動産を手に入れ、いらない物件は1万㎡を超える首都圏社宅の土地なんかと同じく、売却処分でもすれば、数十億円は現金回収ができてしまいますね、きっと。


当方の見解としては、上記疑問点について合理的理由の提示がない以上、「かんぽの宿」等の売却問題は、未解決のままということですな。


・川端弁護士、黒田公認会計士、澁井不動産鑑定士からなる第三者委員会の報告書は信頼に値しない=疑いが残り続けているから
会計検査院報告の方を信ずる)
東京地検はもっと信頼なんかできない、信ずるに値する組織ではない


これが、当方の意見です。



話を戻せば、橘氏誤報の内容を具体的に提示すべきだろうね。
どうせ、できっこないと思うけど(笑)。