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アニメ『火垂るの墓』・節子の死因についての私見

ちょっと話題になっていたので。
http://matome.naver.jp/odai/2138526434750414401


どうやら、左目からの「有毒物質摂取」によるらしい、という説のようである。そういう見方もあるのか、とは思ったが、当方はそのようには思えなかった。

以下、あくまで素人考えに基づく私見を述べたい。


1)有毒物質摂取の矛盾点

とりあえず、左目からの有毒物質吸収によって、死因となったと仮定しよう。その有毒物質は不明だが、「有毒X」と呼ぶことにする。
この「有毒X」の由来だが、「空気中に存在する有毒X」が雨に混じって降ってきた、と。それが眼球に接触し吸収されてしまった、と。

◎矛盾点1:急性症状が見られない
一番はこれだ。重金属中毒とか、不明物質だとしても、摂取後に症状が出るのは普通であろう。おばさんの家にいる間に、それらしき兆侯は見られていない。遅発性の何か、だろうか?
通常は、そうはならない。
簡単な例が、「お酒の飲み過ぎ」だ。物質摂取(飲酒)後、猛烈に症状が出る。中毒症状もはっきり出てくる。が、時間経過と共に、症状は消退する。それは、代謝されてしまうから、である。

「有害X」は重金属のように代謝されない物質であるとしても、急性期に症状が出ないのに、後日しかもかなりの日時が経過してから症状が出る、というのは考え難い。


◎矛盾点2:蓄積や他の摂取経路の可能性が乏しい

もし数日〜数か月後に症状が出る場合には、有害物質の継続的摂取と蓄積という可能性が考えられる。それならば、「有害X」が左目に入って以降にも摂取されており、それで最初の数日は症状が出ないが、後日ある水準(普通は中毒量)に到達してから症状が出る、というのなら、辻褄は合う。

その場合、雨に混じる→飲料水に汚染→経口摂取継続→中毒量に到達、といったことが必要になるので、左目に有害Xが取り込まれても致死的ではないはず。その上、同じ水を摂取している、兄やおばさんの家の人々、近所の人々、などにも同様の症状が出ても良さそうだが、それは見られない。

また、左目からの摂取量はごくごく限られており、それならば雨に混じって経口摂取や肺からの摂取(呼吸による吸引)の可能性の方がずっと多い量であるのは珍しくない。目につく量は大したことはなく、他の経路の方が多く取り込まれて当然ということ。


分かり易く言うと、微量で致死量となる青酸カリのようなものであれば、その物質を吸収した時点で症状が出て死亡する。有害物質に起因するからだ。とり込まれた物質がその量でもって、死に至るのである。「有害X」がそのようなものであったなら、急性期に症状が出ないことの説明が困難。


つまり、急性期の症状、結膜由来の摂取量より経口・肺・皮膚の摂取の量の方が多いはず、という2つの点で、「有害X」の説は有力とは思えない。

あるとすれば、「有害X」摂取→体内で長い時間で代謝(分解)される→その代謝物「有害X’」が致死的作用を有する、というような場合だろうか。或いは、「有害X」の存在下では、栄養障害・代謝障害・重要な酵素系の障害などが起こる、というようなものだろうか。そのような物質を知らない(思いつかない)。体内から早期には排泄されない、という条件がある上に、代謝時間が数日から数カ月単位で必要、だから…。
矛盾点の方が多いのは確実。


2)考えられる死因は何か?

◎皮膚症状:
かゆみ、発疹、などが描写されていたので、いわゆる「とびひ」のようなものか、発疹チフスのような感染症であろうか。背部や手足など、かなり広範に出現していたので、そういったものがありそうな気が。


感染症として:
恐らく、赤痢チフスのような感染症であろう、というのが普通の考え方ではないかと思う。当時、若年層に多かったしね。ただ、高熱にうなされての、敗血症ショックの典型のような描写は記憶にない。また、近くの医院に受診した時にも、「栄養失調から来る…」みたいな診立てだったはず。なので、敗血症までには至っていなかったものと考える。本格的にショックだったら、立って歩けないだろう。小児なので、40℃近い高熱になるのは珍しくなく、火が出るような熱さだから、兄も額を冷やそうとするはず。
むしろ、そこまで高い熱ではなく、37〜38℃程度の微熱がダラダラと続いていたのかもしれない、とは思う。熱にうなされたようになって、幻覚みたいなことを言っていたのは、そのせいではないのかな、と。


当方の見方は、ずばり、以下だ。

年齢からすると、4歳くらいではないか。最大でも6歳と見る。免疫能が低い時代だ。兄は14歳程度であるように思われ、免疫能は最大に向かう上り坂の途中。従って、節子と同じ食生活や住環境でも耐えられるが、節子は免疫能が低いが故に感染症には圧倒的に弱い。

皮膚症状は、「とびひ」と考える。基礎的に栄養状態が悪く、洗う水がないので創部は二次感染を繰り返し易い。なので、かゆいから掻く→さらに感染域拡大、ということだろう。住居移転直後には見られてなかったので、栄養状態悪化(食糧なくなって以降)に伴う免疫力低下が惹起したものと思う。

下痢症状が続いていた理由だが、これが赤痢ではないかな、と思う(低年齢発症もあう)。水が不潔である、住居移転後の便所の区別が悪い、従って感染機会が大幅に増大したものと思う。当初はまだ体力があったので、軽度の下痢だったかもしれないが、それほど重篤化しなかった為に、微熱が継続し慢性的な炎症(感染症)が持続することとなった。それが節子の基礎体力を奪い、更なる免疫能低下をもたらした。

下痢症状の継続は脱水や電解質異常をもたらした。


節子がグッタリして以降は、高熱という感じでもなく(従って敗血症およびそのショックの可能性はやや乏しいと見る)、けれど無呼吸と長く深い息を吐いており、多分チェーンストークス呼吸ではないかと思える。
脱水は循環不全をもたらしうるし、電解質異常も同様。胃腸は栄養の吸収がほとんどできなくなっており、食欲すらなくなってしまった。死期が迫っている、ということでは。かき氷やスイカのような、ちょっと冷たくて、吸えるものだけを口にするが、食べることはもう無理だった。


免疫力低下から、感染症赤痢とびひ)となり、低栄養+脱水+電解質異常+循環不全、ではないか、ということだ。敗血症のようなハアハア浅い速い呼吸とか高熱にうなされたり痙攣したりすることなく、静かに眠るように死んでいったのは、そういうことではないかな、と。感染症が致死的なら、ウォームショックであってもおかしくないように思えるので。



そういうわけで、有害物質が眼球について死んだ、という説には、ちょっと疑問だな、と。



でも、見ると毎回泣くよ、本当に。