怒りのブログ別館

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無限連鎖講における不当利得返還請求

遅れましたが、先日出された最高裁判決について、書いてみたいと思います。

26年10月28日>http://kanz.jp/hanrei/data/html/201410/084582_hanrei.html


これに類する検討をしたことがあって、08年当時に書いた記事では破産法適用ではなく、会社更生法ないし民事再生法でした。


http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/bcb0526924bcdbd6066a550a64bb0f20


参考:
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/6b178a23ac055525a456617c32b5918b
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/aa9d4e50d65300e328669d2782158796



特に関係がありそうな部分としては、例示の部分でしょうか。

(再掲)


ある壷販売会社Aがある。悪徳霊感商法により壷を販売し、不当利得を得ていた。この壷販売以外には、こけし製造も行っていたが、こけし製造は通常の合法事業であった。ここで会社Aが会社更生法を申請する場合を考えてみる。関係者として、壷を卸していた壷業者Bは会社Aに未払い代金を100万円請求しており、こけし販売会社CはAにこけし代金として30万円を払う予定になっていた。
更に、悪徳霊感商法の被害者Dが現れたとしよう。Bは債権届出をしていたが、Dは知らずに届け出していなかった。Dは霊感商法に引っ掛かったので、壷購入代金の20万円を返せ、と申し出た。

さて、通常であれば、Bは返済を求めることができるが、Dは届出してないので請求権はない。会社資産やCから受取る30万円は一端凍結され、更生計画に従って債権者に分配されてしまうだろう(今は債権者Bしかいないけど)。Dは泣き寝入りせよ、となってしまう。


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本件ねずみ講の場合であると、業者Bに該当する部分が既に「支払いを受けていた人」、つまり被上告人ということになるかと思います。会社の違法な営業活動によって利益を獲得した、という意味です(例示の場合だとその利益が債権ということです)。


事件の整理しやすくするため、次のように表記するものとします。
・破産法の適用する法人=ねずみ講会社
・配当を受けた人=幹部会員
・債権を持つ被害を受けた人たち=被害債権者
破産管財人


ねずみ講会社が払った配当金は、そもそも不当利得と呼ぶ性質のものであるから、これを幹部会員の個人の利益と認定してしまうのは、問題であるということであろう。

本件配当金の原資は、大勢の被害者たちの拠出したお金であることは疑う余地がなく、まさしく不当利得に該当するものと言ってよい。
であるなら、民法703条により受益者たる幹部会員は返還義務を負う、と考えるべきである。


民法 第七百三条  
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。


もし返還できないとした場合には、破産法適用によって、本来的には「不当利得」であったものが、裁判所が幹部社員にその所有を自動的に認めることとなってしまう。多数の被害者の損害と引き換えにして、幹部社員の不当利得をなすことを合法化してしまう、ということである。これは認め難い、と。


幹部社員にとっての配当金というのは、民法703条にいう「不当利得」であり返還義務を負う。管財人は幹部会員への請求権を有する、というのも妥当と考える。
この返還という行為が、破産者の債務減額につながるという「破産者への利益」を与えるものであるから認められない、というのは、やや無理があるように思われる。返還の効果を、あくまで破産者と幹部会員の中だけで見ればそうだが、破産法の趣旨は、補足意見の説示通りに『債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」こと』である。
本来的には、幹部会員に配当される以前に、ねずみ講会社に資金拠出した人々の持っていたお金であるから、配分の適正化を考えれば被害者に優先的に返還すべきと言える。会社更生法の適用例を考えた場合でも、共益債権という考え方ができるのではないか、というのと似た考え方である。


破産者の損得をまず考えるのではなく、本件破産の清算に関して、どのように行うのが公平か、適正と言えるのか、という視点からすると、最高裁判決は至極妥当なものであると思う。