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京都府警警察官による京大違法捜査事件について

先日、話題になった事件だが、思う所を書いてみたい。「インターネッツの敵(笑)」を自称する京都府警、ではなかったか。昔の記憶は薄れているので忘れたが、ネット界隈からは目の敵に思われているのが京都府警だったような。

で、問題は京都府警の警察官が京大構内に侵入し違法捜査を行っていた、というものである。これについて、名古屋大学の大屋氏が公安の肩を持ちたいようなツイートを連発。どうしてなのかは不明だが、官憲に取り入る方が大学人生が楽しく送れるとか、政府の御用学者として重用され易いとか、費用配分や海外出張などについての特権かお目こぼしでもあるのではなかろうか、と邪推しないわけではないが、そういう先入観はよくないので、下衆の勘繰りということで反省。


http://twilog.org/takehiroohya/date-141106



どなたかが、かつての大屋氏のビラ投函事件における見解を指摘していた。

http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000268.html


マンションのビラ配りが刑事罰を与えられるのであれば、同じく公安の「不法侵入」についても刑事罰で当然であると言うべきではないだろうか。曲学阿世とか言ってなかったか、自分自身で?あっ、言ってない?スマン。未確認だった。


とりあえず、面罵したい気持ちは抑えて、違法性について検討する。

大屋氏は立川ビラ投函事件の時、「いくらマンションに侵入したのは、こういう目的です、と当人が言ってもダメなんだ」(超意訳)くらいに言っていたんだから、今回の公安警察の事件でも同じく「いくら公安がこういう目的で大学に入った」と言おうとも、無効だと主張すべきであろう。それができないなら、最初から立川の事件に対する解説なんかするんじゃないよ、とは思う。


参考までに(参考にも何にもならんだろうけど)、拙ブログの見解はこちら

08年4月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/50ffc498249c5fac90a5a00159f92c06

09年12月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/4ef6b2408b34818a4fb972702afb4e3f



1)不法侵入は成立してるか

結論的には成立しているだろう。京大の管理方針としては、「警察官の入構」は事前通告するという管理方針であったことは明白で、マンションの管理組合が誰に入館を許可し、誰に許可しないかの管理権者の権限があるのと変わらない。京大と警察の事前協定そのものが公序良俗に反し無効とかいう意見が見られていたようだが、管理権者には相応の権限があるわけである。相手が京大ではなく、団地とかマンションであっても同じく令状に基づかない警察官の侵入があれば、ビラ配りと同様に違法確定であろう。違うのは、被害届を出すか出さないか、くらいではないか。


2)「トイレの為に立ち入った」は通用するか

しない。2名の警察官が侵入しているので、2人とも緊急にトイレ利用だったことの証明をする必要がある。トイレの利用は、最低限「京大内でなければ不可能だった」くらいの証明ができても当然で、近隣にコンビニ等があればその時点で目的の違法性阻却をいうことはほぼ無理であろう。また、トイレ利用時間は極めて限定的であり、侵入からの時間経過は不自然だ(学生に演説中に見咎められており、その場にいる理由の説明ができない)。1人ならまだしも、2名ともトイレが必須であったことなど、証明できないだろう。


3)「図書館利用だった」は通用するか

しない。図書館の場所に向かうべきであろう。何故学生の演説現場に立って待っていなければならないのか。その理由を説明できない。図書館利用の為に、学生の演説現場に居続ける理由が説明できない。大屋氏の、立川ビラ投函事件のご意見に従うならば、仮に「当人にとって、そういう目的であったとしても、外見上は通用しない」のだから、違法だろうね(笑)。


4)公安は逮捕監禁罪をいえるか

言うだけならできるのかも(タダなので)。大屋氏のいう、私人逮捕の場合なら、”直ちに”警察に引渡さねばならない、というのがあるとしても、3時間がその”直ちに”の条件を逸脱しているかどうかは、証明できまい。

https://twitter.com/takehiroohya/status/530302070847324160

『まず「逮捕」ではないはず。私人逮捕だとすると直ちに官憲に引き渡す必要があるので、今回の対応はマズいです。「身柄を(事実上)抑えた」ということでしょうが、仮に「追っかけられたので教室に逃げ込んだ」という経緯だと、追跡の正当性が明確でない限り、緊急避難になる可能性が。@morita0』


私人逮捕だと直ちに官憲に引渡す必要がある、という”直ちに”の要件を言えるなら、示してもらおう。

参考までに、条文中に「すみやかに」や「遅滞なく」とは異なる「直ちに」があっても、それが3時間以内とかいう基準を明示している法律など、ただの一つもないと思うが。


具体的に例示してみる。


政治資金規正法 第11条

2  政治団体の代表者又は会計責任者と意思を通じて当該政治団体のために一件五万円以上の支出をした者は、領収書等(振込みの方法により支出したときにあつては、金融機関が作成した振込みの明細書であつて当該支出の金額及び年月日を記載したもの(以下「振込明細書」という。))を直ちに会計責任者に送付しなければならない。


会計検査院法 第27条  

会計検査院の検査を受ける会計経理に関し左の事実があるときは、本属長官又は監督官庁その他これに準ずる責任のある者は、直ちに、その旨を会計検査院に報告しなければならない。


会計検査院法 第34条
 
会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。



市町村の合併の特例に関する法律 第4条

2  前項の規定による請求があったときは、当該請求があった市町村(以下この条及び第五条の二第一項において「合併請求市町村」という。)の長は、直ちに、請求の要旨を公表するとともに、合併対象市町村の長に対し、これを通知し、当該請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第二百五十二条の二第一項 の協議(以下この条において「合併協議会設置協議」という。)について議会に付議するか否かの意見を求めなければならない。この場合において、合併請求市町村の長は、当該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければならない。

4  合併請求市町村の長は、すべての合併対象市町村の長から前項の規定による回答を受理したときは、直ちに、その結果を合併対象市町村の長及び第一項の代表者に通知するとともに、これを公表し、かつ、合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければならない。

9  第五項の規定による議会の審議により、合併協議会設置協議について、合併請求市町村の議会がこれを否決し、かつ、すべての合併対象市町村の議会がこれを可決した場合には、合併請求市町村の長は、合併請求市町村の議会が否決した日又はすべての合併対象市町村の長から第七項の規定による通知を受けた日のうちいずれか遅い日(以下この条において「基準日」という。)以後直ちに、基準日を合併対象市町村の長及び第一項の代表者に通知するとともに、これを公表し、かつ、合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければならない。

12  前項の規定による請求があったときは、合併請求市町村の選挙管理委員会は、直ちに、その旨を公表するとともに、第一項の代表者及び合併請求市町村の長に対し、これを通知しなければならない。

13  前項の規定により通知を受けた合併請求市町村の長は、直ちに、その旨を合併対象市町村の長に通知するとともに、合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければならない。



さて、これら条文中にある「直ちに」が、刑事訴訟法に書かれている「直ちに」と違うとか、それぞれの条文中の直ちには3時間以内とか5時間以内の実施されなければ違法確定といったことの証明をしてもらいたいものだ。大屋氏ならば、きっと3時間を経過していたりすると、「これは直ちに実行しなければならないので、違法確定ですね」と断言してくれるのではないだろうか(笑)。


ああ、ここで、どっとはらい、だったっけ?
大屋氏なら、そうだなという話。



5)私人逮捕は認定可能か

私人逮捕であろう、と推定される。

・入構が許容される人ではないという認識があったこと
・誰何により逃走を図ったこと


刑事訴訟法212条により、現行犯人とみなせる。
現行犯人であれば、私人逮捕は許容される。

現実に逃走したのであるから、大屋氏のいうトイレだの図書館利用だのといった言い逃れも、当然に使うことは不可能。何故なら、そうした正当事由が存在していたのであれば、逃走を図る必要性がないこと、自らの身分なり所属なりを明かすことに何らの問題も生じないこと、があるだろう。

現行犯人であることと、逃走を図ったことにより逃走のおそれがあることは明白であるから、住所氏名が不明又逃走のおそれがあるという刑事訴訟法の規定が適用できよう。拘束後には、司法巡査に現行犯人の引致を実行しているのであるから、形式的には何ら問題がないはずだ。

私人逮捕の要件は満たしているものと考える。


「直ちに」の条件が条文上で時間を規定できないなら、唯一残される論点は、公安警察官の「任意性」のみであろう。
副学長ないし教務職員等の言に従い、任意で教室に移動し留まったのであれば、違法性をあげつらうことなどできまい。


6)職務であることは違法性阻却事由となるか

ならないだろう。いくら警察官の職務上の理由があったにせよ、違法な手段による捜査は、根本的に違法なのだよ。警察だから違法捜査は許されるとか、官憲だから違法手続でも捜査活動は許されるといった考え方は、到底許されるものではない。本当に捜査に必要なら、令状を取ることに何らの問題もないはずだろう。官憲の持つ暴力性がゆえに、権限行使にはより厳格な運用が求められてしかるべき。



京都府警の発表らしいが、愚か者の典型例を見た。


http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20141104000159

(一部引用)

京大は、警官が大学構内に立ち入る場合は府警から事前に通告を受け、大学職員か学生が立ち会う取り決めにしているという。杉万副学長は「事前通告なしに立ち入ることは誠に遺憾。事実関係を調査し、府警に申し入れをする可能性もある」としている。

 府警は「捜査の内容や構内に立ち入った経緯は明らかにできない」とした上で、「捜査の都合上、大学への通告なしに構内に立ち入ることはある。捜査員から事情を聴いている」としている。警官が構内にいる間、京大付近に一時、数十人の機動隊員を乗せた車両が待機した。

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捜査の都合上、立ち入ることはある、と宣言しているよね。
これは、明らかな違法である。立ち入り先が京大ではなく、別の施設やマンションや団地だったら、と考えてみればよい。
警察の考え方の根底には、「捜査活動なんだから、違法性は少々許される」という甘えがあるとしか思えない。究極が「捜査の都合上、あなたの家に通告なしに立ち入ることはある」だ。令状無視、と。憲法違反なんだよ。だが、これは、捜査という大義名分があるなら、「あなたの家」も「京大構内」も違いなどない、ということだ。


官憲の意味不明な権限拡大は、こうやって起こってゆくということだ。


京大がよくて、あなたの家がダメな理由が思いつくかね?
犯罪者を取り締まるためなら、誰の家であろうと大学であろうと、高校でも塾でもスポーツジムでもどこだって同じでは?
つまり、官憲の介入が正当であると認めるということは、どこであろうとも「立ち入って捜査していいです」という同意を与えたに等しいということです。その結果、何が起こると思いますか?



本当に危惧すべきは、官憲による支配体制です。
人々の言論や表現の自由を奪われることです。京大の学生さんだけの問題ではないのです。