怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

三井系マンションの傾斜問題

どうもよく分からない。
この話が、そんなに大袈裟に騒ぎ立てる程の大問題なのか?
まるで「炎上ネタ」をマスコミが放り込んできているとしか思えない。政府が憲法に反して国会を開催しないという卑怯な真似をしていることから目を逸らせる為ではないのか、と思わないでもない(陰謀論好きですから)。世間というのは―殊にネット界隈は―バッシング対象という生贄を投げ込まれた途端に、一斉に叩く側に回るという傾向があるように思うので。


いや、勿論、住人で当事者となれば、大問題だとは思いますよ。ですが、それは日本全体を揺るがすような話なのですかね?
現実に大きな事故とか怪我とか、そういう被害が発生したわけでないなら、東日本大震災規模の大地震を経てさえ、大きな実害もなく健全だったということで、大袈裟に言う程の問題だとは思えないわけですが。


そんな、ごくごく僅かの傾斜が社会の大問題となるというなら、東電の原発事故とその汚染の方が、ずっとずっと遥かに深刻で悪質な問題でしょうに。2センチ程度のズレを生じたからということで、原因も因果関係も分からずとも、「最高値で補償、精神的苦痛も全額補償」みたいなことになるなら、何で福島原発事故後の放射性物質による汚染も最大限の補償をするべきだろうに。
逆に、「そんな程度の線量は健康に関係ない、全く問題ない、生活できるから住んでいいぞ」とかで、賠償金さえまともに支払わなくていい、ってことにされてるんじゃないのか。
「マンション手すりの2センチのズレ」と福島原発事故による「放射線量の上昇、汚染」とでは、どちらが重大問題なのだ?


マスコミの連中もおかしい。


とりあえず、話を戻そう。マンションの傾斜だそうだが、報道からすると「打ちこんだ杭が堅い地盤に届いてなかった」ということらしい。これをまるで犯罪かのように言っているわけだが、本当にそうなのか?杭の長さとか、法令で決まっているのか?


ちょっと疑問に思ったので、少し調べてみました。
非常に複雑な話のようで、専門知識のある人じゃないとまるで分からない。ただ、拙ブログで理解できる範囲で書いてみます。


(1)地盤の条件について

杭の基準については、国交省告示第1113号で決められているようです。
たとえば、こちら。

http://www2.ashitech.ac.jp/arch/osakabe/semi/foundation/low/r93k1113.html


第2や第5にあるような複雑な計算式で算出するということになります。
非常に単純化して言えば、杭の長さが到達してるかどうか、だけが、条件というわけではありません。報道では「堅い地盤」とか「支持層」とか出てたりしますが、法令上では「支持地盤」と呼ぶようです。

・支持地盤とは:N値50以上、かつ杭の許容支持力度2500N/㎡
・N値とは:簡単に言うと地盤の固さを示す値。数字が大きいと強固。ボーリング調査で算出できる

許容支持力の算出は、第5より、第5算出の為の地盤許容応力度は第2より算出できる。


ここで、要点だけ取り出すと、次の式になります。

  Ra=Qp・Ap+1/3Rf

第1項は、杭先端の地盤許容応力度×杭先端の有効断面積である。第2項は細かい計算式から出される地層の先端以外の(支持力に関係する)抵抗値のようなものと思って下さい。


この杭の許容支持力度を左右するのは、大きく分けて「杭先端部の強固さ」と「先端以外の支持力」となります。勿論、先端部の数値はダイレクトに反映されますが、先端部以外は影響度が1/3にしかなっていませんので、杭の先が支持地盤に刺さっているというのが数式の数値を大きくするのに効果的ではあるのです。

しかし、計算式の結果が要求水準を満たしていたのであれば、杭先端の位置が「支持地盤内にあること」は絶対条件ではないのではないか、ということです。支持地盤の強度には劣るかもしれませんが、先端部の地盤の固さがそれなりにあって、そこに至る以外の部分でも支持力がないわけではない、ということです。Rfが要求に達する大きさであるなら、すなわち合計値としてのRaが杭先端が支持地盤に到達している場合と大差ないなら、不法ではないのではないかということです。たとえ杭先端のN値が50以下(=定義から支持地盤でない)だったとしても、Raが基準を満たしているかどうか、では。


(2)最近の検査は正確なのか?

横浜市に三井さんが報告した、ということらしいのですが、8本の杭が支持地盤に到達していないようだ、と。

簡単に言うと、ボーリング調査と物理的調査があります。ボーリング調査はN値を出すのに必要ですので、最も基本的と言えるでしょう。実際のボーリングが一番状況確認をし易いのではないかと。

しかし、先日実施しようとしたところ、ボーリングが困難ということで中断しました。では、支持地盤の深さと杭の位置関係は、どうやって分かったのでしょう?報道からは不明です。


実際にボーリングしなくても、調査する方法があるのです。それが、

・反射法地震探査
・微重力アレー探

です。

計測地点を増やしてS波を計測すれば、その数値からN値を計算で算出できる(=支持地盤の上端の位置(深さ)が分かる)というものです。当方の理解で言えば、実際のボーリング調査が信頼性が高いですが、相関関係からN値を出すというのも、大体の推定値を出せる上に掘らなくてもいいので構造物があるような場合には、便利ではあります(動脈血を実際に採取して酸素分圧を測定するのが正確ですが、実際に動脈穿刺せずともSpO2は測定でき、一定程度には相関的なのと似ている)。


しかし、ここで問題があるわけです。
測定方法が異なれば、必ずしもピッタリ一致する数字が出るわけではない、ということです。理解するには意味がありますが、数学の答案みたいな厳密な答えということにはならないんじゃないか、ということです。かえって、物理探査の数字とボーリング調査では合わないのが普通だろうということです。


それから、東日本大震災の前後で、地層に若干の変化は生じたりはしなかったのでしょうか?
具体的に言えば、支持地盤の深さというのは常に一定なのでしょうか?大きな揺れで隆起したり沈下したりすることはないのか?
建設工事時点と、現在とでは、全く条件は変わっていないのでしょうか?同じ測定結果が出せるというものなのでしょうか?


計測方法の違いとか測定条件の違いで数字が変動するなら、現在の数字をもって過去の工事時点での不当を言えるかどうかは、よく検討してみないと分からないのではないでしょうか。


(3)地盤改良工事はどうなのか?

先の計算式で杭先端部以外の数値を改善する、ということも可能なわけである。地盤改善でRaが改善(地盤改良では恐らくRfを上げる、のだと思う)するなら、たとえ杭先端のN値が支持地盤に到達してないとしても、杭の基準値を満たすことは可能なのではないか、と。

当方の想像で喩えるなら、壁に釘を打ち込む場合に似ている。
木材板と石膏ボードの層があって、石膏ボードまでしか刺さっていないと、釘の支えが少なく抜け易い。硬い木材板の層まで釘が届いていると、しっかりと刺さる、というようなことです。
木材まで到達する釘がない時、どうするか?
石膏ボードに接着する接着剤を釘穴の周囲に流し込んだ状態で釘を打つ、といったことでも、釘を支持することができるのではないか?

地盤改良というのが、恐らく、この「接着剤」に匹敵するような役割をする、ということだろう、というのが拙ブログでの理解です。地質が砂質や粘土質みたいにN値が低いとしても、セメント系固化材を用いて地盤改良が行われていれば、地盤許容応力度は上がるのではないかということです。
(セメントの流量だか粘度数値だったか、偽装があったというようなのが45本というのも、それはどういった意味なのか分からないのですが、地盤改良の為のセメント系固化材のことなのかもしれないなと思いました。うどんのコシですら、その日の気候条件によって変わるなら、セメントも同じではないかと思えますね。硬化速度が速いこともあれば、混ぜてる時の粘りがユルいか硬いかということもあるだろうし、その時の現場にいなければ説明できないことは多々あるのではないかと思えます)


ただ、地盤改良工事を実施したとして、広範囲になっていれば、かいつまんで言うと、硬い地点と柔らかい地点のようなムラができることになるから、事後的に沈下量が変わる可能性も出てくるかも。
ケーキ菓子なんかで、スポンジ部分に固い梨や林檎の固体を詰めてあると、上から圧力がかかった際に、柔らかいスポンジの厚みが多い部分は多く潰れるし、固形物の厚みがある部分は潰れが減少する、みたいな、不均等を生じるかもということ。



以上、(1)〜(3)から、

ア)杭がN値50以上の支持地盤に到達してなくても、基準を満たすことは可能
イ)測定方法の違いで差が出る、現在の値だけで工事時点の不当を言えるか不明
ウ)地盤改良で許容応力度は改善できるが、不均等原因にもなり得るかも

ということで、「支持地盤の現在深さ」と「杭の長さ」が合ってないから不法行為が行われたのだ、ということは、必ずしも言えないのではないかと。


従って、前述の通り、支持地盤の上端位置(深さ)は、本当に不変なのかどうか、測定方法の違いで数字が異なっているのではないか、仮に到達してないことがあるとしても、杭の許容支持力を満たしているなら工事そのものに過失なり不法行為なりがあったわけではないかもしれない、ということである。


更に、沈下について、書く。

一般に、 
   沈下量=即時沈下量+圧密沈下量
ということらしい。
圧密沈下量は、地面内の水や気体が重みで潰れて下がってゆく、というようなことである。漬物の樽での、重石が沈下してゆくのにも似てる(笑)。


即時沈下量は、次の式だそうだ。


即時沈下量=基礎平均荷重度・基礎底面短辺長さ(or直径)・(1-ρ^2)
        ×沈下係数/地盤弾性係数

ρ:地質のポアソン比(地質ごとに大体決まっている)


何が言いたいかと言うと、支持地盤に到達している場合には、地盤弾性係数が大きくなるだろう(※最初、「小さく」と書いていましたが、うっかりミスでした。分母が大きくなる=沈下量が小さくなる、の意でした。訂正します)、ということです。恐らく、ここが一番影響を受けるのではないか。土地の性質で影響される項目がそれだから、です。あと、ポアソン比も変わりますが、数字そのものの大きさが1未満なので全然大したことないです。
最終的に、建物全体で数センチ以内の沈下量となると、地質の差がどの程度の影響度があったかは、かなりの専門家とかじゃないと、分からないのではないかな。
支持地盤そのものの弾性係数が無限大ではないわけだし、N値が何十倍も違っていなかったかもしれないですし、地層全体での弾性係数がどれほど違っていたのか。


具体的に、何が沈下原因か分かっておらず、工事そのものが本当に不適切だったかどうかも分からないのに、全てを杭の長さと深さだけにするのは、どうなんでしょうか。


C型肝炎問題の時にも、一律救済ってあったけど、あれと似てる。
大騒ぎして、限りなくゴネた方が、全額補償してもらえる、みたいな。


その一方では、東電をマスコミも政府も原発ムラも必死で守るから、いくら補償せよと騒ごうと、訴訟が何千何万人から起こされていようとも、大問題になんかされないんだよ。


マンションの2cmズレた問題よりも、汚染地域の人々に補償も慰謝料も満足に払われていないことの方が、百万倍いや百億倍重大問題だろうに