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安倍政権が狙うトドメの一撃

10月に突如として浮上した、辺野古埋立に関する代執行の手続きであるが、これは全く意表を衝かれた。

安倍政権の特徴として、兎に角、強引、これに尽きる。脳みそが少ないせいなのか、やたらと力技に頼る傾向にある。
それが顕著だったのが、暴力的かつドサクサ紛れの、正統性がどうみても欠けているであろう、あの戦争法案の委員会採決だったろう。どんな無法でもデタラメでも、とりあえず「やっちまえ」方式で、何を言われてもどんなに批判されても、これを覆せるだけの”権力”がどこにも存在してないから、何だって「押し切れる」と確信しているのだろう。


拙ブログでの推測を書いておく。

多分、あの戦争法案の政権側防御を担当していたのは、外務省国際法局+国家安全保障局の外務省系だったのではないか、と。そして、内閣法制局とは冷戦状態か、安倍政権としては「信頼できないから他の奴らに頼むことにするわ」状態になっていたのではなかろうかと。


で、法律関係の顧問的役割を担わせられることとなったのが法務省であり、これが訟務局だったのではないかと。基本的に、最高裁系なのであるから、国内法解釈は当然だし、判例にも詳しいはずだから、ということではないかな。


事実上の、内閣法制局ハズシ、というべき体制だな。
なので、定塚誠訟務局長には、「こういう場合、裁判所的にはどのように判断すると思うか?」などと確認したりすることはできるので、違法として訴えられても勝てる、という算段があるなら、それでいいわい、ということになっているのだろう。


そして、これは戦争法案の委員会騒動ばかりでなく、今回の代執行の強行をも招いたのではないかな、と。
沖縄県に対する政府の対抗策として、恐らく防衛省+外務省の幹部連中が「代執行で決めてしまえ」と求めたものではないか。


防衛省は、元々脳みそを使わずに「力で押し切れ」が大得意。
外務省は、米国さまのご機嫌を取り続ける為にも、ここは一つ大きな「手柄」が欲しい、と。

曲がりなりにも、TPP交渉の大筋合意という「アドバルーン」を上げることに成功した経産省には、何としても「負けられない」と。


そんな感じで、「代執行、どうだ、行けるか?」となったのでは。
法務省訟務局は、どういう判断をしたのかは分からない。が、やけに政権側が自信があるようなので、何か策があるのだろう。


新聞記者諸君へのレクも怠りなく、世論工作の根回しも十分、というところか。


10/28 読売新聞社

辺野古代執行へ 誤った県の手続きは是正せよ

米軍普天間飛行場辺野古移設の実現に向け、安倍政権が不退転の決意を示したと言えよう。政府は、辺野古での埋め立て承認を代執行する手続きに入ることを閣議了解した。沖縄県翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しについて、「違法な処分」として、是正・撤回させるためだ。菅官房長官は、取り消し処分に関して「普天間飛行場の危険性除去が困難となり、外交・防衛上、重大な損害を生じるなど、著しく公益を害する」と強調した。埋め立て承認に「法的瑕疵かしがある」とする翁長氏の判断の根拠とされた私的諮問機関の報告書には公平性や客観性が乏しかった。辺野古移設が日本全体の安全保障に関わる問題である以上、政府の代執行手続きは妥当である。
 
都道府県への法定受託事務に関する代執行は初めてという。石井国土交通相がまず、翁長氏に承認取り消し是正を勧告・指示し、応じなければ、高裁に提訴する。勝訴すれば、翁長氏に代わって取り消しを撤回する運びだ。石井氏は、防衛省が申し立てていた翁長氏による取り消し処分の執行停止についても決定した。防衛省は、移設作業を再開し、近く本体工事に着手する。

沖縄県などは、国交相防衛省の申し立てを審査することについて「同じ内閣の一員が審査することは不当だ」と主張する。だが、石井氏は「国が公有水面を埋め立てる場合は、都道府県知事の承認を受ける。私人が埋め立てを行う場合と同様だ」と反論した。法律上の問題はあるまい。翁長氏は、国と地方の争いを調停する総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を請求する方針だ。認められなければ、提訴する構えを見せている。

いずれにしても、政府と県の法廷闘争は避けられないだろう。政府は、名護市の地元3区に対し、市を通さずに振興補助金を支給することを決めた。今年度は計3000万円程度で、防災用倉庫などの整備に充てるという。地元3区は、キャンプ・シュワブに隣接し、基地負担が大きい。稲嶺進名護市長は移設に反対するが、3区には条件付きで容認する住民が多い。この事実は重い。本来、こうした基地周辺住民の意見や要望が尊重されるべきなのに、従来は軽視されてきた。政府が今年5月、地元3区との協議の場を設置したのは、辺野古移設を円滑に進めるための一つの環境整備として適切だろう。

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翌日には、こちらも。


10/29 産経新聞社説

米軍普天間飛行場辺野古移設問題で、政府は翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事による埋め立て承認取り消し処分を撤回する「代執行」手続きに入った。また、石井啓一国土交通相は、公有水面埋立法を所管する立場から、取り消し処分を一時執行停止にした。いずれも、沖縄を含む日本の安全保障を確保し、住宅密集地に隣接する普天間の危険性を取り除く適法な措置だ。これを受け防衛省沖縄防衛局は29日にも埋め立ての本体工事に着手する。安倍晋三政権が移設への明確な姿勢を示した点を評価したい。

地方自治法は、国が知事に事務を託す「法定受託事務」に関するトラブルによって行政が停滞しないよう、代執行の仕組みを設けている。知事による法定受託事務が法令に反し、放置すれば「著しく公益を害する」ときには、高等裁判所での判決を経て、所管閣僚が事務を行うことが認められる。翁長氏は、国が進める辺野古移設に対し、政策的判断として反対している。だが、仲井真弘多(ひろかず)前知事による埋め立て承認を取り消し、対抗することは、法定受託事務からの逸脱にあたる。代執行という字面から、政府による強権的な措置ととらえるのは誤りである。安倍首相が翁長氏の取り消し処分について「違法だ。移設の目的は普天間の危険性除去であり、著しく公益を害する」と指摘したのはしごく当然だろう。

翁長氏は、石井国交相による取り消し処分の一時停止について、「内閣の一員として結論ありきだ」と批判している。だが、閣僚が内閣の方針に沿って判断することは何らおかしくない。政府はなぜ辺野古移設を進めようとしているか。それは、沖縄を含む日本を脅威から守り抜くためだということを、翁長氏ら反対派には改めて考えてもらいたい。南シナ海では米海軍が航行の自由作戦を始めた。だが、中国は国際法を無視して人工島の軍事拠点化を進める動きを止めない。東シナ海では、尖閣諸島の領有をねらっている。米海兵隊の沖縄でのプレゼンスは、平和を保つ上で重要な役割を果たしている。辺野古移設の停滞が日米関係の揺らぎと映れば、同盟の抑止力は低下する。そうなってからの後悔は遅いのである。

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いつものこととはいえ、読売新聞と産経新聞が代執行の正当性を訴えるキャンペーンをやっているわけだな。

そして、こちらの記事からは、勝利目前、という雰囲気が感じられよう。


毎日新聞
10月30日>http://mainichi.jp/select/news/20151031k0000m010095000c.html


沖縄県側にとって、代執行は不意打ちだった。政府が踏み切るタイミングについて、県側は、本体工事が進む中で現実の地形と設計の食い違いを是正する「設計変更手続き」を翁長氏が認めなかった場合だと想定していた。県幹部は「一時執行停止と同時とは……」と漏らす。
 一方の政府は、一連の動きを周到に計算していた。26日には辺野古周辺の3地区に対し、県や名護市の頭越しに直接財政支援する方針を表明。翌27日、翁長氏による埋め立て承認の取り消しを石井啓一国土交通相が一時執行停止すると決定した上、翁長氏が取り消しを撤回するよう求める代執行手続きを閣議了解した。
 攻勢の総仕上げが29日の本体工事着手だった。政権幹部は「一気にバーンとやると決めていた」と打ち明けた。政府高官は「ここ(着手)で引いていたから、96年の普天間返還日米合意後、19年間進まなかった」と指摘した。
 政府には、来夏の参院選を前に、政府寄りの司法判断を得る狙いがある。石井国交相が28日に県側に発送した勧告文書は「文書到着翌日から5日以内(休日除く)」に撤回するよう要求。政府は11月6日の期限まで待った上で改めて「指示」の文書を送る。翁長氏が応じなければ11月中にも高等裁判所行政訴訟を起こす方針だ。
 1995年に当時の大田昌秀知事が米軍基地用地の賃貸契約の代理署名を拒否した際の行政訴訟は約8カ月で政府側勝訴の最高裁判決が確定。政府関係者は、今回も「100%負けない」と自信を見せる。

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おっしゃるように、「一気にバーンと」来たわけね。
それの一部が、警視庁の暇な機動隊を沖縄に投入、と。


しかも、「100%負けない」ということは、最高裁か訟務局の「お墨付き」が得られたというような、何らかの自信の源となる確証があるから、だろう。

それは、何なのか?
分からない。


ただ、残る対抗策として、世論喚起だけしかないようだと、戦争法案が無法に押し切られたのと同じく、代執行も通されてしまいかねないということか。いかに反対の世論が高まっていようとも、無関係に決めることができるわけだから。


国際法局とNSCの連合軍なら、大した相手ではなかったようだったが、今度は、最高裁だからな。
レベルが違う。
戦争法案の防御に失敗して、最後は「頭を使わない、強引解決策」で振り切った程度だったわけで。
防衛省と訟務局相手だとして、防衛省は数に入ってないとして、問題は訟務局なんだよな。
最高裁系列から、どの程度の助っ人部隊が行っているんだろう?


訟務局は、そもそも行政訴訟のプロだから手強いに決まっている。
最高裁判例や事情に精通している相手の場合、裁判でこれに対抗するのは至難なのだよ。


最も恐れるのは、そういう本物のプロ相手の戦い。
胡散臭い奴らが嘘八百を並べて何を騒ごうとも大した相手ではないが、本物が相手の場合には、付け焼刃では対抗が難しい。


相手の土俵上で勝負して、しかも勝てなければならないから、これは極めて厳しい戦いになるだろう。