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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

本当に「ヤバいTPP」〜3

シリーズの続きです。

環太平洋経済連携協定(TPP)日本参加への実現に向けて
http://www.usjbc.org/TPP%20-%20Final%20USJBC%20White%20Paper(J)_June%202011.pdf


各論について、もう少し書いておくことにする。


米国TPPコアリションにおける、TPP の「成功」とは、

・「米国の農業従事者、製造業者、サービス事業者のために市場を開放し、新たな顧客を獲得すること

・「米国民のために米国の輸出と経済的機会を増大させ、米国民の雇用を支え、創出し、また貿易ルール執行手段を強化すること

・「アジア太平洋全域の安全、安定、繁栄を促進すること」

である。従って、米国民による、米国民の為の、TPPである。
日本に利益があるなどという幻想を抱くべきではない。

日本の甘ちゃんたちには思いもつかないかもしれないが、麻雀で言うところの「通し」をされると、少数派は敗北する。共通のカモをまず設定し、その獲物を皆で分け合うという戦略が可能だということは肝に銘じるべきである。
交渉というのは「多国間だから」といった甘えは通用しないと考えるべきである。
例えば、アメリカが「賛成してくれれば、お宅の国には侵害しない、その代りに、一緒にジャパンを食いませんか」と持ちかけると、その他国々が妥協しないとは限らない、ということである。

カモというのは、だから「カモ」なのだ。交渉ルールというのは、互いの手が見えているわけではないので、強力な国が多数派工作を実施した場合にでも対抗できるかどうかを考えておく必要がある。国際交渉の場においては、「通し」は違法とかルール違反ということにはならないだろうから、それは「ある」と思って臨むべきである。弱小国の場合、かりに食われても「大したことがない」上に(当事国ではまあ小さくもないかもしれないが、限りがある)、食う側もあまり「うまみがない」ので、そこまで追い込むのは得策とは考えない。

喩えて言えば、サメにとっては小魚を食べても食べなくても大勢に影響がないから、「小魚をわざと逃がして、大型魚を食べる」方がうまみが大きい、ということだ。小魚はサメの「おこぼれ」にあやかれる、となると、コバンザメ戦術に賛成することになる。こうして、サメ&コバンザメ連合側が勝利する。特定の大型魚は喰われるだけとなる。ここで言う大型魚が、日本ということにならない保障などない、と考えるべきである。



(再掲)

○基本原則1:包括的協定であること

TPP が協定として成功するためには、農業、物品、サービス、電子商取引、知的財産等、貿易と投資に関するすべての要素を網羅する必要があり、商品別、分野別に例外を設けるべきではない。例外分野を設けると、米国の農業従事者、製造業者、サービス提供者が新たな市場を獲得し、事業を拡大し、米国民の雇用を支え創出する機会が制限されることになる。

例外は認めない、と宣言されている。特に、日本の農業分野について、事細かに述べられている。日本の農業には指摘されている問題があるのだが、その解決策としてTPPを用いる必然性はない。
こういう時にこそ、「ティンバーゲンの定理」(笑)だとかを言うべきだろう。農業問題には、その政策手段を割り当てろ、ということになる。交易ではない。

TPP参加については、
日本の真剣さを示すには、特にコメの減反制度および兼業農家補助金制度の廃止に向けた具体案とタイムテーブルを示すことが求められる
とされており、これを提示できないのであれば、TPPに参加する意思を有しているとはみなし難い、とことになるだろう。


○基本原則2:商業的意義の大きい協定であること

TPP が協定として成功するためには、既存の協定や、現在米国議会批准待ちの協定に定められている参加国の市場開放コミットメントを土台にして、新たに大きな市場開放機会とビジネスチャンスが米国の農業、消費者、製造業、サービス業および投資家にもたらされる協定でなければならない。TPP は物品に関して、約定期日までに関税・非関税障壁の完全撤廃を求めるものでなくてはならない。また、サービスと投資に関しても同様に約定期日までにすべての業種において「ネガティブリスト方式」による市場開放を求めるべきでる。さらに、知的財産に関しては、議会の批准待ちのKORUS FTA や既存の貿易協定を土台にしたものでなければならない。

基本的には、米韓FTAや既存(批准待ち含む)協定を踏襲するもの、ということだ。知財も同様。
ネガティブリスト方式と言われているのであるから、政府は「ネガティブリスト」をまず国内で提示するべきである。これがないのに、口約束だけで「守るべきは守る」というのは通用しない。「守るべき」に該当するリストをまず作れ、それを見せてみろ、というのは正当な要求である。
日本に対しては、最も重大な非関税障壁としての「差別的産業政策」をやめろ、ということを求めている。非常に抽象化して簡単に言うとすれば、過去にあった「通産省的産業政策」というようなものであろう。


○基本原則3:2011 年内に最終合意に至ること

世界各国で米国を除外した新しい協定が発効されたり交渉が行われたりしており、米国の企業と労働者は遅れをとっている。高水準な協定であるTPP の協議や発効が早ければ早いほど、米国およびTPP 交渉参加国が得る経済メリットも大きくなる。したがって参加国は、APEC 首脳会議で米国が議長国を務める2011 年11 月までに交渉を終結させるべきである。また、交渉を前倒しで進めることで、今後短期間のうちにアジア太平洋地域内の他の諸国が新たにTPP に参加する可能性も高まる。

これは既に過ぎた。先日の「大枠合意」という玉虫色の発表がそうだった、ということである。他の参加国の可能性というのが、加、墨、フィリピン?等みたいな話である。最終合意を急ぐのは、それだけ切羽詰まっている、ということなのか、アジア圏での貿易協定で先手を取りたい、ということがあるのだろう。


○基本原則 4:貿易を簡素化し、競争力を高める協定であること

数多くの貿易協定が交渉される中、それぞれの協定で定められたルール並びにそれぞれから得られる恩恵に大きな違いがあることから、各企業、とりわけ中小企業は海外事業計画の策定が困難になっている。したがってTPPが協定として成功するためには、その内容を簡素化し、さらに効果的で一貫性のあるルールを打ち出し、その上で、安全かつ確実、なおかつ相互に恩恵をもたらす貿易を促進する必要がある。目標を共有する国々とTPP という新たな地域的枠組みを構築することは、貿易や投資の足かせになる煩雑な手続きや高い取引コストといった問題に直接取り組む絶好の機会である。今後TPP に参加する国々も同様に貿易を促進する新たなTPP モデルを導入することになるため、複雑化の一途をたどる地域・二国間協定の波に歯止めをかけられるであろう。

これは、言いたいことは分かるし、気持ちも分からないでもない。が、発想が「番長(ビフ)的、ジャイアン的」ということでもある。大国の立場であると、こうなる、ということだな。
簡単に言うなら、米国にとってチマチマ貿易協定を締結するのが”面倒くさい”ということ。2国間協定が増えてしまって、手間暇も大変(コストのロス)だし、似たような話を何度もしなけりゃならず、それでいてルールも似てるが、部分的に違うのが多数あったりして、「分かり難い、だから、統一ルールにしてくれや」ということだ。ゴルフやトランプなんかの「ローカル・ルール」が多すぎて、多国籍企業にとってはいちいち現地の法律を確かめたり、手続き関係を調べたり、面倒なことこの上なし、ということであろう、恐らく。

なので、番長ビフであるところのアメリカ君としては、「今後、ローカル・ルールは禁止な、オレ様ルールに統一するから、それでやれ」と。



○基本原則 5:貿易を促進し、生産力とサプライ・チェーンを強化する協定であること

TPP が協定として成功するためには、参加各国が、重複していて、貿易歪曲的で、無駄な障壁を取り除くとともに、国境を越える物理的な結びつきを強化する必要がある。同時に、地域・国際両レベルでの規制に関するベストプラクティスに関するコミュニケーション、連携、普及状況を改善し、TPP 加盟国間の貿易の促進に寄与する内容としなければならない。

これも要望としては、判らないではない。「サプライ・チェーン」を邪魔しないでくれ、移動障壁になるものはなくせ、ということだ。移動障壁は、貿易関連の各種手続きや運輸等である。
簡単に言えば、広島県熊本県で部品を作り、佐賀県兵庫県で組み立てて、福岡県と大阪府から出荷させろ、みたいな場合、国境という障壁が存在しないと物品の移動は簡単だが、国ごとで貿易手続きが発生すると面倒だ、ということである。なので、県外移動みたいな制度になっている方がいいよね、という話だ。一理あるのでダメじゃないが、だとすると、ブロック圏内だけではなく世界的に統一する方向に行くのがいいのでは。

また、特定の国々なんかでは、通関の度に所謂「袖の下」を要求されたり、嫌がらせで手続きを遅らせられたり、というのがあるのだろう。確かに、こういうのを防げるようになる効果は期待できるかもしれない。


○基本原則6:規制の一貫性を高める協定

TPP が協定として成功するためには、加盟各国が透明性・実効性・拘束力を備えた一貫性のある規制体系を維持すること、そしてその規制体系はリスクベースかつ科学的根拠に基づくと同時にグローバル・ベストプラクティスにも準拠していること、さらに加盟国政府間およびステークホルダー間のハイレベルな協調が担保されていることで、加盟国間の物品・サービスの移動が促進され、その結果各加盟国の経済成長が促進されるものでなくてはならない。加えて、たとえば技術選択に関するパスファインダーやデジタル繁栄に関する作業など、APEC ですでに完成している作業成果を活用する機会がTPP 協定によって提供されることになる。

ルール作りについては、一貫性と透明性が必要だ、と。これも分からないではない。日本でも、例えば「消費者庁が思いつきで規制策を導入」みたいな部分(雰囲気)があるから、である。
ある事業に進出した企業が、事後的にこうした法規制を実施される場合、将来の「予測可能性」が脅かされる、従って事業の収支予測や成功条件変更などの具体的損害が想定される為、そういう不確実性を事前に排除したい、という企業側の気持ちが分からないではない、ということである。
この最近の例が、上限金利規制問題(貸金業法改正)であった、と向こうでは受け止められているであろう、と。例えば、麻薬規制に関して、ベストプラクティス準拠とか科学的根拠という話になれば、極端に重い規制がある国ではどうするか、といった問題が浮かび上がるかもしれない。

将来時点において、国内法で新規規制を行う際には、導入以前に活動(存在)している外国企業があれば、それを問題とされる可能性があるだろう。


(つづく)