怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

本当に「ヤバいTPP」〜4

(続きです)

○基本原則 7:最高水準の知的財産権保護を取り入れた協定であること

TPP が協定として成功するためには、全ての加盟国にとって経済成長、雇用、成功の重要な牽引力である知的財産権を保護するものでなければならない。知的財産権に依存する産業は米国経済の全分野に及んでおり、米国の競争力を高めるためにも、TPP 協定にはソフトウェア、IT、音楽、書籍、映画といったものから医薬品、食品、消費財生産財に至るまで、米国法における措置と同レベルの最先端の知的財産権保護措置を盛り込む必要がある。TPP 協定は、米国がTPP 加盟国との間で締結している既存の自由貿易協定や現在米議会で承認待ちのKORUS に定める知的財産権保護措置を踏まえつつ、その内容を下回るものであってはならない。

この項目は、極めて重要。最高水準の知財保護を求めるそうだ。つまり米国は、特許権・特許料ビジネスで稼ぎたい、ということである。
この影響を最も受ける分野が、日本では医薬品と医療材料・機器ということになるであろう。この分野における日本の市場規模は、将来的に有望であるから、だ。確実に増加してゆく、成長産業分野となるからである。

特許権が最高水準で守られた場合、薬価低下はこれまでと全く異なることになる。米韓FTAの内容を詳しく知らないので何とも言えないが、仮に医薬品特許期間が最長に設定されると、それまでゾロ品ジェネリック薬)投入は認められなくなり、薬価は高いまま維持される期間が長くなる。欧米系の製薬会社は大きく儲かる、ということになるわけである。これは、その他の医療材料、医療機器類でも同様。
いうなれば、特定商品について独占的市場を認めてあげる、ということになり、経済学の理屈には反している(笑)な。

他には、著作権関連でもご意見があったりする。>http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20111031_487650.html

日本としては、参加すると確実にデメリットが大きくなるだろう。多分参加しないこと以外には、回避する方法はない。


○基本原則 8:対内投資と対外投資を促進し保護する協定であること

TPPが協定として成功するためには、米国の対外投資が米国の輸出増大につながり、米国における経済活動の活発化と賃金の上昇を促す内容である必要がある。したがって、TPP には強力な投資保護規定が盛り込まれ、さらに米国法下の強力な財産保護規定およびデュープロセスの原則と一貫性があることが求められる。すなわち、対外投資を行う企業が安心でき、予測可能かつ非差別的な法的環境が確保される必要があるということである。さらに、TPP の投資条項は、TPP 参加各国に新たな外国資本を呼び込み、雇用を創出し繁栄をもたらすものでなければならない。TPPは、米国がTPP 参加国と締結している既存の貿易協定に定められている投資保護規定を踏まえつつ、これを下回る水準であってはならない。

この項目も、極めて重要。はっきり述べられているように、
「対外投資が輸出増大、経済活動活発化、賃金上昇」をもたらすものである必要がある、ということだ。特に、グリーンフィールド投資よりも、「クロスボーダーM&A投資」を、もっと促進せよ、と。

M&A による対内直接投資が明確にグリーンフィールド投資と同様の経済的恩恵をもたらすという十分な証拠があるにもかかわらず、日本のビジネスリーダーや政策立案者の間には、依然としてM&A による対内直接投資に対する偏見が見られる。』

この悪しき偏見をなくせ、すなわち「もっと買わせろ」ということに他ならないわけである。で、買収を促進する為に、税制や投資補助もやれ、と。

『日本のTPP への参加を、外国と日本の企業間の「友好的」かつ戦略的なM&Aを通じた新たな外国資本誘致に確実につなげるためには、買収防衛、クロスボーダーM&A に係る課税、そして株主に対する説明責任に関する新たな改革が必要となる。日本への投資にかかる高いコストを補う税制上のインセンティブやその他補助などより強力で体系的な措置も導入されるべきであろう。』

日本企業が果たして買収防衛ができるのか、というと、かなり厳しいと考えるべきだろう。


○基本原則9:透明性を高め汚職・腐敗を減らす協定であること

TPP が協定として成功するためには、政府の透明性を求めると同時に、国内外の贈収賄を処罰の対象としている米国の既存のFTA と同様の強いコミットメントを加盟国から取りつけ、その内容を盛り込む必要がある。こうした拘束力のあるコミットメントは米国の本質的価値観を広め、米国の農業従事者、製造業者、サービス提供者にいっそう対等な競争の場をもたらすための一助となるであろう。

この項目は、まあ妥当。途上国でありがちな「ワイロ」等の問題である。なので、日本への要求は特にない。


○基本原則10:オープンで平等な調達機会を推進する協定であること

TPP が協定として成功するためには、オープンで透明性が高く非差別的で効率的な政府調達プロセスが確保され、業者間の競争の最適化と政府資金のより効果的な活用を促すものでなければならない。TPP 交渉国はネガティブリスト方式の実現可能性など、「WTO 政府調達協定」および既存のFTA が抱える弱点を克服するための代替手段を模索する必要がある。

あまり重大な論点は含まれないが、早い話が「日本の政府調達は少なすぎだぞ、このヤロー」ということ。もっと増やせ、と。
国内問題としての、随意契約がおかしいんじゃねえか、ということで、「ガイアツを利用しようとする改革勢力」への配慮がなされているのがポイントである。


○基本原則 11:公正な競争と対等な競争条件を促進する協定であること

TPP が協定として成功するためには、競争政策上の手続きの透明性やデュープロセスに関する厳格なルールによって競争プロセスを確保・促進し、対等な競争条件を確保しなければならない。また、国有または国が出資、優遇する業界においても、外国企業を含めた民間企業と対等な条件で競争が行われるようにしなければならない。

これが懸案の日本郵政問題である。しかも、これだけでは済まない。『国有または国が出資、優遇する業界』というのは、日本の場合多岐に渡る。独法なんかがモロに該当してしまう。これを守ろうとすると、別な被害を生じる可能性がある。
例として挙げられているのが、次の部分だ。

競争政策関連の行政手続き関する、透明性やデュープロセスの改善に向けた追加措置などが挙げられる

軽く述べられているけれども、協定の本文でも「〜については、当該国政府同士で追加的措置について協議する(協議する場を設けなければならない)」」みたいに、後から解釈変更が可能な条文を置かれたりすると、日本はまんまと引っ掛かってヤラレる、ということを警戒すべきである。
追加的措置は、日米2国間で協議せよ、ということにできるとなれば、後日「日本郵政の存在が競争阻害になっている、完全民営化するか、競争阻害の被害について補填するか、どちらか選らべ」みたいに”協議”に持ち込まれると、日本の一方的負けがほぼ確定することになる。日米関係では、国内で大騒ぎする従米派どもが多いので、「言われた時点で負け」確定、みたいなもんだな。日米双方の話し合いでどうにかできる、なんてのは、ただの妄言だったことを忘れるべきではない。


○基本原則 12:価格を引き下げ、消費者の選択肢を増やし、競争力を高める協定であること

TPP が協定として成功すれば、輸入関税などの貿易・投資障壁が撤廃されるため、米国や他のTPP 加盟国の広範な品目の消費者価格が大きく下がり、8カ国(現在は9 カ国)全てにとってプラスになる状況が実現される。その上、米国の製造業者はより費用対効果の高い材料にアクセスできるようになり、国際競争力の向上につながる。消費者にとっても商品の選択の幅と入手機会が広がる。そしてTPPの成功によって、商品の信頼性と安全性強化に向けた企業や政府による対応も促進されるであろう。

例の「消費者利益」(笑)の話だな。特にはないが、日本は「食い物高すぎ」と指摘されている。エンゲル係数が途上国みたいに高い、ということか?
平均的世帯で食費が27%にも達する(知らなかった、マジで?)ので、高すぎる、という話である。農産物輸入を解禁すれば、もっと下げられるよ、と。


○基本原則13:既存の協定で約束した市場アクセスの確保について後退を禁止する協定であること

TPP の交渉において、参加国は既存の自由貿易協定上の義務を遵守・実行の上、既存の改革を確実に遂行しなければならず、また、他のTPP 加盟国からの物品・サービスに対して、市場アクセスや投資および知的財産保護を後退させるような政策を採ってはならない。

これが所謂「ラチェット条項」ね。後退は許さんぞ、と。
このように、あっさりと述べられていますが、恐るべき威力を秘めた条項である、ということです。


残りの、14と15は、大した話ではありません。
参加国追加の為の柔軟性、法の統治・労働者保護ということです。ただ、留意点はあって、14で

TPP 協定にモニタリング体制や協力体制なども盛り込み、加盟国間の障壁を撤廃し、新たに生じる問題にも対処できる機能の強化に加盟国が共同で取り組めるようにする必要がある

となっているので、後から「お前の国は、まだ開き方が足りない、だから、もっと改革推進して大胆に開放しろ」と事後的に強要されうる可能性があるかもしれない、ということである。
新たな「イジメ形式」が可能になるかもしれない、ということかな。

周囲に円陣、中央に日本クン、で、「オラオラ、もっと開放しろよ〜、泣いてんじゃねーぞ、オラ」状態で、周りからド突かれる、と。番長アメリカなら、そういうことを平気でやりそう(笑)。


以上、ざっと概観してみました。