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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

リンチを認める米国司法長官

アクション映画なら、例えばボンドの活躍よろしく、いくらでも敵を殺せるだろう。けれども、これが現実世界で堂々と行われた場合、簡単に正当化できるかというと、かなり難しいのでは。

けれども、米国の立場としては「合法だ」と言いたいのであろう。

http://www.cnn.co.jp/usa/30005823.html

米政府は昨年イエメンで、アルカイダ系組織の指導者で米国籍のアンワル・アウラキ師無人機を使って攻撃し、殺害した。ホルダー長官はこの件について直接言及することは避けながらも、こうした攻撃は「わが国の法と価値観」の範囲内にあると言明。「はっきりさせておきたいのは、殺傷兵器を使った外国での作戦で、アルカイダあるいは関連組織の指導者であり米国人殺害の計画にも積極関与している米国市民を標的とするのは、合法だということだ」と述べた。

容疑者殺害を合法と認める条件としては、1)その人物による対米テロの脅威が差し迫っているとの認識が米政府にある、2)容疑者の拘束が不可能、3)戦時国際法の原則にのっとった作戦の遂行――の3点を挙げた。

その上でホルダー長官は、アルカイダにはテロを実行する能力があり、常に対米テロを計画していると考えられると主張。したがって、たとえテロの具体的な計画が明らかになっていなかったとしても、容疑者を攻撃することは法律で許されるとした。

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米国の敵とされるテロリストたちが存在するであろう、ということは否定しない。けれども、そうしたテロリストがいつでもどこでも殺されたとして、これを「合法だ」と言って片付けられるのか、という疑問がある。特に、司法長官の立場として、合法だ、と宣言するには、かなり問題があるように思う。

映画や漫画の中でなら、非合法活動の一環として非合法という「後ろめたさ」を抱えていても、やってしまう、ということがあるだろう。
それは、あくまで表立って言うことのできない「暗部」なのだ。

これをアメリカは「合法だ」と大々的に宣言してしまうとなれば、どんな活動でも正当化できてしまうであろう。世界一の最強暗殺集団が合法ということになってしまう。


1)の政府に認識があったとしても、これは合法の正当化にはならない。イラク戦争の時の「大量破壊兵器」がいい例だ。政府内に認識があったのは事実だったが、それは事実とは違う。認識を有するだけでは、事実認定にはならない。

2)の拘束不可能、という条件だが、これは何とも言い難い。無人機で攻撃する前に、「動くな」と警告でもしているのか(笑)、という話である。逃げれば攻撃するぞ、その場に留まれ、といった警告を殺害前に言ったわけではないのだから、本当に拘束不可なのかが確かめようがないのでは?

3)の戦時国際法に則った作戦行動をとったとしても、犯罪が正当化される理由にはならない。これは米国側の一方的表明であって、戦時という環境(条件)が整っているのか、国際法上で本当に”戦時”と認定されるのかは大いなる疑問がある。


その上、具体的テロ計画が不明であっても、「こいつは間違いなく敵だ、だからぶっ殺せ」ということが許されるなら、私刑を正当化することにしかならない。誰が確かめようがあるというのか?
これらの主張は、前提となる大原則が存在している場合だけ、ということになるだろう。

それはアメリカ合衆国政府が「全く間違いがなく、常に正しく、事実を正確に知っており、誤った情報や判断もなく、ウソや捏造がない」という場合のみ、である。
世界中で、そんなことを信じているのは、アメリカの一部に存在する超過激な保守派とか国家主義者みたいな人だけではないかと思う。


アメリカのやり口を、また例で考えてみるよ。

サムには、常時仲違いをしているライバルのムハマンドがいた。ムハマンドは周囲の人間に、いつも「いつかサムの野郎をぶっ潰してやるぜ、この街から叩き出してやるぜ、あいつぶっ殺す」と口外していた。サムは、こうしたムハマンドの態度や考え方を知っており、ムハマンドからの攻撃に備えて、警戒していた。

ある時サムは、ムハマンドが車に乗り込む際にショットガンをトランクに入れたらしい、という目撃情報を友人から聞いた。サムは「いよいよ決行するつもりらしいな、きっと俺を殺害しにやってくるに違いない」と考えた。なので、「殺られる前に、殺れ」の鉄則通り、ムハマンドの始末をすることにした。

そこでサムは、いつもムハマンドが車で通る道路にかかる高架の上で待ち伏せすることにした。そこへムハマンドの車がやってきた。運転しているのは、勿論ムハマンドだった。同乗者もいるようだったが、この際やむを得ないと考え、サムは車めがけて機関銃を乱射した。車は蜂の巣となり、運転していたムハマンドが撃たれ、車は対向車に激突して炎上した。

サムは、言った。
「ムハマンドは俺を殺す気満々だった、巻き添えになった同乗者や対向車の人々は不幸だったが、やむを得ない措置だった、やらなければ俺が殺されていたからだ」

ムハマンドがサムを襲撃する具体的計画が本当にあったかどうかは、誰にも確かめようがなかった。けれども、サムにとっては危険な存在であるという認識だったから、ムハマンド殺害は正当化されるし合法だ、というのがサムの主張であった。


まさにこんな感じですよね?司法長官の言い分というのは。
サムが機関銃で撃つ時には、海兵隊を除隊する前に教官から教えられた通りに実行した、と。ムハマンドが米国籍であれば、別に撃たれたって文句をいえまい、と。

ムハマンドがサムに決闘の申し込みでもしたとか、サムを殺害する旨サムに向かって宣言したということでもなく、サムはムハマンドに撃つぞ、と宣言したのでもないわけですわな。これは本当に「戦時」ですかね?

どう見ても、サムの一方的な違法な攻撃、ということとしか認識できないわけですが、司法長官としては、いやいやこれは合法だ、と言えるらしい。
アメリカの無人機は高性能で、殺害する前にテロリストたちに権利でも読み上げるのかもしれんね(笑)。ああ、それはロボコップがならず者とか犯罪者を銃撃する前か。或いは、これからお前らを爆撃する、とか何とか、宣戦布告でもしたのか?


独善的な国家であることは、世界中で知られているだろうが、表立って合法だと詭弁を弄されては、それってまずくないですか、と気になるわけである。
仮に実行するにしても、誰にも知られず後ろ暗い部分を抱えて、矛盾の中で悩み苦しみながらも「行わざるを得ない」というようなものであるはずで、白昼堂々と国家的支援を受けた死刑執行が自動的に行われるというのは、極めて危険である。