怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

『TPP反対派がダメな件』がダメな件

久々に見たわ、こういうの。
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20120303#p1

んー、まあ、言わんとするところは分からないでもないが、だからと言って簡単にJAなんかを批判できるとも思わないね。

この労務屋さんという方は、未来でも見通せるエスパーか何かですかな?
色々な虞を抱くのは、それを推測させるような情報や事実なんかがあるからであって、そういうことを知らない無知であればあるほど、何らの虞も抱くことはないでしょうな。だって、知らないんだから。
ネズミ捕りを見たこともない赤ん坊ならば、それを危険だとは考えないから怖れたりもしないだろうが、構造を知る人間であればそれに手が挟まるとどうなるかが予測できるから、不用意に触ったりするのを躊躇するだろう、というような話だ。

3月2日に出た日経記事を読んだら、JA関連団体の表明していた危惧がいかに大袈裟なものか、というのを言いたいのかもしれないが、そんなのを知ることができたのは、つい昨日今日の話じゃないですか?
昨年11月のAPEC前までに、そういうことを知ることが出来なかったのなら、危惧表明はごく普通だとしか思えないわけだが。新たな情報が出てから、「いやいやそんな危険性なんてないんだよ」なんて言うのは、所謂後知恵みたいなものなんじゃないですかね?

労務屋氏はこう書いている。
『たとえば医療分野においてもTPP参加で混合診療が導入されて医療保険が崩壊する(大意)おそれがあるとか書かれているわけですが、しかし混合診療についてもカトラー氏がやはり明確に否定しています。もちろん「おそれがある」「心配がある」ということなので、「だれが何と言っても私は心配なんだよ!」と言い張ることは可能なわけですので間違いではありませんが。』

あなたは、そんなことをずっと前から知っていたんですかね?(笑)
へえええええ。
超能力でも発揮ですかな?カトラーさんとのコネでもあって、特別な情報でも貰っていたとか?USTR内部に情報源でも持っているんですかね?
そういうことでもないなら、危惧を抱くのは普通としか思えんが。

例えば、昨年10月時点での報道では、小宮山厚労大臣が国会答弁で発言した、というのがあった。

http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=10331

医療自由化目標 「入手していた」 米国文書で厚労相 (10月28日)

 米国政府がTPP交渉で、公的医療保険の運用で自由化を求める文書を公表していたにもかかわらず、日本政府が「公的医療保険制度は交渉の対象外」と国民に説明していた問題で、小宮山洋子厚生労働相は27日、「9月16日に外務省を通じて受け取っていた」と述べ、入手していたことを明らかにした。公的医療制度の根幹である薬価の決定方法が交渉対象になる可能性も認めた。

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他にも、外務省の説明では、議題の可能性に言及されていた。

http://www.asahi.com/politics/update/1107/TKY201111070539.html

外務省は7日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日本では原則禁止されている医療分野の「混合診療」について、全面的な解禁が議論になる可能性があるとの見解を示した。民主党経済連携プロジェクトチーム(PT)の会合で説明した。
 混合診療は、保険診療と保険がきかない自由診療を組み合わせたもので、日本では一部の治療でしか認められていない。いまは自由診療を併用すると、保険が適用されず、全額が患者の自己負担になる。このため混合診療の全面解禁を求める声がある一方、解禁すれば、お金持ちだけが質のいい治療を受けられ、医療サービスに格差が生じるとの批判も強い。
 これまで外務省は、混合診療について「TPP交渉では議論の対象になっていない」と説明してきた。だが、7日の資料では、日米の投資環境を話し合う「日米投資イニシアチブ」の2006年報告書で、「米国は混合診療の導入に関心を示している」と言及。それ以降、米国は特段の関心は表明していないとしつつも、「混合診療の全面解禁がTPPで議論される可能性は排除されない」と指摘した。
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こういう経緯を知っていれば、「議題になんかなるわけない」みたいな断定が簡単にできないんじゃないですかね?
むしろ、「交渉の議題に乗せられる虞」を抱くのが普通なんじゃないですか?
だって、外務省が「排除されない」と説明しているんですよ?
それでも、どういう自信があるのか、何の根拠で「議題にはならない」と断言できるのか知らないけれども、労務屋氏は「いやいや、そういう心配はない」と最初から言えた、と主張するつもりなのかな?
へええええ、凄いですね、締結後でも情報を4年間は開示しないとされる交渉ごとの中身を、事前に「議題にならない」と断言できる、と。


オマケに、TPP交渉では既存のFTAが交渉の土台となる、というのが前提にあったわけで、そうすると米韓FTAの内容を連想するのは回避できないんじゃないですかね。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2012/02/16/0200000000AJP20120216000400882.HTML


このように、米国法律事務所が韓国で活動することは何らの制限を受けない、ということなら、日本でも同様の「サービス市場開放」が求められる可能性を危惧するのは当然なのではないのかな?

参考>http://d.hatena.ne.jp/trapds/20111222/1324542637

今になって、議題になっていない、と米国政府要人が言ったとしても、そんなのは事前には分かってなかっただけ。つまり、無知ゆえの「怖いもの知らず」と何が違うのかな、と思えなくもないわけです。
知らぬが故に、危惧もない、ということと何が違うのか、きっと合理的説明ができることでしょう。

弁護士や会計士だけではなく、医療や高等教育が参入市場として標的とされると危惧するのは、ごく常識的な想定としか思えないわけだが。何も「世界中のどこでも起こっていないこと」を言っているわけでもなく、現実に「存在している貿易協定」の事実について言っているのであるから、実在するものを議論の前提として考える方が普通であるとしか思えない。
「そんなことは起こらない」とか「そんなことは対象となっていない」なんて意見は、否定する情報や意見表明がなければ知り得ない。


そもそも、11月のAPEC前にカトラー代表が「議題にはならない」と完全否定しておけばよかっただけなのに、どうして事前に言わなかったのだろうか?
参加表明が問題となっていたのなら、その時点で「そういう懸念はない、議題にならない」と完全否定しておけば、それで簡単に済んだ話ではないですか。どうしてそれができなかったのかと言えば、在沖海兵隊の移転問題でも同様だが、途中で方針変更が行われたからだ、という可能性が最も疑われるわけで。

つまり情勢の悪化、劣勢でもいいですが、このまま進めるのは「得策ではない」と判断されてから、「いや、実は議題にはならないんですよ」と後出しで否定したのと見分けが付けられない、と言っているんですよ。日本でも、或いは1月1日発効予定だった韓国でも、これほどの大騒ぎにならなければ、そうした方針変更は行われなかったかもしれない可能性だってあるのではありませんか?
(因みに、これを否定できる論拠があるなら、是非知りたいね)

それをですね、昨日発表になった程度の発言を、あたかも「当然の事実」であるかのように語るのは、あまりに都合が良すぎじゃありませんかね?
本当にずっと以前から「議題になんてなっていなかった」ことの明確な根拠でもあるんですかね?その発想の前提となる証拠や事実というのは、一体何が挙げられるのですかね?


3月2日くらいに知った内容を盾にJAを批判できる立場にある労務屋氏は、昨年10月からそんなに言うほど正確に事実を知っていたんですかね?
閣僚たちでさえ交渉の中身はわかりませんと繰り返していたのに、一介の市民である労務屋氏が「議題にはならない」と断定できる自信の根拠を知りたいね。


まあ、どうせ大した答えなんぞありはしないだろうから、誰かの無知を非難しても益はないんですがね。答えを期待なんかしませんぜ。
当方とて、あれこれと「大袈裟に畏れる」タイプの人間ですから、JAと同じですから(笑)。
情報無視ないし無知が羨ましい限りですな。