怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

FRBの行う1兆ドル財政支援

日本の次期政権期待ということで、円安が進行しているのだそうだ。
一方の米国の状況は、といえば、遂に「謎の政策」が発動された。日本と状況が異なる米国での金融政策の意味は、「デフレ脱却」が必要な日本とは全く別だろう。


http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE8BB01K20121213?sp=true


FOMCで、新たに毎月450億ドルの国債買入を決めた、ということらしい。しかも条件付きとして、失業率6.5%をガイドポストとする緩和策継続、だそうだ。
これは既にデフレ対策という代物ではない。
単なる財政赤字ファイナンスの肩代わりである。そして、ファイナンスの結果もたらされる果実は、財政支出の収縮を防ぐことで景気回復に繋げたい、ということであろう。


もしも、失業率水準を「理由づけ」に出さなかったとしたら、一体どういう根拠で今回の都合「毎月850億ドル」=年1.02兆ドルの国債買いを行うのか、ということの説明ができないから、だろう。


以前にバーナンキ議長の説明していたのは、失業率を数値目標として金融政策を実施することはできない、としていた。”事実上の”(笑)インフレ目標についての説明をしたのを、ご記憶であろう。


12年1月
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/f9680fdcb431f31505be046a2cacc48e
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/363b480480dd89ed2a22d47887cc872c



この中でも記述されていた通り、『雇用の目標(=失業率)を具体的に定めることは適切ではない』としていたわけである。説明もそうなっていた。ところが、1年と経たぬうちに変更した、ということになると、それは一体どういう論理によるのか、何故そんなことが起こったのか、ということが問題になるわけである。


それなのに、失業率6.5%まで、という具体的数値を挙げてみせたのは、「あくまで財政ファイナンスとは受け取らないで欲しい」という意図であろう、ということがアリアリと伝わってくる、ということだ。


単純に1兆ドルというのは、単年の財政赤字規模である、ということがある。米国債の買い手が不足気味な折、中国が買わない、日本もあんまり買わなくなった、ということになれば、今後の米国債需給は「厳しくなるかもしれない」ということが予想されるから。そこで、FRBが大きく買い越せば、需給は保たれ、結果的に金利上昇を食い止めることができる、ということになる。これは、借金帝国(=米国)への「意図的利益供与」に他ならない。


金利上昇を防ぐことで債務上限問題への時間稼ぎが行える、ということだ。
1月に公表していた米国のPCE水準というのは、要するにインフレ率の基準となる指標なわけだが、1年間を通じて1.5〜2%程度のレンジに落ち着いており、何も「特別な緩和策」をそれほど必要としていたとも思われないわけだ。その上、大統領選挙直前くらいには失業率改善が伝えられ、結果的にはこれまでの緩和策がほぼ効果を発揮してきており、「うまくいった」部類であると評価できるだろう。


ところがPCEの数字が1%を割りそうだ、というようなトレンドでもないようなのに、すなわちデフレに陥りそうな感じではないはずなのに、ツイストオペの代替策として買入増額となれば、「それはどうしてなのかな?」と感ずるのは無理なかろう?


そうした疑問に先回りして答える、という意味において、「失業率6.5%」という具体的数字が「ターゲットではないが、ガイドポスト」であるとして提示された、というわけである。もしもこの説明が存在していなかった場合、失業率は回復してきた+PCEは1%程度から順調に回復してレンジ内(1.5〜2%)に収まっている、というのに、何故「新たな緩和策追加が必要なのか」ということが理解できないでしょう?


しかも、緩和策といっても、日本みたいなデフレ環境ではないにも関わらず、国債買入増額を行う理由といえば、財政収支赤字がキツイ=需給手助け、ということくらいしか理由が思いつかないわけであるから。


10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/f9d9fd75361691027c94001b23bd734b



ゼロ金利継続期間を提示するのであれば、文言を「13年半ば」から幾度か変更してきたわけで、policy duration変更という形でも十分と思えるわけである。実際、2010年までのPCE低下期間を抜け出すことができ、反転してきたわけですから、効果はあったものと考えてよいはずなのです。


そうであるなら、特別な政策変更の必要性というものを感じることはできず、敢えて今回のような米国債買入450億ドル増額を踏み込む必然性というのが理解できない、ということです。


唯一あるとすれば、財政ファイナンスの手助けに他ならず、それは「日本もジャンジャン買えよ」という安倍政権への超期待の裏返し、ということにしか思えないわけである。金利が低い=高値で買えってことですから。


それに加えて、経団連会長であるところの米倉さんが、「安倍総裁の言ってた経済政策は”まっこと”に正しい、批判して悪かったな」と詫びたんだそうだ、というニュースを見たことも疑いの目を向ける要因だ。


だって、これまで散々間違った経済の理屈を言ってきていた経団連会長が、急に改心しました、とか、なると思う?
それは、そこぞの筋から「余計な批判はするんじゃない、日本にドルを買わせる算段をしとけや、ボケ」という入れ知恵があったものと考えるのが普通だ。自ら経済論理の正誤を気付けるなら、これまでの間違いのオンパレードが説明不可能だし、つい最近でも安倍総裁はおかしい、みたいなことを言っていたことと整合性がつかない。


米倉会長がすんなり「ああ、ワシの発言・論理が間違っていたわ」と認めるのは、「アメリカさま&財務省霞が関」の筋から言われた場合だけ、と想像しているので。従米派の米倉会長が翻すというのには、それなりのワケがありそうだ、ということさ。


ま、これはいいとして、FOMCの発表を見て疑問に思わないわけないだろう、ということだ。
米国のドル安要因(新たな緩和策追加)と日本の安倍政権への「まだ見ぬ政策への期待」を比較すると、日本の方が「ずっと緩和的なはずだ」=円安、というのも、不思議ではある。市場参加者たちの考えというのは、そういう評価なのだろうか。アメリカ以上の緩和を日本が実行できる、と信じている、ということであろう。その根拠がよく分からんが(笑)。