怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

マッカラム・ルールとマネタリーベース水準

こちらの記事を目にしたので、思うところを書いてみたい。
http://synodos.livedoor.biz/archives/2006994.html


最も目を惹いたのは、「マッカラム・ルール」というものでした。拙ブログ記事で一度も取り上げたことのない、初めて知るルールでした。そうだったのか!

なんだよ、既に知られた話で、こういうマネタリーベースの計算方法というのは存在してきたんじゃないですか。どうして他の経済学者とか実務家たちは、こういうのを詳しく検討してみようとかしないのでしょうか。あるなら、有効利用できるかどうかを考えればいいのに、と当方のような経済素人は考えてしまいますね。


参考までに、拙ブログにおいては過去のマネタリーベースの変動を観察してみて、経験的な増加率ということから概算値を提示したことがあります。

09年3月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/99ac54a8a0f7dc4ca098f967d3b591fa

『離脱期には「時間をかけろ」と忠告しておいたにも関わらず、慎重にいかなかった為に逆戻りになってしまったのだ。
量的緩和策導入頃のマネタリーベースの規模は約66兆円だったのだから、単年の伸び率が約8%水準だとして(85年〜99年の平均でも約7.2%程度、これは不景気の頃やバブル崩壊の引き締め過ぎも入れて、の数字だ)、05年3月には約90兆円、08年3月には約104.7兆円の規模になるのだ。
ところが、06年に量的緩和解除後に88兆円規模に落とし、それ以降の06年第3Q〜08年3Qまで9四半期連続で「88〜89兆円で維持」していたのだ、日銀は。』

10年3月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/181df2a32c66b7a04527c140651037b4

『08年3月 105兆円
 09年3月 113.4兆円
 10年3月 122.4兆円
ということで、日銀のやってきた水準が98兆円であるとして、目標の122〜123兆円との差額は約24〜25兆円ということになる。これを増額せずにきたので、デフレかつ円高のままであったというのが私の推測である。』


12年3月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/74447c47932d971ac57b8b2650382860

『2010年当時でも122.4兆円くらいは必要、ということだったので、これを継続していたとすると、11年には約132兆円、12年には142.8兆円、という規模になるわけである。
つまり、今の112兆円からすると、30兆円くらい足りてない、ということになるわけです。この数値はあくまで機械的に当てはめてみただけですので、実体経済との整合性があるとまでは言いませんが、そういう勢いで増やしていかないと「効果は出にくいのではありませんか」ということはあるかと思います。』

当方の例示したマネタリーベースの水準というのは、過去の記事で示した数字を再掲すると、次のようになる。

 05年3月 90兆円
 08年3月 104.7兆円
 09年3月 113.4兆円
 10年3月 122.4兆円
 11年3月 132兆円
 12年3月 142.8兆円
 
12年12月ですとまだ途中ですし、比較の月が違うと結構数字は違う(季調済の数字ではない)ので、一概には言えないかもしれないですが、ざっとの目安として150兆円くらいでしょうか(来年3月には154.2兆円くらい)。
安達氏の挙げている「マッカラム・ルール」で200兆円規模に、というのと比較するとかなりかけ離れていますが、それでも日銀の出している線=125兆円くらいと比較すると、過少であるとは思います。


今年前半期にCPIの上昇が観察されて、やや手綱を緩めてしまった感があり、丁度4月以降くらいから増額スピードが落ちてしまったのでは。その結果、5月以降の物価指数は再び減速に向かったように思えます。それに加えて、GDP速報値の結果が当初は悪くなかったので、油断したように思います。
ところが、後退局面が近づいていたのと、「石原尖閣不況」を呼び寄せたことで急ブレーキとなったことが響いたものと思います。対中輸出関連を中心に大きく落ち込み、観光関連の小売、サービスも打撃を受けることとなったわけです。これらが重なった結果、日銀の1Qくらいの自信に反して再びCPIはマイナスへと落ちて行きました。プラス圏に行ったな、と思って気を緩める(金融政策的には緩和しているのではなく、逆に引き締めることになっている、笑)と、元の基調が堅固にはなっていないので、簡単に逆戻りする。


日銀の失敗というのは、常にこうしたびくびくして、効果が出るまでドンと増やせないという運営にあると思うわけである。これも何度も指摘してきたことではあるが。


因みに、岩本東大教授は「適正な水準のマネタリーベース」になるまで保有国債を売る、とか言っていたはずで、その水準はどうやって計算するのかお得意の「経済学モデル」でもって示してみよ、と言ってあげたが、その後岩本教授が適正水準の計算方法について学説なんかを発表した形跡はないわな。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/c228236e01afb25847e1c3b94a51b800
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/a3054232a8ab932d5802ef540c54df8c


何をやっても効果がない、インフレは起きない、と言っていた教授さまは、その後も同じ考えなのだろうか。学者ならば、自分のお説が正しいことを学術的に証明すべきであり、FRBのインフレ率低下からの脱出をどう見るか、説明すべきだろうね。岩本式理論による経済学モデルで(笑)。
これは、まあいいか。本題には関係ないから。


このような緩和策への理解が広まるまでには、随分と時間がかかったわけですが、日本の経済学者とか経済ナントカの類というのは、本当にこれまで何をやってきたんだろうな、と疑問に思うわけなんですよ。こうしたことを主張していた人々というのは、ごく少数派であり、その他大勢というのは、どうしてこれほどの無知無能だったのか、というのが本当に疑問に思えるのですよ。


ですが、米国においてFRBが政策を採用するに至り、ようやく日本でも「過去の金融政策は間違っていたのだな」ということが理解されてきたものと思います。デフレ脱却を意識するようになるまで、どうしてこんなに何十年もかからねばならんのか、と思いますね。それは、権威となるべき学者なんかが、ロクなのがいなかったから、としか思えません。