怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

日本国憲法と第9条に関する論点整理〜6

憲法の条文を解釈する前に、文言の意味合いについて、整理してみたい。
あくまで拙ブログでの理解であり、定義であるので、注意されたい(一部英語表記を追加しました)。


1 文言の定義 

 1)国際紛争 international disputes

日本国憲法にもあるが、その他条約等にもよく見られる。国際法の世界での定義付けは必ずしも一定ではないようで、論者により若干の相違がある。

拙ブログでの見解としては、多くは国家間の争いであり、国家以外の主体でも国境を越えて争われるが、国境内で生じて(例えば内戦、動乱など)いても、その影響が国境外へ波及するような争いというものである。戦闘行為は必ずしも伴わない。
国際紛争は大別して、軍事的紛争と非軍事的紛争に分けるものとする。非軍事的紛争には、法的紛争の他、金融制裁や経済制裁、資源争奪、貿易や関税の争い、捕鯨、水産資源問題、生物捕獲・採取など、種々のものを含む。


  国際紛争 
    軍事的紛争  military disputes
     (戦争、武力紛争など)

    非軍事的紛争 nonmilitary disputes
     (法的紛争、経済制裁、制裁関税、資源争奪等)



非軍事的紛争はここでは重要ではないので、次項では軍事的紛争について分類する。


 2)軍事的紛争 military disputes 

原則として、違法なものである。国連憲章の下では、正当化されない。ただし、違法性が国連総会や安保理で否定されるものか、憲章に基づく軍事行動は認められよう。拙ブログでは、3つに分類した。


ア)戦争 war

戦争とは、「従来より存在してきた、多くは政策的に行われる複数国家間の組織的、継続的な軍隊による闘争状態」とする。侵略や条約を課す目的で行われていたものである。
開戦法規や交戦法規などの国際法が適用される。


イ)武力衝突 armed conflict

武力紛争などとも呼ばれるが、ここでは用語を統一的に使う為、「武力衝突」という日本語を充てている。
領土防衛、復仇等の報復攻撃、内戦(自決権に基づくもの、認定外のものを含む)などがこれにあたる。フォークランド紛争(or戦争)は、当ブログの分類上は武力衝突に該当する。
ジュネーブ諸条約の第3条にある単一領域内のarmed conflictもここに分類される。


ウ)破壊活動を伴う敵対状態 

適当な英語は思い浮かばないので、とりあえず保留。
破壊活動とは、「主に自国領域外において、人的・物的損傷を与える目的で行われる軍事的或いは準軍事的活動及び非合法活動」とする。
具体的には、イスラム国のような活動、米国等の無人機による爆撃、特殊(部隊による)作戦行動、航空機撃墜、軍事目標(核施設等)への空爆・ミサイル攻撃での破壊やコンピューターウイルスによる攻撃、等である。
テロ行為に似ているが、テロ行為は基本的には紛争ではなく犯罪である。以前には、あまり想定されてこなかった紛争形態である。

無人機の爆撃は、軍事的活動であるか、CIAが実行すれば準軍事的活動であり、国際法上は違法である。ビンラディン殺害作戦のようなものもここに含まれる。敵対する紛争当事国或いは紛争当事者の代表者・指導者・要人等を殺害する暗殺(無人機攻撃や空軍の空爆などの攻撃も含む)は、国際法上の戦争や武力衝突ではなく、あくまで非合法活動である。大統領暗殺も同様。
殺害方法の違いがあるだけであり、ピストルで至近距離から銃撃するのも、長距離から狙撃するのも、ビルごと爆破するのも、投下爆弾で爆殺するのも、毒薬を服用させるのも、ナイフで刺すのも同じということ(一般に殺人という犯罪である)。


 3)武力の行使 the use of (armed) force

日本国憲法でも国連憲章でも原則として認められていない。
国連憲章2条4項において、『すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。』とされており、例外を除いては違法と考えられる。

武力による威嚇についての解釈は多くの場合問題とはなっていないので、ここでは武力の行使について検討する。

「武力の行使」というのは、前記「国際紛争」の考え方とは別の系統の語である。
国際紛争は当事国(者)の関係性とそれらが置かれた状態(状況)をいうものであり、「武力の行使」は行為に重点がある。

喩えて言えば、「人質をとって立て籠もり」(事件)は、そのような状況(置かれた状態)をさすが、「強行突入」は行為を言うものである。前者が「国際紛争」に関する語であり、後者が「武力の行使」に該当するものということである。

国際紛争とは、軍事的紛争と非軍事的紛争に大別されると述べた。これと同じように、「武力の行使」についても、次の2つに分類される。


  武力の行使
   ア)武力攻撃      armed attack
   イ)ア以外のもの    others

参考までに、「武力攻撃」の政府(答弁書)見解は、一般に「一国に対する組織的計画的な武力の行使」としており、循環論法的になるので、拙ブログにおいては次のようなものとする。

「武力の行使」とは、
①原則として「侵略の定義に関する決議」で規定される侵略
②軍事的紛争において国際法上軍隊の活動とされるもの又は中立国の権利義務を逸脱するもの
※国際人道法、開戦ニ関スル条約、不戦条約、ハーグ陸戦規則、陸戦ノ場合ニ於ケル中立国及中立人ノ権利義務ニ関スル条約、海戦ノ場合ニ於ケル中立国ノ権利義務ニ関スル条約、空戦ニ関スル規則(未批准・未発効)などで規律される
③武力攻撃以外の支援(例えばニカラグア事件でのICJ判決)で該当性のあるもの


武力の行使が違法とされない場合とは、国連総会や安全保障理事会において、その行使が認められたもの、となろう。
「武力攻撃」は、「武力の行使」のうち重大性を有するものであり、自衛権の発動要件としても知られてきた。例えば、兵站や武器供与は「武力の行使」に該当するが、武力攻撃ではない。


 4)陸海空軍その他の戦力 
land, sea, and air forces, as well as other war potential


この9条文言の意味に関しては、過去から紛糾してきた面があり、学者の解釈も諸説あったものである。
普通に読めば、一般的な軍備に該当するものは「戦力」であるように思うかもしれないが、政府見解は異なってきた。


具体例として、前述の「空戦ニ関スル規則」案 61条では、次のように定義された。

Art. 61. In the presents rules, the term "military" must be understood as referring to all elements of the armed forces, i.e. land, naval and air forces.

戦力か否かが、あまりよく分からない。軍隊というのが、陸海空軍全部種類をいうものだ、という程度である。


最近のものでは、「爆弾テロ防止条約」での定義として、次のものがある。

"Military forces of a State" means the armed forces of a state which are organized,trained and equipped under its internal law for the primary purpose of national defence or security,and persons acting in support of those armed forces who are under their formal comand,control and responsibility.

「国の軍隊」とは、国の防衛又は安全保障を主たる目的としてその国内法に基づいて組織され、訓練され及び装備された国の軍隊並びにその正式な指揮、管理及び責任の下で当該軍隊を支援する為に行動する者をいう。


これを読めば自衛隊は、外形的には国際法上の「軍隊」として評価を受けるだろう。ただ、これが憲法により禁止される「戦力」かどうか、が問題となる。

そこで、拙ブログにおいては、「陸海空軍その他戦力」を次のように定義する。

以下の条件①の他、②又は③を満たすものを「戦力」という
①爆弾テロ防止条約4条にいう『Military forces of a State』に該当するもの
②軍事的紛争の解決乃至介入手段として意図した、或いはそれらを目的とした組織
③自衛力self-defense force(s)の限度を超越するもの


①は軍隊としての要素で最も標準的かつ基本的なものである。②は何を目的としている組織なのか、ということであり、戦争や武力衝突の際に出動・用いることを(積極的に)意図しているものについては、「戦力」と見做さざるを得ないということである。③は、以前からある「極東」とか「周辺事態」のような解釈で取り沙汰されてきたものであり、地理的空間的限度が想定されよう。それとも、害敵手段の効果の大きさが過大なものは、正当性が認められないだろう、というものである。


これは正当防衛の場合を考えてみると分かるだろう。
自分の家の敷地内に殺人犯が襲ってきたら、自ら拳銃や猟銃で反撃することは想定できよう。しかし、いかに相手が凶悪犯だからとて、対戦車ヘリで爆撃してもいいのか、というようなことである。また、隣家に殺人犯が押し入ったのを助けに行く程度ではなしに、隣町の友人宅敷地に出かけて行ってまで機関銃を撃ちに行くというのは、正当防衛の範囲を超えているのではないですか、ということである。
つまり、拙ブログにおける戦力の考え方は、①+②か①+③が成立していれば、戦力に該当する、というものである。害敵の効果があまりに巨大であれば(例えば核兵器)、これは自衛力の範囲を超越していますね、と判断することになろう、ということである。


自衛力とは、広義にはarmed forcesであって軍隊としての性質を持つものであるが、国際法上の全ての権能を備えたものではないことは、これまでの政府見解でも明らかである。自衛力は、憲法にいう「戦力」には該当しない(否定されない権利)というべきである。


砂川事件での最高裁判決では、9条にいう戦力として、在日米軍は①の要件該当性から外れていることが示されたものである(国内法根拠の組織でないことは明らか、日本の指揮権と管理権の範囲外であること)と言える。自衛隊の合憲性には触れていないものの、『わが国がその主体となつてこれに指揮権、管理権を行使し得る”戦力”』の保持について許されないとしている(強調は筆者による)。
従って、「戦力」とは何か、という定義問題に帰着すると考えられる。


 5)国の交戦権 The right of belligerency of the state

過去の政府(答弁)見解は、「交戦国が国際法上有する種々の権利の総称」を意味するとしている。一般的には、国際法上の交戦法規に規定されてきた権利をさすものと思われるが、憲法制定当時の日本では、軍備が全く想定されていなかったので、軍備がないのだから(国際法上あるとしても)どうせ使えない、という発想だった。ただし戦争は放棄するけれども、自衛は可能であるとの認識の下、国際法上の権利の全てが失われるとは考えていなかった。


従って、そのような制定趣旨を考慮して、拙ブログでは次のように定義してみた。

「国の交戦権」とは、①を満たすもの、但し②以下を除く、とする
国際法上の国家が有する諸権利で、一般にjus in belloの下規律されたもの
(具体的には「武力の行使」の項②で示した諸条約、その他戦時法規など)
②「侵略の定義に関する決議」第7条の自決権の行使に関するもの
③自衛力の行使に伴うもので、国連憲章に反しないもの


例えば、加害国か不法武装集団が日本に上陸して国民を殺害したり奴隷化したりするなら、これを防御すべき義務が国にはある、ということである。その際、いかに「交戦権を認めない」とする憲法文言があるとて、「国の交戦権」が自衛力の行使たる「武力の行使」までも否定するものとは考えられない、ということである。まさしく急迫不正の侵害に対してこれを排除する為、自衛権の発動は許される。自衛力を行使する国の機関が警察組織であろうと、海上保安庁であろうと、これは法的に許容され得る。