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森友学園の土地売却問題に関する無責任なコメント

世の中には、口喧嘩が強いとそれが正論であると錯覚する人々が大勢いるらしい。識者風の連中が、さも正しそうな解説なりコメントを繰り出すと、それが正論であると誤信させるには効果的なのだということ。

例えば、橋下徹などがその代表格であろう。
事実ではないことであろうと、テレビで堂々と発言すれば、それが「事実」とされてしまうとか、いかにも法律上で正しいかのような雰囲気を作り上げるということである。必ずしもそうではない。


典型例に遭遇したので、取り上げたい。

http://b.hatena.ne.jp/entry/hosyusokuhou.jp/archives/48789494.html

実際の番組内容は不明だが、三浦瑠麗という女性論者が『忖度は犯罪ではない』と発言したようである。国際政治学者とかいう肩書らしいが、まずは普通の法律を勉強してから、解説するようにすべきであろう。定かではないことを、何故そんなに自信満々で断言できるのか、謎である。自分の考えを口にするなとは言わないが、「出鱈目を言うのは慎む」くらいの配慮があってしかるべきかと。


このような事例は、専門的な知識に乏しい人が、あたかも専門家のような振舞いで出鱈目を断言するのに似ている。ニセ医者がまさしくそれである。それともインチキ健康食品の販売営業みたいのも似てるかも。

しかも、こうした「分かり易い結論」に飛びつく、思考力に乏しい連中が大勢いるというのがポイントで、煽動効果は抜群と言えよう。デマの典型的な手口と言えるかもしれない。


拙ブログも例に漏れず、全くの法律素人である。法曹でもサムライ士業でも何でもない。法学部卒でもない。なので、三浦女史と大差ないわけだが、当方の知り得る範囲においては、間違っているものと判断したので、以下に書いておく。


『忖度は犯罪ではない』

これは一見すると、正しいように見えるだろう。文脈を無視すれば、例えば忖度という語の項目の例文として見れば、大した問題はない。しかしながら、森友学園の土地売却を巡る問題としての、各省庁職員等の「忖度」となると、単純に犯罪ではないと断定できない。


具体的に言えば、例えば財務省事務次官・局長級以下財務省職員が、「総理夫人が深く関与する学校法人なので、小学校設置を何とか実現させたい」といった忖度をしたとする。
忖度だけなら犯罪ではないかもしれないが、それに伴う行為の結果が問題ろなろう。例えば土地売却価格の問題である。それとも補助金交付その他予算執行の問題である。


忖度の結果、実際に行われた行為が「違法な事務」であった場合には、これは犯罪となる可能性がある。

背任罪というのは、犯罪であろう。それに該当しないと言えるか?
財政法、予算決算及び会計令会計法などに違反していないと確信を持って言えるか?
「予算執行職員等の責任に関する法律」でいう、処分の対象ではないと言えるのか?


そもそも開示された情報だけでは、「違法な事務」かどうかを判断できる根拠足り得ないのだから、「違法でない」「犯罪ではない」と強弁できるわけがないのだ。

例えば、「予算執行職員等の責任に関する法律」によれば、次のように定義される。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO172.html


第2条第2項
この法律において「法令」とは、財政法 (昭和二十二年法律第三十四号)、会計法 その他国の経理に関する事務を処理するための法律及び命令をいう。

「法律及び命令」なので、命令違反は懲戒処分対象である。
命令は「通達」を含むものと解されるはずだから、通達に反する賃借権契約や売買契約の締結は命令違反を構成しうる。命令違反を回避する、特別の根拠なり合理的理由を必要とするだろう。


従って、忖度の存在とか内容といったことが直接的に違法性を意味するとは限らず、忖度によって実際に行った結果が「違法な事務」であるなら、処分対象となるのである。

こうしたことを、ものの30秒か1分以内で説明したり、理解してもらうのは、かなり困難であると当方は思っているが、プロパガンダに踊り易い傾向の人々は単純な言語と説明で満足したいのであろう。



もう一例が高橋洋一元財務官僚の論である。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51362?page=4

(一部引用)

こうした経緯の後、賃借契約が売買契約に変更される。鑑定評価額は9.32億円。例の8億円値引き話は、この経緯から見れば、ある意味で自然だろう。むしろ筆者は、8億円がかなり人為的に作られたものかもしれないと推測している。

つまり、まともにゴミの処理費用を算出すれば、10億を超える可能性もあった。それでは近畿財務局のメンツが丸つぶれである。そこで、近畿財務局も顔が立ち、しかも小学校建設を急ぎたい森友学園としても大幅値引きになる「8億円引き」となった可能性がある。

もっとも、これは8億円の値引きが妥当といっているのではない。本来であれば、近畿財務局は処理費用が10億を超えてもゴミ除去を行って、その後まっさらな土地として入札を行えばいいのだから。その結果、仮にゴミ除去費用をまかなえなくても、国有地の売却としては仕方ない。実際、豊中市への売却でも、実質的な国の手取りはほぼゼロだからだ。

または、近畿財務局はゴミを除去せずにゴミが埋まっていることを明示したうえで入札してもいい。その結果、売却価格が安くなっても仕方がなかったはずだ。

筆者の推測は、近畿財務局がそうした手順をサボった上で、ゴミの事実を隠して随契したので、森友学園に弱みを握られてしまった。だからその後、近畿財務局が森友学園を厚遇せざるをえなくなったである。

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財務省の元エリート官僚をもってしても、この程度の論説しか吐けないわけです。しかも古巣の財務省のことを、一般人よりもずっと詳しく知っているであろうはずの人間でさえ、このありさまですから。日本がいかに法を無視した行政を執行するようになってしまったのか、ということの証左かもしれません。


財務省の実務では、どういう処理が想定されていたのか?
通達を見てみましょう。


財務省所管一般会計所属の未利用国有地等の売却促進について

(H21年2月27日 財理第814号、改正 財理第5479号、第1066号、第1190号)

http://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/tsuutatsu/TU-20090227-0814-14.pdf



(3)地下埋設物がある財産
イ 現に地下埋設物が確認されている財産(蓋然性が認められるものを含む。)については、以下の方針により処理するものとする。

(イ) 財務局長等は、原則として平成 21 年度中に試掘調査を行い、撤去後の売却見込額(X)及び撤去に必要な費用(Y)をそれぞれ算定する。なお、売却見込額等が既に算定されている場合は、改めて算定する必要はない。
(注)調査の結果、土壌汚染物質が確認された場合には、下記⑷の「土壌汚染がある財産の取扱い」に従い処理する。

(ロ) 算定結果に基づき、次の分類に従い、処理するものとする。

A 撤去後の売却見込額が撤去に必要な費用を上回る場合(X−Y>0)
  原則、撤去工事は行わずに現状有姿で売却を行う。

B 撤去後の売却見込額が撤去に必要な費用を下回る場合(X−Y<0)
(A) 下回り額が小額(撤去後の売却見込額の1割程度)で、かつ、撤去に必要な費用が小額(概ね 500 万円以下)となる財産
  国において撤去工事を行ったうえで、売却を行う。

(B) 上記(A)以外の財産
個別に理財局と相談のうえ、処理方針を決定する。

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お役所仕事なんだから、基本的にはこうした通達に従って、定型的な処理を心がけるものなのでは?

(イ)に従い、大阪航空局では地下埋設物の調査を実施したのでしょう?そして土壌汚染も明らかになっているので、形質変更時要届出区域の指定を受けたわけでしょう?

見込額は算定されているはずで、国有財産台帳に価額記載があるはずだし、路線価等も参考に価額算定がされるのが、「普通の事務」では?
少なくとも、大枠で上記通達のX、Yを算定後、AかBのいずれに該当しているかを当該土地において判断していなければおかしいでしょう。


高橋洋一元財務官僚の言うような、ひょっとしたら撤去工事費用が云々なんて思いつきレベルではなしに、行政庁として「現状有姿で売却」というのがどのような場合なのかというのは、ある程度の機械的判断基準が適用されるということでしょう。

そして、撤去工事費用が土地代金を上回る場合の少額以上は「理財局と個別に相談」ということですので、個別な処理が必要であったことの証明は財務省側にしかできないということになる。


こうした命令に違反している処理を行ったものは、違法な事務であろう。何も脱藩官僚の人が新たな通達なり、内部処理方法を発明せんでも、既に作られていたと考えてよさそうなのでは?

元からこうした通達があるのだから、それに則して処理していれば書類は保存されてるはずで、その処理に係る書類等を開示することが、それほど困難であるとは思われない。


長くなったのでとりあえず。
続きは次の記事で