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福島原発事故後に小児白血病が増加した可能性はあるか?

福島の健康調査に関連して、事故後からずっと様々な意見や憶測がネット上に流れているようだ。賛成・反対に分かれて、反対陣営を厳しく攻撃している様を見かけることもよくある。
最近でも、津田らのグループ甲状腺腫瘍の発生についての報告に関して、強烈な批判が出されていたりするようである。自分の専門外なことであろうと、まるで最初から正解を知っているかのように、振舞う人々は少なくない。例えば池田信夫の如く、統計や疫学や医学や放射線に関する専門知識の裏付けが何らも有しないような人間であろうと、どんなデタラメ言説であっても好き勝手言える、ということだ。

勿論、批判するな、とは言わない。反対だ、とか、信じることはできない、とか、そういう意見を表明することも自由である。拙ブログにおいても、常々専門外のことに言及し続けてきたわけだし、その道の「プロだか専門家(笑)」みたいに自称してる連中の嘘八百まがいの言説について批判をしてきたから、他人事みたいには言えない(笑)。
自省は、それなりにあるけど、安易に信じない性分なので、ごめんなさい。


ただ、特にこれといった論拠すら有せず「デマだ」「○○は嘘つきだ」のような批判はいただけないのではないかと思う。厳しく批判するなら、対抗言論をまず自らが提示して、反対を述べるべきではないか。論文を否定したいなら、論文上で勝負するべきだし、反対の根拠を別のデータなり数字なりで示せるはずだろう。


本題に戻ろう。
最大の関心事は、原発事故後の現実に発生が危惧される疾病の状況である。津田グループも、福島県の県民調査でも甲状腺癌に関する大規模スクリーニングが行われていたわけだが、その他悪性腫瘍、特に白血病についてのデータは数字が出されていないようである。

そこで、いくつかの方法を考えてみることとした。実際に福島県内で医療機関を受診して白血病が発覚したとしても、それが表沙汰には出てこない、数字も把握できないようになっているようだ、ということで、別角度から検討してみることにしたわけである。


それが、特定疾患に関する医療費助成制度、である。
難病支援の制度として特定疾患研究事業のようなものがあり、診断を受けた患者は登録されるわけである。なので、人数の追跡がそこそこ可能、ということである。成人を対象する制度とは別に、小児に対する医療支援制度もある。これが小児慢性特定疾患治療研究事業というものだった。この疾患分類毎に、患者の登録者数が分かるということだ。


偶然か意図的か分からないが、この制度は平成27年1月をもって別制度への改定された。その議論が起こったのは、事故後であった。

簡単に言うと、事故以前から難病支援制度について改革が必要とは言われてきていたので、審議会レベルではいくつか議論があったものである。小さな改定は幾度か行われていたし、小児を対象とする医療助成という点では、障害者自立支援法の制定に伴って、割と大きく改変されたということがあった。

しかし、難病対象の制度部分は小児患者については、今年に大きく変えられたわけで、変更がほぼ確定的となったのはH25年に入ってからである。つまり安倍政権になってから、ということだな。

・小児慢性特定疾患治療研究事業の制度変更に関して2013年の議論
  平成26年 児童福祉法改正を予定→予定通り27年1月より施行
参考資料>http://www.nanbyo.jp/betusite/140218syukai/siryo2.pdf

(成人の難病支援制度改正と並行で議論され、同時に改正となった)



意図的なのか偶然なのか分からないが、下衆の勘繰りを言うなら、旧来制度との連続性をここで一度「大きく断ち切る」ことができれば、過去のデータと比較が難しくなる、ということだな。また、制度が変更されると、法律名や制度名が変わるから、ネット検索も難しくなるという寸法であろう。

これによく適合しているのが、旧薬事法である。あの三木谷が大騒ぎして、激昂した挙句、会議の席上で机をバンバン叩きまくったくらいに大揉めにモメた、例の件だよ。最高裁判決文すら米国法判例チックな香りがする、三木谷一派の思い描くようなクソ判決が出たという、いわくつきの法律さ。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
とかいう、似ても似つかぬ法律名に変えられてしまった。過去との連続性が絶たれたのは、憲法解釈だけじゃないってことだよ。誰でも簡単に覚えられるような名称じゃなくしておくのは理由があるんだ。


また話が逸れた。
で、要するに、小児患者数の推定に、旧制度である小児慢性特定疾患治療研究事業の登録数を比較してみるよ、という話である。
27年1月1日から変更になるということは、平成26年度のデータは他年度との比較に使えなくなるし、27年4月以降のデータだけを取り出せるか分からないし、制度変更直後って、書類処理とかに混乱があったりすると、正確性が落ちるかもしれないし。数値を隠したい側にとっては、思惑通りの展開となり易いってことだな。


拙ブログが調べたのは、以下のHPである。

小児慢性特定疾病情報センター
http://www.shouman.jp/


必要部分だけ、下記のような表とした。各項目の説明はこれ。


 全体;悪性新生物で登録された患者数
 新規;新規診断と登録された患者数
 白血病;疾病分類で白血病で登録された患者数


年度    全体     新規     白血病

19    13768    2140    4604
20    12802    2133    4626
21    12150    2061    4278
22    12609    2054    4523
23    14131    2374    5122
24    13984    2375    5093


このデータからは、あまり細かいことは分からないでしょう。ただ、傾向としてどうなのだろうか、ということは見ることができるかと思います。この情報を登録するのは、指定された医療機関だけであり、信頼性は割と高いだろうと思います。確定診断も、難病の専門医が行うので、診断基準のばらつきといったことも少なくなるかと思います。これ以後の数値が分からないので、何とも言えないのですが、23年度と24年度は特徴があります。

 ①悪性新生物の全体数と新規診断数が増加していること
 ②白血病の登録数が増加していること

もっと長期で見れば、違った傾向ではないかという見方はあり得るでしょう。
これ以前の数字で見ると、例えばH14年度には、全体20026、新規2821、白血病6841と、10年後よりもずっと多い数だったことが分かります。ただし、これ以降の年度では、毎年毎年前年を下回る数に下落していき、20年度までは一貫して全部下落なのです。21と22年度では若干の上下がありますが、ほぼ似たような数値に落ち着いていたと思えます(悪性新生物に占める白血病の割合は、事故以前からおおよそ35%前後で、その傾向はあまり変わっていません)。


この最大の理由としては、出生数が毎年毎年減少してきたから、ということが考えられます。同じ割合で発症すると、絶対数が同年度生まれが150万人の年と100万人の年では、新規診断数が減ることになり、白血病の人数もそれに伴い減少してゆくはずだから、です(死亡や治癒や年齢が制度上限を超えるなどの変動もありますが、傾向は人口ボリュームに依存することが多いかな、と)。


つまり、ほぼ減少傾向が約9年続いてきた後での、一転しての増加ですから、これはどうしてなのかな、というふうに思うわけです。全体の小児の数が減少する中にあって、悪性新生物の全体数や新規診断数や白血病患者数が増加したのは、何故なのか、と。


果たして、統計的に有意な増加なのかは、まだ確かめていないです。
ですが、増加に転じた理由があるなら、それが何なのかを確かめることが学術の役割ではないかと思うわけです。これから出てくる数字も、秘匿するのではなく、公開すべきであり、国民に事実を伝えるべきでしょう。

厚労省も職員不祥事でバッシングに晒されていますが、偶然同じ時期だっただけなのでしょうかね(何でも陰謀)。
こういうデータを見て見ぬふりをすることどうなのか、何らかの対応を考えるべきなのか、それとも無関係な数字の動きならそれなりの検討結果を出すべきではないかと。