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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

米国はシリアに対する侵略を停止せよ

未だ混迷の状況であるが、シリア領内のイスラム国勢力は弱体化したようだ。アサド政権へのロシアによる軍事支援が奏功したとも言えるが、米国や有志連合の攻撃とその支援を受けた反政府ゲリラとの戦闘は終わりそうにない。


米軍は、重大な国際法違反と戦争犯罪を隠蔽するべく、最近でもまた化学兵器を使用しアサド政府軍に罪をなすりつけるという使い古された手口を用いているようだ。その為の宣伝活動にも余念がない。


先日のロイター記事で確認してみよう。
https://www.reuters.com/article/us-syria-crisis-chemicalweapons-exclusiv/exclusive-tests-link-syrian-government-stockpile-to-largest-sarin-attack-sources-idUSKBN1FJ0MG

過去に用いられた化学兵器のサンプルが全て一致した、ということのようだ。それが「アサド政権軍の攻撃である証拠」と言うことらしい。
だが、これが決定的な証拠となるかと言えば疑問である。何故なら、元から「アサド政権の犯罪行為」という濡れ衣を着せるべく工作活動をやっていた連中ならば、この程度の情報操作など朝飯前だから、である。

そもそもシリアに対し米軍が攻撃する口実を求めていたのであり、それは有志連合による軍事作戦の正当化でも同じだった。いずれも国際法違反の軍事介入を、「アサド政府による戦争犯罪」の大義名分の下に正当化しようとするものだった。

参考:
13年9月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/dd3c160cfc9a245c383c731fd6ccb663
15年10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/63962ca183f51763db945386e1e4f669
16年9月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/8f27899bc5b980bf11a330c627388fee


濡れ衣を着せるべく、事前にアサド政府軍の化学兵器を盗み出しておくことは可能であるし、国連査察受け入れ後の廃棄処分過程においても盗むか横流しさせておくことは可能であろう。そのような工作員部隊は「まだ使用せずに残っていた化学兵器」の在庫を最近になって持ち出してきて、流用していたとしても不思議ではないということだ。


類似の例は過去にもあった。

マレーシア機撃墜事件の謎
14年7月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/30e796c18ac0cf8fd6929173121aa98f

・親露派(反政府勢力)がウクライナ軍から地対空ミサイル(ブク)を盗んで撃墜


今回に当てはめるなら
・反政府ゲリラがアサド政府軍から化学兵器を盗んで攻撃


高度な専門知識を要求される長距離ミサイルシステムを反政府テロ勢力が盗み出して、マレーシア機を撃墜したと主張したのは、米国だったのだが?
ならば、もっと難易度の低い化学兵器弾頭など反政府ゲリラが盗んで使用したとしても、「あり得る」としか思えないわけである。しかも米軍がバックに付いているとなれば、もっと簡単に実行できることだろう。


マレーシア機撃墜の場合には、射程300〜400kmという高度なミサイルシステムを盗んで利用した、という到底考えられないような筋書きを主張していたのだが、その信憑性は乏しいものだった。シリアの化学兵器の場合だと、これとは逆の主張を米国はしているが、アサド政府軍が使用したという根拠は2013年当時から乏しかった。

 
次に化学兵器の成分が一致した、という主張であるが、先に述べた通り濡れ衣を着せようとする工作側ならば、いくらでも実行可能である。これも似た例があったわけだが、それは韓国の天安艦沈没事件であった。

北朝鮮の魚雷の火薬成分と一致した、という「証拠」を出してきたのも米韓だったでしょう?

10年5月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/04766a64e7ff68d93f7c9129d079d23a

7年前に回収した北朝鮮訓練用魚雷の火薬と、「天安」船体や海底から回収した火薬の成分が同じであることがわかったと明らかにした。
 沈没海域ともなった黄海沿岸で以前回収された北朝鮮訓練用魚雷は、弾頭はないもののスクリューを動かす際に用いる火薬が残っていた。一方、「天安」の煙突や海底の砂からは、魚雷の弾頭に用いる火薬成分「RDX(ヘキソーゲン)」が検出された。

しかし、成分一致と情報操作をしたものの、その後に米軍やNATO軍の魚雷といった可能性が取り沙汰されるようになった。北朝鮮で用いる中国(orロシア)製魚雷にはない成分だったことが事後の検証過程で判明したはずなのだ。また、北朝鮮の潜水艦は欧州国の製造した魚雷を撃てるものが存在していなかった。つまり「成分が一致」したという報道は、情報操作をする側が都合よく用いる手である可能性がある、ということだ。


更に、アサド政権が極悪の、本物の悪魔のような政府であって、自国民を大量に虐殺しまくることをやってきたのだ、というような主張について考えてみよう。

アサド政権が政府に対し批判的な非武装の自国民を、何らの理由もなく殺害してきたのだろうか?
少なくとも、2011年以前には、そうしたことが世界に報じられることはなかっただろう。バアス党の一党独裁により、シリア国内の虐殺等不都合な事実は、完全秘匿され隠蔽されていたので、世界の誰もそうした犯罪行為を知ることができなかったのだろうか?


そうした可能性は低いと考える。ネット環境が整ってきていたし、シリア国民がSNSによる発信が出来てない状況だったとは思われない。シリアが内戦状態になり、数百万人もの難民が出る程に状況が悪化したのに、ツイッターやFB等による民間人からのSOS発信は世界中に知られていた。
経済政策上でも、90年代に比べて自由化は推進されていたようであり、独裁政権による強烈な弾圧状態に置かれていたということでもなかったはずだ。出入国は困難ではなかったし、観光客数も増えてきていた。


日本の外交上の対応でも、2011年以前には極悪国家に対するものとは思われない。

前安倍政権時代の例:
2007年 安倍政権下における外務副大臣シリア訪問

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h19/6/1174184_806.html

24日からシリアを訪問中の浅野勝人外務副大臣は、25日現地時間午前10時過ぎより約1時間、バッシャール・シリア大統領と会談を行ったところ、概要以下の通り。

浅野外務副大臣は、安倍総理大臣からの二国間関係及び中東情勢に関する親書をバッシャール大統領に手交するとともに、同大統領とレバノン問題、イラク問題及び中東和平問題等の中東情勢について率直な意見交換を行い、今後、日本とシリアの二国間関係を可能な範囲で進展させていくことで意見の一致をみた。
浅野外務副大臣からバッシャール大統領に対し、シリアとレバノン並びにイラクとの国境管理、及びパレスチナ内部の混乱の収拾に向けてハマスに対してシリアが影響力を行使することの重要性を指摘しつつ、これらの中東地域における諸問題に対しシリアが一層国際的に責任のある行動を示すべきことを伝えた。
これに対し、バッシャール大統領からは、いずれの問題についてもシリア政府の基本的な考え方が述べられた。

【参考】
浅野副大臣は、24日から26日までシリアを訪問、25日にバッシャール大統領と会談した他、ミクダード外務副大臣と会談した。浅野副大臣は、26日、アトラシュ自治環境大臣と無償資金協力「地方都市廃棄物処理機材整備計画(第2期)」にかかる交換公文に署名する予定。


今世紀に入り、2010年までは毎年のように政府援助が実施されていたわけで、犯罪国家相手ならば、そうしたことは行われないのが通例では。

イスラエルのやったガザ支援船(トルコの民間船舶)の襲撃・虐殺事件のような場合だと、世界中に知られるわけだが、それに類するアサド政権の虐殺事件というのは、「アラブの春」以前には情報が全くなかった。テロ鎮圧という名の、国内弾圧といった事件もほぼ見られていない。
主要な国内テロは、
・04年4月、ダマスカス銃撃戦(4人死亡)
・08年9月、ダマスカス自動車爆弾2件(17人死亡、数百人負傷) 
が報道で確認できたが、エジプトより酷い政府であるといった評価は困難である。


11年以降には、国内デモの激化や爆弾テロが相次ぐようになったが、アサド政権の軍事力が維持されているうちは、数百万人もの難民が出るような混乱には至っていなかった。化学兵器の査察受け入れ頃には、視察団が目にする生活の様子は、まだ穏当なものだったろう。

また、アサド政権は反政府運動の高まりを受けて、内閣改造憲法改正などの対応が取られたが、これも一党独裁の真に強権国家ならば、そんなことは実行されないだろう。中国がいかにデモが頻発しようとも、政権幹部の入れ替えや憲法改正などは実現できないだろう。「力で抑え込む」というのが普通の対応であり、アサド政権が「自国民虐殺を平気で行う悪魔」というのなら尚更、一党独裁の現状維持を強行するのが当たり前だろう。憲法改正や新政権の選挙など、形式的であろうとも実施しないのが普通、ということ。しかし、アサド政権は反政府運動に対して、譲歩したということだ。


事態が悪化したのは、米軍と有志国連合の軍事攻撃、米軍が送り込んだテロ集団の攻撃、そして米国その他から支援を受けた反政府ゲリラの攻撃、これらが発生したからである。「イスラム国(IS)」はその隠れ蓑に使われたのだ。


つい最近まで、米軍の軍事拠点がシリア国内に存在していたようだ。
https://jp.sputniknews.com/middle_east/201712274425942/

参謀総長は「コムソモリスカヤ・プラヴダ」紙のインタビューで「アル・タンフでは周囲55キロに及ぶ全領域が封鎖された。最も重要なのは、我々が数ヶ月間にわたりその地区から戦闘員が移動するのを目撃していることだ」と述べた。
管理体制が弱かった頃は、アル・タンフ地区からは約350人もの戦闘員が出て行ったという。

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グーグルマップで見てみると、イラク側のAl Waleedは確認できるが、Al Tanf付近の地名等は全く表示されず分からない。しかし、国境からシリア領内に入った所に軍事基地か空港設備のある場所が存在するようである。

イスラム国の「支配地域」と報道していた地域ならば、どうして米軍がその地点に補給なり、勢力圏を維持できていたのか、疑問が生じるだろう。


最低限、米国がシリア領内で勝手に活動するというのは、ヤクザの不法占拠同様に、明白な国際法違反であり、主権無視の暴挙と言えよう。シリアへの侵略行為に他ならない、ということだ。米国の正体は、テロを養成しテロにより気に入らない政府を転覆させようという、テロ国家なのだということである。米軍は、シリアから撤退させるべきだ。反政府ゲリラを支援する空爆もやめるべきなのだ。


アサド政権が本物の極悪だと仮定して、アメリカの行ってきた中東での軍事介入や違法な戦争の方が、より一層極悪であることに疑問の余地はない。米軍が行った違法なイラク戦争により、戦後処理について出された「安保理決議1483」は14か国の賛成で決議されたが、15か国中で1票だけ棄権したのが当時の非常任理事国のシリアだった(日本は非常任理事国のアジア枠を投票で争い、アサド政権のシリアに敗れたのであるw)。


2003年当時、理性を備えていた唯一の安保理国が、シリアだったと言っても過言ではないかもしれない。皆、米国の主張を受け入れる中で、同意せずの意志を示したのだから。

犯罪国家なのは、米国であり、シリアではない。国際法を無視する米軍こそが、真の悪なのだ。

意図的にもたらされた破壊と混乱であり、アサド政権はその汚名を着せられたのだ。