怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

グローバル化の陰で荒廃する米国の地域社会

日本の経団連自工会などのお偉いさんたちは、学ぶということも、自ら考えるということもないのだな。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aqD2xHqwS1Xk

物事を表面的にしか考えないのだな。
ぼくには、声が分かるよ。

どうして米国自動車通商政策評議会が、日本のTPP参加に反対したのか?
まあ、米国の自動車企業には、メリットというのが殆どないからね。日本の関税がゼロなので、米国側の2.5%やトラック類の25%?だったかの高関税を撤廃するだけになってしまっても、意味はないから。

でもね、多分、本質は、そういうことだけじゃないんだと思う。

それは、今の日本の農業関係者たちの多くが言う「地域社会の崩壊」というものを目の当たりにして、現実にその悲惨さを経験してきたからだと思う。


企業町が廃れてゆく様は、本当に「都会の砂漠化」のような現象なのであろう。

人が次々と去ってゆく。仕事がないと、治安が悪化する。そのことが、更に人を寄せ付けなくなる。人口が減少してゆくから、町は廃墟となる。収入が途絶えたり、家の価格が低下するなどして、借金が払えなくなる。返済できず、借金のカタに家を取られ、空き家増える。空き家が気味の悪さを加速し、ゴーストタウン化を拡大してゆく。
そうやって、町が死んでゆくのだ。まさに砂漠が拡大してゆくさまと、よく似ているのである。


リーマンショック後、GMクライスラーは破綻した。ビッグ3と呼ばれた代表的企業は、倒れた。経済危機の本質は、彼らに責任があったわけではなかった。経営方法や金融に手出ししたことなど、問題点もあったのかもしれないが、自動車会社が特別な悪事を働いて企業を破綻させたわけではなかった。むしろ、彼らは同情すべき被害者であった、と言えるかもしれない。

唯一、生き延びたフォードだったが、自動車企業が苦しいことに変わりはなかった。グローバル化自由貿易という美名の下で、ビッグ3の危機となり、仕事を奪われた労働者たちは失業してゆくことになったのだ。


かつて、米国の上質な中流家庭のモデルは、自動車会社の熟練工などだった。ある程度の収入、医療保険、年金、といった、社会保障制度基盤を支えていたのは、自動車会社のような優良企業だった。

日本型雇用の原型は、多分こうした米国企業に学ぶところが多かったものと思う。

だが、手厚い保障の存在が、自動車会社を苦しめる遠因となってしまったのだ。
医療費がGDP比で15%以上にも達するようになったのは、自動車会社のせいではなかった。米国の貧弱な健康保険制度と競争的な医療(笑)と民間保険会社の営利の合作のようなものだろう。

自動車会社は、高騰を続ける医療保険の負担に耐えられなくなっていった。人件費のかなりの部分を、こうした医療や年金が占めるようになってしまったからだ。

儲かったのは、民間保険会社や年金基金の巨額資金を運用する投資銀行ヘッジファンドなどの金融業の連中であり、彼らのせいでビッグ3は窮地に陥ったようなものだ。経済危機を招いたのも金融業界の連中だったのに、自動車会社は「悪の権化」のように公聴会で厳しく非難されなければならなかった。


全米の労働者たちの雇用を守り続けてきたのは、自動車企業だった。
クリック一つで金を動かす、投資マネージャーなんかではなかった。それなのに、グローバル化アメリカ人の雇用を破壊し、町を廃墟に変え、借金のカタに家を取り上げてゆくだけの金融の連中が、多額の給料を受け取っているのだ。

アメリカ人労働者たちを不幸に陥れ、仕事を奪い、家や街を奪うグローバル化が、どうして正当化できようか。
アメリカ人の雇用を守り、医療保険や年金を頑張って払ってきたビッグ3が悪者で、アメリカ国内で雇用を生まず医療費も払わないグローバル化推進企業が、本当にアメリカの為になっているのか。彼らは、企業利益を追求するだけで、アメリカ人労働者の生活を守ってなんかいないのだ。


社会的責任を果たさないグローバル企業が高く評価され、正当化されるのは、本当に正しいことなのか?
一部の人間たちの為に企業利益を稼ぎまくるのが、望ましい社会なのか?


アメリカの地方は荒廃した。地域社会が崩れ去っていった。
恐らく、小規模農家も同じような目に遭ったであろう。家族経営の弱小農家は、銀行借金で農地を取り上げられたりしただろう。田舎を荒廃させることになってしまっただろう。

それなのに、もっと貿易自由化を推進して、砂漠化を加速させようというのだろうか。それが、アメリカを守れることになるのだろうか?



多分、オールドな分野というのは、そのように感じても不思議ではないんじゃないかな、と。

オバマ大統領にとっては、自動車業界の労組が支持基盤になっているから、日本のTPP参加反対声明は、ジレンマとなる可能性がある。
韓国とのFTAのような「特別な条件」が狙いとなるか、日本の参加拒否を働きかけることになるかもしれない。


アメリカに雇用を多く持たないグローバル企業の利益が優先される為に、アメリカ国内の労働者たちが犠牲になれ、というのは同意できるものではないのだ。特定の大企業に利益が集中するというのは、リーマンショック前の「グリード金融」の連中がべらぼうな利益をあげていたのと同じではないか。


TPP反対の裏側には、自工会偉い人には見えない何かがあるはずなのである。