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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

世界一の不公正貿易国はアメリカ合衆国

玉井大せんせいみたいな、TPP参加しろ教団?の連中は、交渉なんだから交渉で頑張ればいい、交渉もしないで負けることを想定しているのはおかしい、といったような大意のことを言うわけだ。


だが、そんなことが本当に通用すると思っているのか?

多国間だから、とか、そんな甘いことが通用するとでも?


いくつか反対意見を述べておく。
法学がご専門で、かつてCAFCにも出向していた玉井大せんせいにとっては当然の知識であろうとは思うが、当方のメモもかねて書いてみる。


1)WTOの被提訴件数世界一は米国

昨年時点で、WTOに提訴された件数を国別に見ると、世界最多件数なのは”USA”である。
ランキングで見ると、

1位 米国  113
2位 EU   70
3位 中国  23

となっており、ダントツのぶっちぎりの堂々1位が、「アメリカさま」である。
(因みに提訴している件数も1位だ)

WTOに提訴されるということは、WTO違反に該当すると疑われる制度や行為が多い、ということであろうと思われ、そうすると世界で最も不公正貿易を行っているであろう疑いの強いのは、米国であると考えられる。


2)ジョーンズ法


不平等というか、保護貿易主義的な法規制として、非常に有名なのがこの法律である。
この法の趣旨を大まかに言うと、次のようになっているそうだ。

『米国内の拠点間の海上運送は、米国で建造され、米国市民によって所有されている米国沿岸警備隊に登録された船舶を用いなければならない。』


◎ジョーンズ法の米国市民要件

・幹部職員及び役員の過半数が米国市民
・90%を超える従業員が米国に居住
・米国領土内の鉱工業に一義的に従事
保有船舶の簿価合計が、資産簿価の10%を超えない
・75%を下回らない原材料の売買が米国内で行われている


つまりは、平たく言うと、船員も米国人、船も米国製、会社の幹部や役員も米国人、ということだ。極めて排他的な法律である、ということである。しかもWTO締結後であってでさえ、こうした保護主義的制度を維持しているのだ。世界各国から批判を浴び、WTOの精神や自由貿易推進に反すると言われていても、頑なに拒否し続けている。

主要複数国から言われても「曲げない」精神の持ち主が、アメリカであるということがよく判るであろう。


3)アンチダンピング課税

これも、恣意的運用が散々行われていると考えられる。特に日本企業は目の敵としてターゲットにされてきたであろうことが窺われる。日本が、企業だけではなく、政府として戦うことが必要になるものだ。

具体例として、こういうのがある。

http://www.meti.go.jp/press/20100825004/20100825004.html

何と73年12月から36年以上も「アンチダンピング」認定で賦課命令が撤回されない、というのは、明らかにおかしいだろう。ポリクロロプレンゴムが日本から米国に輸出されることで、米国企業の受ける損害というのを36年以上も補填し続ける、というのは、異常である。


こんなことで、交渉に勝てる、などという甘いことを言ってる連中の、思考力を疑うのは当然ということになるだろう。普天間基地返還が10年以上経過しても取り戻せない、ということの理由というものが分かろう、というもんだ。


これはあくまで一例。
10年以上に渡って、アンチダンピング課税を継続し、日本にだけそういう課税措置をとっているものが多数ある。
しかもサンセット条項で5年経過以降には、アンチダンピング課税措置は自動的に消滅させるというのがWTOのルールであるはずなのに、これに反してレビューが面倒、みたいな適当な理由で「どうせ日本企業が金を払い続けるんだから、毟り取ってやれ」的な理不尽な収奪が行われてきたのだ。

他の例として、

・PC鋼より線:78年12月
・フッ素樹脂:88年8月
・ボールベアリング:89年5月
・ステンレス棒鋼:95年2月
・クラッド鋼板:96年7月

などがある。これらは、あくまで一部に過ぎない。

不公正を認めず、金を取れるならいくらでも毟り取る、それが、USAの基本的姿勢である、ということは実証済みであろう。一体、何年経ったら、この罰ゲームを止められるのか、ということだ。


4)バード修正条項

これもWTO違反の確定している、不公正貿易の例である。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/funso/ds217.html


多数国の提訴でWTOにパネルを設置し、DSBで米国への是正勧告を獲得しようとも、アメリカ合衆国自身がそれに従わないわけであるから、どうすることもできないわけである。

要するに、多数国を相手にしようと、どこの国が何を言ってこようと、国際機関の決定や勧告があろうと、おかまいなしの無法国家というようなものだ。「法に従う」なんてのは、相手が米国である場合には単なる妄言に過ぎない。暴力的な強制力でも発動できない限り、誰にも改めさせることなどできないのだ。それは、「オレ様ルール」国家である、ということを示している。


クラスで一番の暴力の強い番長には、強制力なんぞ働かない、ということである。どこかに校長先生のような「圧倒的権力」が存在しない限り、番長は誰の言うことも聞かない、ということだ。多国間だから、というのも通用しない。


このバード修正条項によって、2000年代前半のたったの4年間で日本が払った課税額は約4億ドルにも達し、しかも日本以外も含めて全部に課せられた額の約4割が日本単独で払っていたものだ。つまりは、日本を狙い撃ちした不公平関税であった。日本はこれに対抗措置を講じてはいるが、米国は未だにWTO勧告に従う姿勢など、一切見せていない。
米国にとって、WTOで公平なルール作りを、なんてのは、無用か迷惑でしかないのだ、ということ。


それよりも、自分に都合のよい、自分の好きなように差配できる枠組みが欲しい、というだけだろう。米国は常日頃から、中国に対してあれこれ注文をつけたり不公正だとか法を守れとか言うわけだが、その中国よりも約5倍も多くの提訴をされているのが米国なんだ、ということは覚えておくべきであろう。


日本が仮にTPPに参加すると、上記のような不公正慣行が是正されるとでも期待しているかもしれないが、それはあくまで希望で終わってしまうだろう。アンチダンピング課税がなくなったとしても、別な「武器」が米国に与えられるだけだ、ということ。


5)CFIUS

拙ブログでも以前に取り上げたことがある。ユノカル買収に絡む記事で見た。
最近だと、ソフトバンクが米3位のスプリント買収を発表した後、審査開始だったか、報道されていたように記憶している。

05年7月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/be88bca28751a1d79ed048fd853ec1ca
08年5月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/569bbfb4968ac2d71264b20dd1e4c7bb


結局、シェブロンユノカル買収し、CNOOCは高い買収額を提示していたにも関わらず、阻止されたんだよ。米国の制度が公平である、なんてことは、ウソみたいなものだ。それが、従米派たちやTPP参加推進派たちには、判ってない。

こうした外資規制は、広範な業種に及んでいる。
銀行業にしても、ナショナルバンクとしてやるには、例えば「全ての取締役は米国市民、かつ半数は米国内居住者」でなければならない、といった、厳しい国籍条項が設けられている。

金融、保険、航空、通信、海運、発電、不動産、地下資源などについて、排外的・保護主義的な条項や規制項目が課せられているのだ。ジョーンズ法でも見た通りである。

アムトラックのような、政府補助金を使っている企業は、100万ドル以上の物品購入の際には米国製品だけ、などといったバイアメリカン条項なんかも、多数の連邦法や州法で課せられている。


6)アメリカ車ラベル法

日本語訳が判らなかった。

 American Automobile Labeling Act

という、ラべリング規制である。
自動車(乗用車やトラック)には、米国産の比率を書いたラベルを貼らなければならない、というものだ。

・米、加の部品調達率
・組み立て場所(国、州、都市名)
・エンジンとトランスミッションの原産国(50%以上付加価値国)
・15%以上の米、加以外の部品調達国のうち上位2カ国

要するに、日本のスーパーなんかで見かける「国産大豆100%使用」みたいなのに匹敵するラベルを車ごとに貼れ、と、そういうような規制らしい。


米国自動車会社としては、米国産を買ってくれよ(カナダが入れられている理由というのは不明であるが、米国に準じるのだろう。生産拠点があそこらへんにあるから、ということだからかな?)、ということを最大限にアピールしたい、ということだろう。
ちょっとアレな規制だとは思うが、実害はそう大きくはないので、変わってるね、ということかな。全自動車企業が貼ってるなら、極端な不公平は生じないから、上で見てきたものとは若干異なってはいる。



以上、いくつか見てきたわけだが、市場を開け、だの、規制をなくせ、だの、いちいち文句を言われる立場の日本だが、それ以上に酷い規制をしているのは、アメリカ合衆国である。しかもWTO違反を平気で放置しており、是正勧告にも従わないような国である、ということが明らかだ。


これで、交渉に勝て、と?
アメリカの都合のいいルールにされない自信がある、と?


本当ですか?(笑)


貿易自由化で必ず得しか存在しないなら、アメリカの政策担当者たちや米国議会議員たちや経済学者たちは、みんな「ド阿呆揃い」の経済学理論無視の無知野郎どもの集まり、ということを実証しているも同然、ということですかな。これはもう確定ですわな。


東大の玉井克哉とか、伊藤元重とか、本間正義とか、早大の若田部昌澄とか、そういう連中はまず米国の学者連中にきちんと教えてやれや。

「日本がTPPに参加すべし」を五月蠅く謳う前に、米国自身のトンデモ規制の数々を「まずは是正して下さい、それから日本に文句を言ってきて下さい」とな。