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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

輸出企業の発言力と交易損失拡大

2000年代に入り、08年のリーマンショック前まで日本の輸出は増加してきた。一方で、輸出企業頼みの景気回復というのは、別な問題も生み出してきたのである。

一つが為替の問題だ。円高が企業を苦しめる、という理屈で為替介入を繰り返した結果、日本国民が多大な借金を背負わされて、その裏では「輸出企業への所得移転」が行われることになったのである。
介入は対症療法的なものであり、姑息的な手法でしかない。長期トレンドが円高なのであれば、それを一時しのぎだけでは回避できない。海外の貨幣成長率が日本を大きく上回る(日本はデフレで、諸外国は2%以上のインフレだから、差が開く一方だった)中で、円の価値が相対的に上昇してしまうことは避けられない。根治的な政策選択が必要であったはずなのだが、そうした問題点は「デフレ論争」の中では主流の意見とはならなかった(前半の多くの時間が「日本の銀行に特有の問題」と看做され、機能的な問題点すなわち金融システムと不良債権に当てられた。或いは金利政策の失敗など、原因分析の検索と論争に無駄な時間が費やされていった)。

輸出企業が移転された利益を国内需要を高める方向で使えばよかったが、必ずしもそうはならなかった。賃金上昇がなかった為に、国民の購買力が上がらなかった。
賃金が上がらないことは、更なるデフレ強化となり、デフレが輸出企業にとっては「円高に戻る」という悪夢を招来する、悪循環が形成された。


特に、ドル円での為替不均衡は、そうした輸出企業頼みの経済体質と、海外の「好調な経済に支えられた消費増+外国通貨の増価」を招くことになった。ユーロやポンドは言うに及ばず、韓国ウォンでさえ、大幅な増価となったのだ。現在は、そうした歪みの是正という可能性があるかもしれない。結果的に、円高に舞い戻った、ということである。

さて、好調な輸出に支えられて、微々たる経済成長を果たした日本であったが、人為的に生み出された円安効果がもたらしたものは、「交易損失の拡大」であった。中国に代表されるように、新興国経済が好調だったから、旺盛な需要を生み、資源高をもたらした、という側面はあったかもしれない。
それ以外にも、輸出企業の人件費抑制策や交渉力低下などで、輸入価格が高いのに、製品価格を据え置きや利益なき値下げ競争に突入してしまい、輸出物価が低いままで推移することになった。その結果、交易損失が拡大してきた、ということである。例えば、原油価格が大幅に上昇したのに、その原料価格を人件費やその他国内経費削減で埋めてしまって、輸入価格上昇分を吸収しようとすると、「価格の調節機能が働かない」という状態となり、交易損失となるわけである。

その傾向は、05年以降くらいから顕著となっている。その損失分は、原料輸出国への移転のようなものであり、日本国内の賃金を減らして、海外にその分を払っているのと同じ、ということだ。


こうして、輸出企業が苦境に陥るたびに救急措置を行おうとすることによって、円高介入で40兆円の為替損を食らったわけである。これに加えて、毎年毎年8〜10兆円規模の交易損失が発生する、というようなことになっているわけである。

輸出企業は、発言力を強めるなら、外に向かって発言せよ。輸入価格交渉で、もっと交易損失を減らす努力をせよ。製品価格に転嫁するべきは、転嫁すべし。国内で不満を言うだけの発言力は必要ない。


参考:

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/fb53d51b4f521f72a5b422c7b34d6cfc

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/4f863c0f759aaa58a4f101f1c8857aa0