怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

ケインズのバンコール構想とIMF保有金塊

「米ドルはクソ通貨」シリーズの記事を書いてきて、これまで全く知らなかったことを知ることができました。

一つは、アメリカさまが保有する金塊の話です。
8133.5トンの金塊を持っている、ということらしいですが、以前はもっと持っていたようだ、ということです。第2次大戦後、欧州は甚大な戦争被害を受けてしまって、米国だけが戦争で大きく得をした形となったわけです。ハワイを除いて、本土には被害を受けずに済んだ結果、米国の生産設備などはそのまま使えた上に、戦争特需があって世界中に武器・弾薬・トラックなどの供給を行えたわけである。それが大儲けに繋がったであろう、ということだ。お得意先は、欧州や中国などいくらでもあった、ということだ。

ブレトンウッズ体制が確立された終戦時、アメリカは世界中の金塊の大部分を保有する政府となっていた。第一次大戦前には2250tに過ぎなかった金準備は、1949年には21707tにまで増加していた。約10倍になっていた、ということである。アメリカが何故戦争を望むのか、ということの理由が垣間見える。こういう強い成功体験があったから、ということではないのかな、と。

戦後の世界経済は、米国の一国支配下に置かれた、と言っても過言ではなかった。それほど大きい存在となっていた、ということである。ドルは基軸通貨の地位を固めるべく、1オンスの金と35ドルの交換ということで、ドルを世界通貨とみなして、各国通貨の為替レートが固定相場として決定された。まさに、「ドル」という通貨の絶頂期にあった、ということであろう。

しかし、戦後復興を果たしたドイツや日本をはじめ、先進諸国が追いついてくる間に、ドルの価値は下落を続け、ドルの購買力は大幅に低下した。その結果が、米国の持つ金準備の急激な減少ということだろう。金の流出は止まらなかった、ということである。固定レートが災いしたとも言えるだろう。

この限界に来たアメリカは、ニクソン・ショックという形で、金とドルの交換停止を一方的に宣言した。アメリカは僅か20年足らずで、「払えなくなった」ということだ。そうして、スミソニアン体制に移行したものの、これも短期間で終わることとなった。変動相場制へと変わっていったのである。
金本位制は戦前から問題点があったわけだし、日本の江戸時代までの幕府の経験からしても、行き詰まり易い通貨体制であることは判り切っていたはずだろう。それがどうして第2次大戦後にでさえ維持されたのか、ちょっとよく判らない。大恐慌時にも、金本位制からの離脱というのがあったわけであるから、当時からよく検討すれば良かったのではないかとしか思えないのだ。まあ、金貨のシステムに何世紀も慣れてきたのであると、これを止めるというのには抵抗感があるというのも判らないではない。お金というものの正体が何なのか、ということについての考えが深まらないと、見えてこないこともあるのかもしれない。

IMFが現在持つ2907tの金塊というのも、アメリカの金塊が激減したのと同じように、時代と共に減ってきた結果なのだそうだ。以前には、4665tの金塊を持っていた時もあったらしい。世界中の国々に、中央銀行が作られていくようになったりして、そういう公的な中央銀行に金を売却したりすることがあったようであり、ここ数年前にも、400t以上が売却プログラムでインドの中銀などに売却されていたようである。

IMFが昔持っていた金塊の量というのは、恐らく創設当初の出資国―米英仏などの戦勝国だろう―が拠出したものだったのではないか、と思う。最初の量がどのくらいだったのかが不明なのであるが、アメリカが相当出したんじゃないのかな、ということですね。だって、金を千トン拠出、とかできる国なんて、殆ど存在してなかっただろうから。数百トンずつの割当であっても、かなりの量だったはず。

それとも、IMFの規模を大きくするのに、各国政府の拠出が増えるから、アメリカ政府が自国の発言力を確保しようと思えば、皆に合わせて出資しようと思ってはみたものの、持ってるカネが少なかったので「金塊の現物払いでもいいか?」ということで、払ったりしたのではないのかな、と。
IMFがどうして4000トン以上もの金塊を持つに至ったのか、ということの経緯は正確には判らなかったのですが、色んな歴史があって、今は3000トンを切る水準まで減少してきた、ということですね。そんなに金塊を持っていて、どうするんだろう、とは思うけれども。

因みに、2011年に世界中が金の輸入額・量を軒並み増やしている中で、日本人なんて大量に売却していた。122.5tも金の輸出超過があったそうだ。豊富な産出国でもない上に、公的機関が売却ということでもなく、単なる一般庶民らが売却しているのが、そんなにあったということである。ある意味、凄い。集めようと思っていたわけでもないのに、知らず知らずのうちに買いこんで溜まっていたんだから。純金に囚われてしまったりしてないことが幸いした、ということか。
(参考:http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/47f852562b7175cf877351e4c09bd6e2

アメリカさまやIMF保有金塊の減少というのは、アメリカの金融帝国支配の終焉を示すものであろう、ということだ。ドルという基軸通貨への信認が揺らいでいる、ということでもある。

で、これらを知る過程で発見したのが、ケインズの世界通貨の構想だった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BA

英国代表としてブレトンウッズ会議の席上にいたのは、何とケインズだった。しかも、共通通貨構想を主張したようだが、アメリカの反対に遭い頓挫したようだった。これにより、米国の通貨覇権が達成された、ということだ。
ケインズが「バンコール(Bancor)」と呼んだ共通通貨は、実現されることもなかったし、これまで殆ど目にすることもなかったわけである。ドルを止めようとか新たな通貨構想を、などという過激な意見を言えば、IMF専務理事やサルコジ大統領のような目に遭わされてしまって、本格的に排除されてしまいかねないからなのかも(笑)。

当方にとっては、ケインズが共通通貨を主張した気持ちが、今なら理解できる。それは、自分も同じ主張をしているからである(笑)。ドルという、ただのローカルマネーに「特権的地位」を与えることになってしまったのが、戦後のドル基軸という通貨体制だったからである。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/9720895e54af982a6c18b12ad89d7937

ケインズが主張した当時には、切り替えるのがかなり難しかったかもしれないが、現在であればそう困難であるとは思われない。運営体制の問題、そして政治的な障壁くらいであろう。実現する方法は、別な記事に書くことにする。