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猪瀬直樹東京都知事は何故排除されたのか〜3

5)猪瀬知事の討たれた理由は?

これはよく分からない。
東電病院売却話のこじれ、などという軽量級の話ではないだろう。例えば入札逆転を狙って、慶応閥が何かを画策するとしても、猪瀬追い込みまで使うような話ではないから、だ。利益と工作の難しさが乖離しすぎている。


最も考え易いのは、五輪特需に関連する「五輪マネー」の分配を巡る抗争、というものだろう。競技場や選手村の建設・改修工事等々、いわゆる公共事業関連の受注先などで「おいしい蜜」に群がる者たち、というのが出てくる可能性があるわけだから。その配分先で、文部科学省とか国土交通省といった官僚勢力と、東京都知事が衝突したのかも、ということが想定されるが、まだ話が具体的でもないし、そこまでぶつかる理由というのは分からない。予算規模とか事業規模に関しては、組織委員会を設置して以降ではないかと思うし、メンバー選定で都知事権限なんてほぼないだろうから、考え難い。五輪マネー抗争、という可能性はかなり低いのではないかな、と。


他には何が考えられるか?

やはり電力関連かもしれない、ということがある。


どうしてか?
それは、東京電力が本格的に「倒れそうだから」ということだ。東電資金問題というのは拙ブログでも取り上げたが、資金繰りは詰まっている。そして、今後の事業においても、収益構造を維持することは極めて困難だ。それは原発再稼働をしないから、ということだけではないのだ。東電の経営基盤そのものの危機、ということである。


ここで、最も危険な問題が浮上した。

そう、小泉純一郎、だ。


小泉さんの「脱原発発言」は、かなり強力なものだ。そこの猪瀬さんが乗れば、手に手を取って、かなりの脅威をなるであろう、と言う計算が働くだろう。猪瀬さんは元々小泉総理時代に道路公団民営化問題で、最後まで戦い抜く闘士として存在感を示し、猪瀬さんを現在の地位に引き上げてくれたのは、言ってみれば小泉さんのお陰だったから。
その小泉さんが「原発なしでもやっていける」と宣言し、猪瀬知事が共闘することになれば、本当に東電は二進も三進も行かなくなる。これを恐れるのは当然(東電)だろう。


猪瀬知事は、小泉発言が出る前から、東電病院売却問題なんていう小さい話ではなく、「脱東電」を推進してきたわけだから。


新電力構想 13年5月17日
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1305/17/news013.html


環境局 13年8月16日 
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/08/20n8g200.htm



要するに、東京都は今後東電から電気を買わないよ、と。そうなれば、原発稼働云々ではなく、東電の売上そのものが消滅することになるからだ。そして、これを首都圏全体に拡大しよう、ということだったからだ。これが起こればどうなるか?

例えば東電の売上高が10分の1にまで落ちてしまえば、それは再建計画そのものの根幹が崩壊することになるのである。東京都の方針を急進的ではないものにしてくれ、とお願いしても、首を縦に振らなかったとしたら?
当面、東京都が使う電力の1割が「脱東電」化されて料金が安くなる、と。これを全東京都の施設に拡大されたら、どうなるか?大口顧客が次々と脱東電化を図っていけば、どうなるか?

これは東電倒産計画、と言っても過言ではない、ということだ。真綿で首を絞めるが如く、東電に「死ね」と宣言したも同然だ、ということである。しかも水力発電等売却先を東電以外に選定しよう、というのだから、まさにスマートシティ構想が推進される先にあるのは、東電の破綻、である。


恐らく、猪瀬知事が小泉純一郎の言葉に共感することは間違いなく、これが脱原発&脱東電の動きが加速することにでもなったら、東電擁護派たちは枕を並べて全員討ち死にとなるのは必定であったので、これを何としても阻止する必要があったはずだろう、ということだ。
猪瀬知事を泳がせておいたものの、東京五輪招致成功でこれを背景として思わぬ政治力を獲得されてしまったので、放置しておくわけにもいかず、しかし猪瀬さんは「うん」とは言わなかったが為に討たれたものと思う。



石原慎太郎との会談後に猪瀬さんの辞任決断、ということになったようだが、石原あたりなら「挨拶に行けとは言ったが、カネを借りろとまでは言った覚えはないぞ」とか言い逃れするだろうし、「事後処理をきちんとやるのが政治家の務めなんだから、その失敗の責任はお前自身がかぶれ。そうじゃないと、お世話になった徳田さんにも迷惑かかるし、紹介したオレの顔にも泥を塗ったことになるんだからな」くらいは言うだろうから、ま、ここは一度退け、と説得したんだろう。


猪瀬知事が悪玉の本性の持ち主で、誰に迷惑をかけようと平気で、へっちゃらだぜと言い切れるような人間性だったなら、どれほどの仕打ちを受けようとも耐え抜けたかもしれない。が、基本的に真面目な人なんだろうな、とは思う。


選挙なんかやったことなくて、言われるがままに動いて、良く知らないけど、選挙には大金が必要だからって、用立ててもらえたので、とりあえず自分で用意できない分は貸してくれるって言うからうっかり借りてしまって(寝醒めが悪いから返済はしたけど)、その結果がこうなった、ということだろうね。

だって、選挙までの僅かな時間で、ただの個人に数千万円も貸してくれる銀行があるかな?
普通の人には、用意できるような額ではないだろう、きっと。
だから、猪瀬さんだって人間だもの、うっかり借りてしまったんじゃないんですかねえ。ある時払いでいいですよ、って言われたら、政治の世界はそういうもんなのかな、と思って、そう信じていたのかもしれません。石原親分の口利きなんだもの、信頼するに決まってますわな。


失敗の最大の理由は、猪瀬さんが事態発覚後に「何とか必死で隠そうとした」ということだろうな、たぶん。彼の性格上、隠すのは極めて苦手だったのだ。根が悪玉ではなかったから、だ。悪に染まり切っていた人間ではなかったから、だ。


これをアマチュアと呼ぶなら、一体誰が政治の世界に生きられるのだろう?
それは、心底悪玉の根性を持つ人間、ということなんだろうか。


猪瀬知事誕生は、不本意であったが、このような失脚劇は許されるべきではない、という点において、猪瀬知事辞任という幕切れは無念と言うよりない。


大手マスコミが「ここで終わりにするな、特捜部が追い詰めろ」みたいな論調になるのは、ゲスな宣伝工作の臭いを少しでも緩和してくれ、という時に使う常套句なのではないのかな。